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giab's ARCHIVIO Recommend Style / 2018SS Vol.1giab's ARCHIVIOクリエイティブディレクター 中新井淳平が手がける次の一手

2018.03.02

「僕は実際に履いてみて、コーディネートして判断してきた」〜進化系パンツの仕掛け人〜

編集部ファッション業界では中新井さんの名前は以前から知られていますが、ジャブスアルキヴィオのクリエイティブディレクターとして知られた方もいると思います。そもそもなぜクリエイティブディレクターという職についたのですか?

中新井淳平(以下、中新井)服飾専門学校時代にトム・フォードがグッチのクリエイティブディレクターに就任してブイブイいわせていたんですが、「クリエイティブディレクターという職業はどんな仕事なのか」と興味をもったことが最初でしょうか。

編集部それで専門学校卒業後、すぐにイタリアへ渡られた。

中新井イタリアに着いたらクリエイティブディレクターという仕事がすでに確立していることを知りました。これをやってみたい!と思ったんですが、どうすればクリエイティブディレクターになれるかはわからないじゃないですか。ただひとつ、わかっていたのは、クリエイティブディレクターはブランドのすべてを知っていなければならないということ。そこでまず最初はコレクションブランドの舞台裏の仕事につきました、それからセレクトショップのショップスタッフやデザインオフィスで働いたり、実際にモノ作りに携わるため工場でミシンも踏みました。洋服作りに関わるすべての工程を体験した上で、ようやくブランドってこうやって作られているんだということがわかったんです。ここまでやってクリエイティブディレクターの道を歩みたいという思いを確かなものにすることができた頃、フィレンツェの老舗パンツメーカーがクリエイティブディレクターを探しているという話を頂いたんです。


編集部その後の活躍には目覚ましい物があります。

中新井でも最初の2シーズンぐらいは手探りでした。なんでもできるパンツファクトリーと聞いていたので、それならなんでもやってやろうと思ってしまったんです。素材もシルエットも何種類も提案していろいろやってみたんですが、なにかが違う。そこで一度マーケットの声を聞くことにしました。いま求められているものを明確にして、そこから絞り込んで削ぎ落として、それから自分が表現したいものをストレートにやってみたら状況が変わってきたんです。

編集部表現したいものって、何だったんでしょう ?

中新井言葉で表すのはとても難しいのですが、ひとつは素材だと思います。メジャーなスポーツブランドで使われているストレッチ素材を使ってファッションを表現したかったんです。その次に考えたのはシルエットです。どこに膝位置を設定して、裾丈をどうすればいいか、お尻のトップはどこにおくか、ウェストは高いのか低いのかひとつずつ検証していきました。検証のやり方は、その頃トレンドだったジャケットやシャツやニットと合わせてコーディネートするんです。どういうシルエットならモダンに見えるか、どうやって着たらスマートに見えるか、徹底的に研究していったんです。


編集部いまではフォロワーも少なくありませんが、ストレッチ素材のテーパードシルエットパンツのパイオニアです。

中新井当時は僕がもとめている素材がどこにもなかった。スポーツウェアの生地ではなく、もうちょっとファッション性のある素材がほしかったので、糸選びから混率まで、ゼロから作り出すことでようやく求めるものに近づけることができました。いまジャブスアルキヴィオで定番の「シャカウール」も、こうして出来上がったものです。シルエットも工場がもっていた型紙には一切頼らず、すべて一から引き直しです。大手のブランドでは古い型紙を少しずつ修正しながら使っていますよね。でもそうすると、どうしても古いベースが滲んでしまうんです。それに彼らは実際に着て検証してません。机上で議論して作っている。僕は実際にサンプルを履いてみて、コーディネートして判断してきました。ジャブスアルキヴィオがテーラードジャケットに合わせられることも、スポーティなカジュアルスタイルに合わせられることも、全部 僕自身がコーディネートして確かめてきたんです。

編集部結果、クラシックなパンツメーカーがやらなかったこと、できなかったことが実現しました。

中新井日本人的な感覚で細かいところまで妥協しなかったことも奏功したのだと思います。イタリア人は微調整が苦手なんです。線が1ミリ、生地の色がハーフトーン暗くなるだけでイメージも用途も変わります。僕はそこをとても意識していました。そこが成功要因だったのかなとも思います。

編集部日本人ならではの繊細な感性「微差こそ大差」というわけですね。



「いまのコーディネートにはまりながら次の世代に繋げられるデザインを」〜新たなるブランドの挑戦〜

編集部また新たなブランドに挑戦しようしています。

中新井それがGBS trousersです。もともと日本でも少量展開していた、ジャブスのファクトリーが手がけるクラシックラインを来シーズンから新たに僕がディレクションする事になりました。ジャブスアルキヴィオとの違いは、簡単に言ってしまうとGBS trousersはオンのパンツです。コーディネートの仕方は人によって違うかもしれませんが、ジャブスアルキヴィオとGBS trousersは素材も仕立ても対極にあります。ジャブスアルキヴィオを着る人が、GBS trousersを着るときコーディネートはまったく異なると思います。


編集部でもクラシックなパンツブランドは他にも数多くあり、B.R.ONLINEでもいろんなブランドを扱っています。どのように差別化していかれるのでしょうか?

