BLOG / Kentaro Matsuo

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ダヴィデ・ファントーニさん

2020.07.10

ダヴィデ・ファントーニさん
在日イタリア商工会議所 事務局長

“商工会議所 事務局長”と聞くと、どんなイメージを持たれますか? 「経営や資金などの話をしている、なんだかカタそうな人・・」とか? しかしアタマに“イタリア”がつくと、大分事情は変わってくるようです。今回ご登場のダヴィデ・ファントーニさんは、189cmの高身長のイケメンで、一見すると、モデルかファッション関係者のようです。

「今日は、洋服の取材だというのを、すっかり忘れていました・・」

そういいつつ、オフィスのクロゼットから、いくつかのワードローブを取り出すと、ご覧のようなコーディネイトを組んでくれました。このへんのセンスと臨機応変さは、さすがイタリア人です。

ジャケットは、イッセイ ミヤケ。

「他には、ヨージ ヤマモトやkolorもよく着ます。日本の洋服が好きなのです。イタリアの服と比べると、日本のもののほうがカタチもさまざまで、自由にデザインされていると思います」

なるほど、われわれ日本人からすると、イタリアの服のほうが、自由度が高いような気がしますが、クラシックを遵守する彼らは、逆に感じているのですね。

Tシャツは、なんとあのTENGAのノベルティ(知っていますよね?)。“LOVE ME TENGA”と書かれています。

「これは貰い物です。たまたまオフィスにあったので、合わせてみました。TENGAは使ったことはありませんが、いいものではないですかね(笑)。使う人が増えれば、いろいろな問題が解決するかもしれない」と苦笑しつつ答えてくれました。

トラウザーズは、古着屋で手に入れたもの。ダヴィデさんは、古着屋のみならず、東京の路地裏を散歩するのが大好きだそうです。

「東京は私が大好きな場所です。もう20年間も住んでいます。しかしニューヨークやパリのような、都会としての東京には、ぜんぜん興味がない。それならニューヨークへ行けばいいのです。それよりも路地裏や横丁にこそ、東京のよさがあると思います。路地を歩くことは、私の趣味なのです」

アクセサリーは、イタリアのDODOをはじめ、インドやギリシャで買ったもの。

「ギリシャへは、よく行くのです。ギリシャ人は、善悪がハッキリしている。ギリシャには、良い人か悪い人、2種類の人間しかいません。対してイタリア人は、良い人が悪いことをしたり、悪い人が良いことをしたりする。グレイゾーンが大きいのです。その点は日本人に似ていますね(笑)」

ダヴィデさんのご出身は、ルネッサンスの都フィレンツェです。フィレンツェ風の装いというのはありますか? との問いには、

「フェラガモやグッチを生んだ街なので、古くから、レザー職人の伝統があります。そして装いのニュアンスを大切にします。イタリアは北へ行けば行くほど、地味なのです。日本では、ナポリがイタリアのイメージを代表していますが、濃いメイクアップをした女の人や、マッチョな服を着た男の人は、南のほうの人たちのイメージなのです」

ダヴィデさんは、名門フィレンツェ大学にて日本語を専攻していました。ですから日本語は、驚くほど達者です。そればかりか、英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、アラビア語(そして母国語であるイタリア語)と、なんと7カ国語を話せるそうです。英語ですらマトモに話せない私とは大違いです。

「どうやったら、そんなに外国語が話せるようになるのですか?」との問いには、

「やはり相手に対する興味が大切です。知らない人や知らない文化に対して、知ろうという気持ちがあれば、マスターできるものですよ」と。

しかしダヴィデさんは、フィレンツェ大学以外にも、ソルボンヌ大学や東京大学で学んでいたことがあるそうですから、やはり“地頭”が違うのでしょう。

東大時代は、日本における部落問題を研究されていたそうです。実際に被差別部落に住み込んで、彼らの生活を観察していたこともあります。

「差別を受けることをマイナスとして見ないでください。差別を受けてきたからこそ、特徴的に、魅力的になった部分もあると思うのです」

そんなさまざまなバックグラウンドを持つダヴィデさんが、現在の仕事に就かれたのは10年ほど前から。

「われわれの仕事は、日本の市場とイタリアの企業の橋渡しをすることですが、いわゆる商工会議所とは、まったく違うことにチャレンジしてきました。ビジネスに加えて、アート、音楽、ライフスタイル全般の要素を取り入れようと思ったのです」

開催するイベントの数は、大小合わせて、年間150回にも及ぶとか。

「中でも日本における最大級のイタリアン・フェスティバル“Italia, amore mio!”(イタリア・アモーレ・ミオ!)はすごいですよ。六本木ヒルズや天王州アイルなど、大規模な会場で、アーティストやミュージシャンを呼んで行うのです。イタリアといえばクラシックですが、コンテンポラリーなイタリアも知ってほしいと思っています」

新しいところだと、会員制オンライン語学サロンの開設。ここではイタリア語を学びながら、料理レシピやワインなど、イタリアに関するさまざまな知識を得ることができます。参加者は自分のペースで無理なく学習を進められます。イタリア商工会議所が主宰する、イベントにも参加できるそうですよ。キャッチコピーは“イタリアに恋しちゃう?”です。

https://italia-amore-mio.com/ja/online-salon/

また、去る7月10日に、オンラインにて行われたJOOP(ジャパン オリーブ オイル プライズ)も面白い試みです。これはイタリアを含む15カ国から350ものエクストラバージンオリーブオイルを取り寄せ、コンテスト形式でナンバーワンを決めるイベントです。今年からは味に加えて、ラベルのデザインを競うデザインアワードが追加されました。審査員は、建築家・隈研吾氏、クリエイティブディレクター・佐藤可士和氏など、そうそうたる顔ぶれでした。

www.jooprize.com

さて、ここでお気づきの方もおられるでしょう・・。そうです、コロナのせいで、すべてのイベントはオンラインになってしまったのです。

「今年は素晴らしい年になるはずでした。数多くのイベントを予定していました。しかし、そのすべてが中止、もしくはオンラインになってしまったのです。本当に大変なことになってしまったと思います。しかし私は、これはチャンスでもあると思っています。Zoomを使ったサロンや、オンライン・イベントなど、新しいことにチャレンジするいい機会です。私は今までずっと、問題が起きたときは、それはチャンスだと考えてきました」

「それに自分自身を見つめ直す、セルフ・コミュニケーションの時間も持てました。私は今年で50歳になります。もうあまり、無駄な時間を過ごしている暇はないことに気が付きました。これからは、自分の好きな人と、好きなことをして生きていこうと思います」

実は、このブログのインタビュー取材も、コロナのせいで、過去2ヶ月間にわたってストップを余儀なくされていました。その再スタートが、ダヴィデさんのようなポジティブな方で、本当に良かったと思います!

 

THE RAKE
https://therakejapan.com/

PROFILE

松尾 健太郎

松尾 健太郎

THE RAKE JAPAN 編集長


1965年、東京生まれ。雑誌編集者。 男子専科、ワールドフォトプレスを経て、‘92年、株式会社世界文化社入社。月刊誌メンズ・イーエックス創刊に携わり、以後クラシコ・イタリア、本格靴などのブームを牽引。‘05年同誌編集長に就任し、のべ4年間同職を務めた後、時計ビギン、M.E.特別編集シリーズ、メルセデス マガジン各編集長、新潮社ENGINEクリエイティブ・ディレクターなどを歴任。現在、インターナショナル・ラグジュアリー誌THE RAKE JAPAN 編集長。

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