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SPECIAL INTERVIEWマリア・サンタンジェロが提案する
ノータイ時代のナポリシャツ

2020.01.20

ナポリのカミチェリアとして人気のマリア・サンタンジェロ。母マリアさんから受け継いだ工房を切り盛りするエンツォさんと、2020年春夏シーズンのシャツについてお話を伺いました。世界的にノータイ傾向だったり、ドレスシャツよりカットソーという時代に、シャツ専業ブランドはどのように感じているのでしょう。


ヴィンチェンツォ・ロマニュオーロ さん

1953年、母のマリアさんが自身の名を冠したカミチェリア(シャツ工房)を創業。曾祖母の代からシャツ作りに携わってきた家系であり、ブランドの設立から2代目にあたるヴィンチェンツォ氏は、プロダクトマネージャーとして、いまも伝統的な仕立て技術を受け継いだハンドシャツを作り続けています。ナポリのトラッドスタイルを牽引するとともに、マリア・サンタンジェロのシャツをより多くの人に知ってもらうために数々の取り組みも実践中。新ファクトリーも稼働し、ブランドの新たな展開を推し進めています。



社長自ら営業にも生産にも関わるのも
ナポリスタイルです

B.R.ONLINE編集部 (以下、BR)日本にいらっしゃる度に、お会いしています。

ロマニュオーロ・エンツォさん(以下エンツォ)日本へはトータル50回ぐらい来ています。今年だけでも4回目です。

B.R.年に何回ぐらい海外へ商談に行かれるんですか?

エンツォだいたい1ヶ月に2回は行くので、全部で20回ほどでしょうか。地元ナポリいることのほうが短いかもしれません。

B.R.国でいうと、どちらへ行かれることが多いのでしょう?

エンツォドイツ、オーストリア、フランス、ギリシャなどヨーロッパのお客様が多いですが、アメリカやアジアも行きますよ。

B.R.社長のエンツォさんが会社にいないとなると、ナポリに戻ったときは、さらに忙しいのでは?

エンツォ海外営業だけでなく、新作のサンプル試作、コレクションの生地選びなども私の仕事なので目が回るほど忙しいです。こうやって海外にいるときのほうが、時間的に余裕がありますね(笑)

B.R.ものづくりと経営は表裏一体とは言え、経営の仕事と生産に関わる仕事を分業するというのは考えませんか?

エンツォこれはナポリ特有かもしれませんが、ナポリでは生産にもっとも詳しい人が経営者なんです。両親が職人で経営者、その子供が技術と経営を受け継いでいくという職人の街だからかもしれません。たとえ工場の規模が拡大しても、この家族経営は変わらないでしょう。経営面と生産面の両方を見るのは忙しいですが、これが私たちのやり方なので変わることはないのです。

B.R.世界中を回っていると気候も暑かったり、寒かったり、様々だと思います。今年の日本は暖冬と言われていますが、いかがですか?(※編集部注:取材は2019年11月)

エンツォ世界的な異常気象と言われていて、ナポリは冬の声が聞こえてきてもまだ半袖で済むぐらい暑いです。雨も多く、ときには熱帯雨林のような豪雨があります。それにヴェネツィアでは浸水がひどいです。イタリア中で天候がおかしいです。

B.R.世界の気候の変化が、コレクションに影響を与えることがあったりしますか?

エンツォ直接的になにか影響があるわけではありませんが、ドレスシャツの市場はいま「どしゃぶり」ですよね(笑)。カジュアル化の波はいかんともし難く、Tシャツ、カットソーの人気が増していることは行く先々で感じています。とくに若い人はジャケットの下にTシャツ&ニットという着方が増えているように思います。

B.R.世界的にカジュアル化がすすんでいます。日本では気候の変化や働き方、ライフスタイルの変化もあって、クラシックなドレスアップスタイルが減ってきているんです。

エンツォたしかに日常でもビジネスでも、ドレスアップする機会そのものが減っているのは世界的な傾向です。でも時と場合によって、エレガントなスタイルは必要だと思います。実際、マリア・サンタンジェロのシャツは、売上が落ちているということもなく、右肩上がりなのです。

B.R.じつはB.R.ONLINEが取り扱うシャツブランドのなかでも、一番セールスがいいんです

エンツォありがとうございます。私たちのシャツが変わらず続けていることが、日本のお客様に理解していただいているからこそ、どんなにトレンドが移り変わっても、私たちの地位は揺るぎないのだと信じています。

春夏にオススメ!
ノータイでも着られる3衿型はこちらです

B.R.それでは2020年春夏のコレクションについて、ご紹介いただけますか。

エンツォ春はトレンドやコーディネートが変わってきたこともあり、リネンシャツを提案しています。織りは平織りだけでなく、柄織りやドビーなど構造が変わっているものもありますし、色柄プリントのリネンも増えています。

B.R.襟型はオープンカラーですね。このテのシャツは裾をアウトして着るリゾートシャツのイメージですが、これはラウンドしているのでインして着るタイプですか?

