BLOG / Kentaro Matsuo

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グィド・グラッシ・ダミアーニさん

2023.07.10

グィド・グラッシ・ダミアーニさん
ダミアーニ・グループ 代表取締役社長

 イタリアを代表するジュエリー・ブランド、ダミアーニ・グループの代表取締役社長、グィド・ダミアーニさんのご登場です。スクエアカットのダイヤモンドが並べられたクロスやブレスレットの“ベル エポック”コレクションが、大人気なのはご承知の通り。私も喉から手が出るほど欲しいジュエリーです。
ダミアーニの創業は1924年で、創設者のエンリコ・グラッシ・ダミアーニさんは、グィドさんのお祖父様にあたります。その後、ブランドは父上のダミアーノ・ダミアーニさんへと引き継がれました。

「祖父は私が生まれる前に亡くなってしまったし、父も私が正式に会社に入ってから、1年ちょっとで他界してしまった。だから直接仕事の教えを受けた時期は短かったのです。しかし、私は小さい頃から、ファミリーのビジネスに親しんできました。かつて私たちの住居は工房と同じ建物内にあり、母も同じ社屋で働いていました。だからディナーやバカンスのときは、父と母はいつも仕事の話ばかりしていました。私も物心がつく頃には、すでにジュエリーに囲まれていました。ここに私が3歳のときの写真がありますが、おもちゃにしているのは本物のダイヤモンドです(笑)。遊び道具にしていましたが、それが非常に貴重なものだということはわかっていました」

 文字通り、生まれながらのジュエラーですね。現在ではグィドさんを中心に、姉のシルヴィアさん、弟のジョルジョさんの3兄弟がダミアーニの舵を取っています。
ブランドは、コンテンポラリージュエリーの“サルヴィーニ”、若い顧客をターゲットにした“ブリス”、ウォッチ&ハイエンドジュエリー専門店の“ロッカ”、ダイヤモンド・ディーラーの“カルデローニ”、ヴェネツィアングラスの“ヴェニーニ”などを傘下におさめる一大グループとなりました。
ダミアーニは、来年創業100周年を迎えます。

「100周年は、とても重要な節目です。1世紀もの長きにわたってビジネスを続けてこられたことを誇りに思います。来年は100周年を記念してさまざまなサプライズを計画しています。ミラノを出発点として世界各国を廻る展示会を行いますし、スペシャル・アイテムの発売も予定しています。どうか楽しみにしていてください。これは兄弟3人が力を合わせてきたからこそ、成し遂げられたことだと思います」

 実は私・松尾は、兄弟3人の全員に、それぞれインタビューしたことがあります。同じブランドの兄弟なのに、まったく違ったキャラクターだったことを覚えています。

「私はリーダーシップを執り、ブランドの戦略を練る係です。一応、ボスということになりますね。姉のシルヴィアは、アーティスティックで芸術家肌。コミュニケーションやPRを担当しています。彼女はヴェネツィアン・グラスのブランド、ヴェニーニを特に愛しています。弟のジョルジョはダイヤの仕入れ、ジュエリー作り、生産管理など、実務に長けています。兄弟ですが、ひとりひとり個性が違います。だからお互いを補い合って、上手く行っているのでしょう。仲違いしてしまうファミリーが多いなか、われわれは恵まれています」

 今季のビジュアルは、カプレーゼやスパゲッティなどのイタリアン・フードにジュエリーを合わせた斬新なもの。面白いアイデアですね、と伝えると、
「フードもジュエリーも、イタリアを代表する文化だということを伝えたかったのです。日本でもイタリアンは人気でしょう? 私はいまドバイに住んでいるのですが、かの砂漠の街でもイタリア料理が大ブームで、イタリアン・レストランはいつも満員なのですよ」


デジタル要素にあふれ、コンテンポラリーな“ベル エポック・リール”コレクションが新たに登場した。

 日本で人気のコレクションは? との問いには、
「日本のベストセラーは、世界で売れているものと同じです。日本のみならず、マーケットの好みは、ますますインターナショナルになってきています。ベル エポックに加え、ミモザ、マルゲリータなどに人気があります。新しい“ベル エポック・リール”も好評です。これはリング中央のリングをクルクルと動かすことができます。面白いでしょう? 日本のお客様は、美意識のレベルが高く、クオリティに厳しい。ブランドの歴史や、ジュエリーの背景にあるストーリーにもご興味を持たれます」

 恒例のファッション・ウォッチングは、まずはジュエリーから拝見して行きましょう。

 時計はアップルウォッチですが、ウォッチカバーはダミアーニ製。パヴェ・ダイヤモンドでフル装飾されており、時計にワンタッチで取り付けることができます。テクノロジーはそのままに、没個性なスマートウォッチを“ダミアーニ・タッチ”にするために開発したとか。
 私が思わず、それって本物のダイヤですか? と口走ると、
「私は生まれてこの方、人造ダイヤには触ったことすらありません。人造ダイヤに触れると、気分が悪くなり、病気になってしまうのです(笑)」と。
 これは、大変失礼しました。

