2019.02.22
人気ブランドのキーマンから話しを聞くB.R.ONLINEのスペシャルインタビュー。それぞれのブランドの根源にあるもの、クリエイションへの思い、発想の原点に迫ります。2回めの登場となるイタリアの人気デニムブランド「シープラス」のCEOマウリツィオ・カウッチさんと、甥っ子でアジア担当マネージャーのアルベルト・カウッチさん。昨秋登場した進化系モデルから、新ラインの可能性に注目しているようです。
F.G.1936 CEO
マウリツィオ・カウッチ さん
1964年生まれ。ローマの東、アブルッツォ州のパンツファクトリーF.G.1936社の現CEO。サルトだった祖父フィリッポ・カウッチが立ち上げた工房はその息子アルベルト(マウリツィオの父)の代に生地商として財を成し、1960年代にパンツの工房を設立。現在、兄のフィリッポが生産面を、弟のマウリツィオが経営面を担っている。黒のジャケットをモダンに着こなすマウリツィオは、「ファッション、ファッションしているのは好きじゃない」といいながらも華麗にモードを着こなすファッショニスタ。自身のインスタグラムでは、Tシャツ&デニムのハイエンドなストリートスタイルも披露している。
F.G.1936 マネージャー
アルベルト・カウッチ さん
1991年生まれ。マウリツィオの甥にあたるアルベルトは、2017年から家業に入ったマウリツィオの兄フィリッポの息子。ロンドンのウェストミンスター大学に留学経験があり英語が堪能。そのため現在、F.G.1936社の海外営業部門を担っている。前職はイタリア最大の生地メーカーグループ、マルゾット社で営業アシスタントとしての経歴を持つ。
前回も、お二人での来日でした。
マウリツィオさんとアルベルトさんがB.R.ONLINEに登場されるのは、2回めです。海外での商談は私ともうひとり、基本的に2人で行くことが多いです。アルベルトはアジアを担当しています。もうひとりアメリカとヨーロッパの担当がいます。
日本はとても重要なマーケットです。日本で成功したブランドは、世界中どこでも成功できます。
アルベルトさんと意見し合うことはあるのですか??
異なる世代間で意見を交換することは、とても重要だと思っています。互いに理解し合おうとしているし、互いに協力し合って解決策を見つけることが、シープラスのためになるということを理解している。だからぶつかりあうことがあっても、最終的にコンセンサスがとれるところまで話し合います。
日本はいまパンツブランドが群雄割拠。とても競争が激しいです。シープラスとしては、どのように展開しようとされているのでしょう。
いま日本のカジュアルパンツマーケットは過渡期にあります。日本には感度の高い人が多く、ドレスとカジュアルの境目がないミックススタイルが好まれていて、ここ数年はドレスパンツのメーカーが作るリラックスシルエットのパンツが人気です。
B.R.ONLINEでも人気の進化系パンツですね。
シープラスの進化系パンツへのアプローチは、カジュアルパンツのメーカーが、ドレス素材のパンツを作ることです。
昨秋、B.R.ONLINEからの依頼で作ったストレッチメランジウールのパンツがとても好評でした。カジュアルパンツのメーカーなのに、実際はいてみたら縫製もサルトリアーレの技法を採用しているし、膝裏もついている。これまでシープラスをデニムブランドだと思われていた方にも受け入れてもらえました。
裾はダブルにしてもいいし、クリースを入れずにはくこともできる。53歳の私でも、26歳のアルベルトでも履けることが証明しています。このモデルは、シープラスにとっての転機になりました。大人でも若い人でも履くことができるこのストレッチメランジウールのパンツには可能性を感じています。
ジャケットにタイドアップして合わせることもできますし、トップスをニット1枚でも、アイコンのリベットがアクセントになる。もっといろいろなバリエーションを増やしていきたいとも思っています。
B.R.ONLINEがリクエストしたモデルが、シープラスにとっていい影響になっているのでしたら良かったです。そうすると、春夏のお勧めはデニムパンツをベースにしたドレスパンツということになりますか。
春夏はデニムのパターンを使った、デニム以外の素材のパンツをリリースしていきます。生産はすべてイタリア国内。素材もすべてイタリアのものを使っています。カンディアーニやルカ・ヴィスコンティなど、イタリア随一の生地メーカーのものです。なかでもシアサッカーのイージーパンツ「モリス」は、飛行機を利用する機会が多い私たちも愛用しているモデルです。
シープラスの基本であるデニムパンツも忘れるわけには行きません。2プリーツの「リド」を推していきます。ボタンホールの糸の色、袋布の柄など、内側の仕様もシーズンごとに変えるなど、細部までこだわっているんです。
このこだわりは実際に手にしてみたり、履いてみないとわからないことばかりです。ここまでこだわるのは、なぜなのでしょう。
もともと私の祖父はサルトでした。父の代には生地商として、その後はパンツメーカーとして規模を拡大しましたが、モノ作りは他社に頼ること無く自社で完結させています。
伯父(マウリツィオ)は若い頃からファッションが好きで、イタリアのファッション専門学校マランゴー二で学んでいます。映画やアート、スポーツにも造詣が深く、尊敬できるところが多いんです。ただ、ぼくはユベントスファンなのですが、彼はインテルファン。そこだけが納得いかないんです(笑)。
私は今年、日本でシープラスのブランド力を高めようとしています。品質とデザインに妥協せず、こだわりを続けていくことで、私たちのモノづくりに対する考え方や想いを、もっともっと伝えていきたいと思っています。そのためにSNSやInstagramでも発信していますので、ぜひご覧になってみてください。