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トガオシ。Vol.266戸賀敬城がベルルッティを愛する理由

2023.06.08

戸賀さんの足元を彩るシューズのコレクションから、ベルルッティをご紹介しましょう。「シャンパンで磨く」とも言われるフランスの名靴。三代目当主オルガ・ベルルッティとの出会いから始まった、華麗なる戸賀さんのベルルッティ遍歴は、今日の戸賀さんのスタイルに影響を与えているのかもしれません。


オルガ女史との出会いから始まったベルルッティ遍歴

ベルルッティの歴史と伝統については、よく知られていると思いますが、それまで黒と茶ばかりのドレス靴に「パティーヌ」という染色技法で色付したのは、4代目当主オルガ・ベルルッティの時代になってからのこと。創業家系の傍流家の出身であり、パリで哲学を学んでいた女子大生のオルガが、靴職人として修行を積んだうえではありながらも、若くして職人気質のメゾンを率いることになったとき、様々な声が挙がったこともまた事実です。

「ベルルッティはパリの高級靴としては、ちょっと異色の存在だったよね。女性的だとかデザイナーズの靴の領域とか言われたようだし、オルガ女史の強烈なキャラクターもあってか、クラシックでもモードでもない異端みたいに言われていたこともあるみたい。でも、来日したオルガ女史の取材をしたときに彼女の芯の強さを感じたんだ。それならと、一足履いてみようと思ったのがメンズ誌の編集長になってすぐの頃、35歳か36歳の頃だったと思う。」

最初の一足は3アイレットのアレッサンドロ。ホールカット(一枚革)のアッパーに、ノルヴェイジャン製法のコバが張り出したラバーソールのモデルだったそうで、90年代のベルルッティを代表するモデルですね。

「最初にアレッサンドロはかなり履いたね。ノルウェイジャンって屈曲が硬そうに思うけど、全然柔らかくて歩きやすかったんだ。それにヴェネチアレザーが水に強いのか、パティーヌのおかげなのか、雨でもラバーソールで歩きやすいし、全然シミにならないしで、かなり履き込んだと思う。もうさすがにくたびれて処分しちゃったけど、現行のアレッサンドロにノルウェイジャン製法のモデルは無いので、残していたら希少な品だったかな。」

戸賀さんが大好きなモデルはメゾンのアイコン「アンディ」

今でこそ、トータルコレクションとして展開しているベルルッティも90年代までは、靴とベルトのみのレザー専業ブランドでした。レザーブランドといえば、職人技の工芸品として、コンサバなデザインが多いのですが、ベルルッティはひと味違っていたのです。

「当時からクラシック靴なのに、すごくクリエイティブで贅沢なコレクションを展開していたベルルッティは、クラシック好きからもモード好きからも愛される、懐の広いメゾンでした。店を覗く度に見たこともないデザインの靴があってね。なかでもアンディはカッコ良かったね。今も大好きな靴だよ。」

戸賀さんが惚れ込んだ、アイコンローファー「アンディ」。その名は、このローファーを1962年にオーダーした現代美術アーティスト、アンディ・ウォーホルにちなんでのもの。当時、注文を受けたのは3代目タルビーニオでしたが、実際に制作を手掛けたのはマダム・オルガだったのだそう。

「だからかアンディを女性らしい仕事と表現する人がいるんだけど、そうかな。むしろ華奢なローファーの既成概念を越える、力強いデザインだと思わない?これはサドル部分がクロコになっている現行モデル。パティーヌはオーダーしたものだけど、見事なグラデーションがもう芸術品の域だよね。」

超レアなラバーソールのアンディもお持ちです

素足にスリッポンが定番の戸賀さんは、やはり「アンディ」の所有数も半端ではありません。こちらのラバーソール「アンディ」も、かなりレアなモデルです。

「分厚いラバーソールのこのモデルは、1シーズンだけなのか、それともサンプルだったのか、素性は不明だけど、かつて一時的に販売されていました。スポーティなカジュアルに似合うので、かなり愛用しています。パティーヌは控えめながらインパクトのあるラバーソールがかなり目立ちます。なので自然と登板回数も多くなる、コレクションのクリーンナップ陣なのです。」

ヴェネチアレザー×パティーヌのコンビネーション

アレッサンドロは黒にブルー、アンディは黒に赤。この独特の陰影は、熟練したカラー職人だけが成し得るもの。

「ドレス靴にこういう遊び方ができることを教えてくれたパティーヌという技法。ただ色を塗ればいいってもんじゃなくて、どこまで塗るかの加減が絶妙なんだ。アンディのサドル部分の色の入れ方、アレッサンドロのアイレット周りから履き口に掛けての塗り方は、こう塗るか!ってヤられちゃいました。」

赤いパティーヌのアンディは色気たっぷり。ブルーのパティーヌが乗ったアレッサンドロは敢えてのカジュアル使いが基本だそう。もう一足、赤いパティーヌのアレッサンドロもお持ちなのだとか。

10年以上前のモデルと最近のモデルが見劣りしない!

シックなグリーンのパティーヌが浮き上がるアンディは10年以上前のモデル。いまも現役で登板回数の多い一足だそうです。奥の「カーシブ ガレ」はベルルッティのアイコンのひとつ、スクリットが乗ったスリッポン。カップインソールを搭載しているのでスニーカーのような履き心地とか。

「カーシブは最近のモデルだけど、アンディよりもすっきり見えるので、くるぶしを見せる履き方が似合うスリッポン。細身のグレスラからデニムまで、足元を引き立てて履くと誰にも負けないパンツコーデが仕上がるんだ。」

ドレススタイルからカジュアルまで、幅広いコーデを楽しめるのがベルルッティの凄いところですが、それにも増して、長めのノーズも、グラデーションカラーのトゥも、数年前に大流行したエッセンス。にもかかわらず、今でも古クサく見えない点はちょっと驚きです。

「流行に敏感なイタリア靴は、5年前のモデルは戸賀の気分としてはちょっと履けない。伝統を守り続けるイギリス靴は、流行を問わないけど新鮮味に欠ける。でもベルルッティは、10年前の靴も新鮮に履ける。それに何と言ってもBRの+モードなスタイリングには確実に似合うってところが一番好きな理由かもしれない。」

CREDIT

Producer : 大和一彦 / Photographer : 鈴木泰之 / Writer : 池田保行 (ゼロヨン) / Designer : 中野慎一郎

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