 時計の横に着けたブレスレットは、“ディ・サイド”コレクション。ブルーのラピスラズリを選んだのは、スーツのカラーとコーディネイトするため。

 大粒のダイヤで構成されたカフリンクスは、ダミアーニのスペシャルピース。こういったオーダーメイドのハイ・ジュエリーは、ダミアーニが最も得意とするところです。
「両方で少なくとも3ct(カラット)はあるかな?」

 クロス型のペンダントは、「ベル エポック・アイスバーグ」。ダイヤモンドからサファイヤまで、ホワイト〜ブルーのグラデーションを描くようにセッティングされています。

 左手のブレスレットは、タイムレス クラッシコのアイスバーグ、ベル エポック・リール、ノッテ・ディ・サンロレンツォなど。合計5本を重ね付けしています。
 子供の頃から親しんできたダイヤモンドは、まさに“お手のもの”といったスタイルですね。

 ダイヤモンドのラペルピンもベル エポックのシリーズですが、その横についた赤と緑の小さなピンはダミアーニ製ではありません。
 「これはイタリア大統領から授与されたカヴァリエーレ・デル・ラボーロ勲章の略章です。これは実業家に与えられる勲章のなかで、いちばん位(くらい)の高いもので、イタリア社会の発展に寄与した人や、公正な会社経営をした人物に与えられます。私より若い人で授与されたのは数えるほどしかいないのですよ。そのうちのひとりはジョン・エルカーン(ステランティス会長、THE RAKEの名前の由来となったジャンニ・アニエッリの孫)です」
 これには、恐れ入りました。

 スーツは、ミラノにあるテーラー、サルトリア・ロッシで仕立てたもの。
「ファットアマーノ(ハンドメイド)だよ」と。

 シャツは、ジェノバの小さなカミチェリアでオーダーしたもの。
「港町ジェノバに船で寄ったついでに仕立てた」そう。この方は、自家用クルーザーもお持ちです。
 他にはブルックス ブラザーズのシャツもお気に入りで、
「品質は“最高”とはいえないが、シワにならず、スーツケースからすぐに出して着られるところが便利」と。

 ダイヤ入りのマネークリップもダミアーニ。
「一番上に見せるのは、ユーロとドバイのディルハムと日本円と、どれがいい?」と気にされていました。マネーもインターナショナルです。

 ベルトはルイ・ヴィトン。
「ダブルフェイスになっていて、出張に便利」

 ダークネイビーのシューズは、ドルチェ&ガッバーナ。
「女性はハイヒールを手に持って、スニーカーで移動できるが、男性は朝から晩まで同じ靴を履かなければならないことも多いから」という理由でチョイス。ソールがオパンケ製法となっており、確かに履きやすそうな一足でした。ドルチェの靴って、イタリア人の間で、評価が高いですね。

 全身をネイビー系でまとめ、白いシャツの胸元にダイヤモンドのネックレスをチラ見せするのは、グィドさんのシグネチャースタイルといえるでしょう。
「昔は白いシャツは着ませんでしたが、だんだんとホワイトが好きになってきました。日焼けした肌に白シャツを合わせると、顔が明るく見えるのです」

 昔はスポーツカー好きのフェラリスティ(フェラーリのファン)として鳴らしたグィドさんに、今のご趣味は? と伺うと、
「家族と過ごすこと。私には13歳から7歳まで4人の子供がいます。上から男女男女。彼らと一緒にファミリーで過ごす時間が最高のひとときです。下の息子が3歳半のとき、私と息子ふたりで、まったくお揃いのデザインのスリーピース・スーツを仕立てました」
 さすがお洒落の国イタリア、そんなに小さい頃からオーダーメイドに親しんでいるのですね、と感心すると、
「そんなことをしているのは私だけです。息子ふたりは(成長して)半年で着られなくなってしまった(笑)。今でも着られるのは、私だけです。まったく馬鹿げているな、と思いつつ、かわいいのでつい作ってしまった(笑)」
 巨大ブランド・グループの総帥で、生粋のファッショニスタで、叙勲までされているにもかかわらず、その素顔は子供たちにデレデレのよき“パーパ”なのでした。

 

THE RAKE
https://therakejapan.com/

PROFILE

松尾 健太郎

松尾 健太郎

THE RAKE JAPAN 編集長


1965年、東京生まれ。雑誌編集者。 男子専科、ワールドフォトプレスを経て、‘92年、株式会社世界文化社入社。月刊誌メンズ・イーエックス創刊に携わり、以後クラシコ・イタリア、本格靴などのブームを牽引。‘05年同誌編集長に就任し、のべ4年間同職を務めた後、時計ビギン、M.E.特別編集シリーズ、メルセデス マガジン各編集長、新潮社ENGINEクリエイティブ・ディレクターなどを歴任。現在、インターナショナル・ラグジュアリー誌THE RAKE JAPAN 編集長。

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