エンツォそうです、この「フィジー」という衿型には、裾をインするこちらのタイプと、アウトして着るスクエア&スリットのタイプがあります。なぜインするのかと言うと、この襟型はリゾート用のオープンカラーではなく、イタリアではミリタリーシャツの範疇なんです。戦闘服ではなく士官服ですので、裾はきちんとパンツにインします。

B.R.なるほど、だからそれほどラフ過ぎる印象に見えないんですね。

エンツォエレガントで上品な印象は、私たちのシャツのアイデンティティですから。

B.R.こちらはリネンのバンドカラーシャツです。

エンツォバンドカラーの「コレアーノ」は、ここ数年のノータイトレンドを象徴する衿型です。

B.R.たしかにバンドカラーは世界中で人気ですよね。

エンツォリネン100の素材に洗いをかけています。着丈は少し短かめにして、裾はインでもアウトでも、好みやスタイルに合わせて着られるようになっています。

B.R.エンツォさんなら、このバンドカラーシャツ、どうやって着こなしますか?

エンツォ私なら白パン、あるいはデニムに合わせます。 紺ジャケぐらいならいいかもしれませんが、柄の印象が強いので、夏の休日にジャケットを着ないでトップス1枚で着ると思います。その際、必ず袖をまくるのがナポリ人の基本ですね。

B.R.袖のまくり方に流儀はありますか?

エンツォあまり厚みが出ないように、カフスの幅で折っていきます。カフス半分で折る人もいますが、芯地が痛むのでおすすめできません。3回折って肘が覗く手前で止めます。エレガントじゃないので、二の腕までまくりあげることはしません。

B.R.わりときっちり折るんですね。育ちの良さが表れますね(笑)

B.R.これはワンピースカラー。今春で3シーズン目ですね。タイドアップもノータイもできる、B.R.でも人気の衿型です。

エンツォ「マルチェッロ」は、母の時代からあるマリア・サンタンジェロでは歴史ある衿型です。手間とコストがかかるので一時取りやめていたのですが、私の代に復活させて現代的にアレンジしました。

B.R.タイドアップもノータイもこなせるダブルユース。クラシックなのに機能的でもあるという点が、日本で受けているようです。素材は、これもリネンですか?

エンツォリネンのように見えますが、コットン100です。リネンのように涼しげなシャツ生地で「フィアンマート(※ネップがあるの意味)」と呼ばれます。無地の生地にネップが一本入ってれば不良品ですが、いっぱい入っているとトレンド生地になるのは面白いでしょ。

B.R.生地に表情がある方が、気軽さが出せますし、シーンを問わず着るなら、生地は柄物よりこのぐらいのほうがいいですね。衿元を開いてもスマートだし、ホント使えるシャツですよね。

エンツォ日本のバイヤーにとって、マリア・サンタンジェロの新しい衿型として好評ですが、購入したお客様の普段のスタイルを崩すことなく、少しだけ変化を楽しめるところが受け入れられているのではないでしょうか。会社に着て行っても、仕事終わりにネクタイを外せば、モダンな雰囲気を感じられる。着替える必要も、いつものスタイルを変える必要もないのに、印象だけ変えられるので。

2020春夏のトレンド生地を一挙に公開します

B.R.「マルチェッロ」に使われているリネン風のシャンブレーや、先程の「フィジー」に使われている花柄のプリントリネンなど、特徴ある生地が増えているようです。

エンツォ定番として製品染めのコレクションを充実させていますが、今シーズンはとくにスポーティなデニム&シャンブレー風の生地はリネン混のものも用意しています。ほかにもコットン100のメッシュ風の「ジーロイングレーゼ」や洗いの掛かった生地も多いと思います。それとジャージー生地も、Tシャツやニットの感覚で着ていただけるはずです。

B.R.色の傾向はどうでしょう?

エンツォブラウンやカーキといったカジュアル向けの色。ほかに世界的にトレンドカラーとなっているピンクは、マリア・サンタンジェロでは「チポッラ」といって玉ねぎ色を推しています。

B.R.玉ねぎ色ですか?

エンツォ少しアンティーク調のピンク色で、古いイタリアの建造物に見られる色です。ほかにピュアホワイト。オフホワイトのナチュラルな色調もいいと思います。

B.R.柄の傾向としてはいかがですか?

エンツォ定番生地とは別にシーズンコレクションには力を入れています。そのなかでカジュアルなシャツを表現しやすいこともあり、プリント生地を取り入れています。インディゴブルーに植物柄など、あくまでマリア・サンタンジェロらしい色柄をエクスクルーシブ柄としてオーダーしているんです。

B.R.デザインも自社でされるのですか?

エンツォ主に70~80年代のアーカイブから、柄の大きさや配色を調整しています。

B.R.ご自身のシャツはもちろんオーダーだと思いますが、衿型は定番のマルコですね。お好きなコンビネーションがあると伺ったのですが教えていただけますか。

エンツォ衿型はノーマルなものが好きですが、ときどきラウンドカラーにすることもあります。ボタンはクリーンな色合いの白蝶貝で、衿羽根と袖口には端から3ミリの位置にステッチを入れています。イニシャル刺繍は、最近は白シャツにしかしません。理由はとくにないので、次のカジュアルなシャツにはイニシャルを入れているかもしれません(笑)。

B.R.今日のタイもチーフもマリアサンタンジェロですね。

エンツォそうですね。タイはアーカイブ柄からチョイスしたものです。

B.R.シャツ、タイ、チーフ以外のアイテムは、今後展開されないのですか?

エンツォそれについては、今はシークレットとさせてください。次回はなにかお話しできるかもしれませんので。

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