BLOG / Kentaro Matsuo

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田窪寿保さん

2019.04.10

田窪寿保さん
グローブ・トロッター アジアパシフィック代表取締役
BLBG(ブリティッシュ・ラグジュアリーブランド・グループ)株式会社 代表取締役CEO

 グローブ・トロッターをはじめ、ギーブス&ホークス、ターンブル&アッサー、ハケット ロンドンなど、30以上の英国ブランドを扱うBLBG株式会社CEO、田窪寿保さんのご登場です。
 今では大社長の田窪さんですが、初めてお会いしたのは今から25年前、ヴァージン・アトランティック航空の広報部に所属なさっていた時でした。
「学生時代からロックが大好きでレコード業界に入りたいと思い、ヴァージンへ入社しました。そうしたら配属されたのは航空部門だったのです。『あれ? ヒコーキなんてやっているの?』という感じでした(笑)。航空業界には、全然興味がなかった」

 その頃は年末になると、ヴァージンからのクリスマス・プレゼントとして、田窪さんがミニ・スカートのサンタのコスチュームに身を包んだ金髪女性を連れて、私が当時在籍していた編集部へ“メリー・クリスマス!”にやって来てくれていました。
「実は彼女たちは本物のCAだったんですよ。今では考えられないですよね。完全にセクハラです(笑)」

 しかし当時のヴァージンには、そういった自由闊達とした社風がありました。それはひとえに、カリスマ的会長、リチャード・ブランソン氏によるものです。
「リチャード・ブランソン氏が来日すると、いつも私がお世話係をしていました。“ラスト・ヒッピー”を自称しており、キレイな女性が大好き。合コンをセッティングしておかないと、不機嫌になってしまうのです。困ったのは酔っぱらうと、人前ですぐに脱いでしまうこと(笑)。無邪気な、まるで太陽のような人でしたね」

 ブランソン氏はいつもふざけてばかりいたそうですが、ある時急に真顔になって、
「俺がいつも喋っていることを、お前はどう思う?」
と聞いてきたそうです。
 そこで田窪さんが「スバラシイと思います」と答えたら、
「本当かよ? 俺が言っていることは全部ウソだからな・・」と言われ、続けて
「一番大切なことを教えてやるよ。それは“ブランド”だ。何でもいいイメージがつくとウマくいくんだよ」と述べられたそうです。

「人々は“ヴァージン”と聞くと、“新しさ”を連想します。ビジネスでは、そういうイメージ作りが一番大切だということです。あの手描き風のロゴは、実際に本人が“ヴァージン”の名前を思いついた時に、手近にあったコースターへ走り書きしたものなんです。ヴァージン・コーラ、ヴァージン・ドーナツ、ヴァージン・コンドームまでありました・・」
 ブランソン氏との経験が、今のビジネスに役立っていることは、言うまでもありません(BLBGも、本当にいい社名だと思います)

 ジャケットは、ハケット ロンドン。なんとヴァージン・アトランティックとのコラボレーション・モデルです。
「世界に一着だけのカスタム・モデルですが、ちゃんとヴァージンの許可を取ったオフィシャル・モデルでもあるのです。内側のライナーには、コーポレート・カラーであるレッドとパープルが使われています」

 ウィングカラーのシャツは、ターンブル&アッサー。
「今日はこれからパーティなので、この後フォーマルに着替えなければならないのです」

 ストールとチーフは、リバティ・オブ・ロンドン。
 カフスはタテオシアン。

 時計は、レベルソ・デュオ。表裏にふたつの時刻が表示されるタイプで、もちろんGMTと日本時間となっています。

 シューズは、ションロブ。
 すべて英国のブランドです。


 さて、そんなヴァージンの広報マンだった田窪さんが、なぜグローブ・トロターのインポートを手掛けることになったのでしょう?

「ヴァージンにいた頃、キャプテンたちが大小様々なグローブ・トロッターを携えて日本にやって来るのを見ました。それが本当にカッコよかったので、絶対に欲しいと思い、ロンドンのコンランショップでひとつ購入したのです。しかししばらく使っていたら、ロック金具が壊れてしまった。そこで修理してもらおうと工場へ持ち込み、そこでしばらく話していたら、日本では扱いがないという。そこでその場で『私がやります!』と手を挙げたのです」

 まぁ、なんという偶然でしょう。金具が壊れなかったら、今のBLBG株式会社はなかったかも知れませんね。

「その後、雑誌ビギンなどと組んで、オレンジやスカイブルーなど、いろいろな別注モデルを作りました。当時グローブ・トロッターは、すでにレア・アイテムと化していましたが、日本から世界へ広がる形で、人気に火がついていきました。今では、グッチやティファニー、アレクサンダー・マックィーン、コレットなど、錚々たる一流ブランド・ショップが、グローブ・トロッターとコラボしています」

 その過程は、一時は死に体だったミニ・クーパーが、日本の根強いファンに支えられ、再び世界的な人気車種になったのと似ているといいます。

 それにしても、同世代の田窪さんと話をしていると、あまりに共通の友人や話題が多く、何時間あっても足りません。今度じっくりと飲み明かしましょう! (あ、CAがいると、尚可です(笑))

PROFILE

松尾 健太郎

松尾 健太郎

THE RAKE JAPAN 編集長


1965年、東京生まれ。雑誌編集者。 男子専科、ワールドフォトプレスを経て、‘92年、株式会社世界文化社入社。月刊誌メンズ・イーエックス創刊に携わり、以後クラシコ・イタリア、本格靴などのブームを牽引。‘05年同誌編集長に就任し、のべ4年間同職を務めた後、時計ビギン、M.E.特別編集シリーズ、メルセデス マガジン各編集長、新潮社ENGINEクリエイティブ・ディレクターなどを歴任。現在、インターナショナル・ラグジュアリー誌THE RAKE JAPAN 編集長。

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