中新井以前、ミラノでショップスタッフとして働いていた頃、お客さんのなかに、とりあえずジャケット着て仕事するので有名ブランドのパンツ履いておけばいいんだよね、と言って指名買いされていく方が結構いたんです。作り手からすると、そういうブランド選びでいいのかなって思っていました。「このブランド、この型番、色はこれで用意しておいて」って電話で注文するような買う方も売る方も、ぜんぜん楽しくない服の買い方って、本当にファッションなのかな?と思うんです。これでは僕の好きなイタリアのファッションが衰えていくような気がして。なんとかしたいと思っていました。メディアで聞きかじった知識だけで服を買おうとしているお客様に「もっと面白い、モダンでクラシックなパンツがあるよ」と提案して、実際にはいてもらったら「すごく良かったってよ」思ってもらえてリピーターになってくれたら、買う方も売る方もすごく楽しいですよね。

編集部確かにそうですね。GBS trousersでもそれを実践できるブランドにしていくということですね。

中新井GBS trousersも大手のクラシックパンツとは素材を変えます。いまのコーディネートにはまりながらどうやって次の世代に繋げられるかを考慮しているからです。そのうえで、これまでのクラシックとは違うところも見せていきたいと思っています。シルエットも一から引き直しましたし、ディテールも細かいところまで作り込みました。ボタンはプラスチックですが、まるで貝ボタンのような風合いはイタリアならではのフィニッシングがされていますし、レーザーでブランドロゴも彫っています。


編集部アルキヴィオの代表モデルにはウェスマンがないけど、GBS trousersにはウェスマンが付いている。ボタンやジップ、細部の仕様もGBS trousersとアルキヴィオは異なります。モデルにはすべて石の名前が付けられているんですね。ディスプレイ用にそれぞれの石付きのチェーンをオリジナルで作られたとか。このチェーンは販売の予定は無いのですか?

中新井プライス面の問題から付属にはできませんでしたが、別売りの選択肢もあると思っています。石付きなのは昔から普遍なものを連動することで「リッチ」を表現したかったんです。昔から存在する石の名前をつけたのはそういう理由です。もうひとつ不動なのとしてフェニックス(不死鳥)のマークを付けました。クラシックは消えないけれど、アップデートしていかないと消えていってしまう危険性があるというメッセージを込めています。

編集部デニム調のウールストレッチはコットンのデニムよりリッチな印象です。2タックにハイマーベルト、サイドアジャスターもクラシックで、サイドシームポケット、マチポケットの両玉縁、内側の仕様がビスコースだったりマーベルトにストッパーがついているなど本当に作り込まれていますね。

中新井日本のプロダクト並みに作り込まれているのに、フィレンツェメイドというのがGBS trousersです。ファーストシーズンは、クラシックをベースに、表ではなく裏にあるリッチと、自分が大好きなヴィンテージを表現しています。ヴィンテージテイストを取り入れながらリッチでありたいという、本来は対極にあるキーワードをかけ合わせたんです。今後やってみたいこともたくさんあるので、個人的にも楽しみにしているブランドです。

編集部日本人が遠く離れたイタリアでクリエイティブディレクターとして成功するのは本当に大変なことだったと思います。アジア人でもイタリアのファッション界で活躍できるということを実証してくれた中新井さんには、ファッション業界に憧れる若い人たちに夢を与えてくれました。ジャブスアルキヴィオにもGBS trousersにも、B.R.ONLINEはこれからも注目していきたいと思っています。



中新井 淳平 さん

1978年茨城県生まれ。高校時代、バスケットボール選手として活躍。将来を嘱望されたが、友人たちと興じていたファッションの世界へ。専門学校在学中よりイタリアに憧れ、卒業と当時に渡伊。ミラノのセレクトショップスタッフ、大手ブランドやセレクトショップのコンサルティング、老舗ブランドのクリエイティブディレクターを務める。2014年よりフィレンツェのパンツ工場「ジャブス」のクリエイティブディレクターに就任。ジャブスアルキヴィオをヒットさせた。今秋からは「ジャブス」のクラシック部門「GBS trousers」も手がけることに。


CREDIT
Producer : 大和一彦 / Model : 中新井淳平 / Photographer : 岡田ナツ子 (Studio Mug) / Writer : 池田保行 (ゼロヨン) / Designer : 中野慎一郎
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