2019.01.28
人気ブランドのキーマンから話しを聞くB.R.ONLINEのスペシャルインタビュー。それぞれのブランドの根源にあるもの、クリエイションへの思い、発想の原点に迫ります。錚々たるナポリブランドの縫製工場として稼働してきたGabo。その矜持は、カザルヌオーヴォ人である2人のサルトの誇りにありました。
ジャンフランコ・アルトベッリ さん
1968年、カザルヌオーヴォ生まれ。祖父が開いた工房で働くサルトだった父親から技術を受け継ぎ、いまも生産技術のトップを務めるジャンフランコは誇り高きサルト。Gabo(ガボ)の名称は「両氏の氏名から共通のアルファベットを取り、名付けられたのが由来です」。
ジュゼッペ・ニコーテラ さん
1965年、カザルヌオーヴォ生まれ。1925年に祖父が開いた工房に母が努めていたため、幼い頃から工房を遊び場に育つ。
日本で本格展開を初めて3シーズン目になります。毎回(2019年春夏)のテーマや打ち出しは、どのように設定されているのでしょうか。
あまりトレンドを意識することはないです。生地を買い付ける際に、自分たちのテイストに合うもの、自分たちの仕立てに相応しい織りと色柄を季節に合わせて選ぶんです。春はノーブルでナチュラルな素材が多くなります。色はアースカラーがGaboの軽い仕立てに似合うと思います。強いてトレンドというか傾向と言えばチェック柄が多いのは今年らしいかな。
僕は自分が着たいものしか選ばないからね(笑)
ジャケットの素材バリエーションが多いですよね。スーツではなく、ジャケットというところに意味があるのでしょうか?
Gaboの服に興味を持って頂けるお客様は、ある程度いろんなブランドを着てきた方だと思うんです。ひと通りのブランドとひと通りのアイテムが揃ったクロゼットがあり、そのうえでカザルヌオーヴォ仕立てに魅せられてGaboの服を手にとって頂ける。そういう方々に我々のエモーションを伝えるのには、ジャケットが伝わりやすいと考えます。
袖を通せばすぐにお分かりいただけますから。
確かに店頭では、パンツから試着するよりまずはジャケットの試着ですよね(笑)。
ジャケットを着ていただければすぐに私たちのことを理解できると思います。気に入っていただければ、きっとスーツを着たいと思って頂けるはずです。
パンツもきっと気に入っていただけますよ。
今季、とくにお二人がオススメだと思う色柄を挙げていただきたいのですが。
難しいな。だって、全部オススメなんだもの。
そこをなんとか(笑)。
今春はチェック柄が気になっています。ウール100%のもの、ウール×シルク×リネンもいい。このブルー、グリーン、グレー、ブラウンのチェック柄はあえてトーン・オン・トーンのものを厳選しました。白シャツだけでなく、サックスブルーのシャツにも似合いそう。パンツは白のコットンパンツで合わせたらいいのではないでしょうか。
僕もウール×シルク×リネンはオススメですね。このあたり、柄ではないんだけど、リネン混らしいメランジ調の生地は、着ればもちろんのこと見た目にも軽快でいいよね。ただ、僕はソラーロコレクターなので、個人的には年中ソラーロをオススメしたいね。
前回、インタビューした際もソラーロでしたよね。
よく覚えてくれているね!
Gaboのコレクションは、美しい発色のものが多いですよね。最近はどこもブリティッシュ傾向で、落ち着いた色のコレクションが多いのですが、Gaboを見るとホッとするといいますか安心できるんです。
僕たちカザルヌオーヴォの人間はナポリ人のセンスに近いからね。性格も着る服の色も明るいほうが好きなんだ。
カザルヌオーヴォでは、皆なんらかのサルトの仕事に携わっています。幼い頃から工房が遊び場で、ナポリのサルトから発注された生地に囲まれて育つんです。だからナポリ人の好きな明るい色柄が刷り込まれているのでしょう。
ナポリ人のことを「ナポレターノ」と呼ぶように、カザルヌオーヴォ人のことは「カザルヌオーヴェーゼ」と呼ぶんだよ。(注釈:カザルヌオーヴォはナポリ県にある自治体のひとつです)
今日お持ちいただいた2型の新作モデルも、とても明るい色柄の生地です。
こちらのグリーンのチェック柄ジャケットは「ニューナポリ」。キアイアより少し肩幅のあるタイプで、ウェストも絞り込まれています。フロントカットはサルトリアナポレターナ風に少しカッタウェイ気味ですね。マニカカミーチャや3パッチポケットなどの仕様はバイヤーの希望に沿って変更できますよ。
ハンドの箇所が相変わらず多いですね。
10箇所以上ハンドで、このプライスを実現しているブランドはナポリでもそうはありません。縫製だけでなく裁断も手作業でハサミを使います。これによってGaboに「2つの軽さ」が宿るんです。
袖付・肩の柔らかさは他とは比べものにならないことが、すぐわかると思います。そして着心地に関係ないと思われがちなボタンホールやポケットまわり、裾の巻き縫いなども手作業で縫うことで、ジャケット全体に軽さが生まれるんです。
着心地の軽さと、見た目の軽さ、これがハサミと針によって生み出される「2つの軽さ」なんですね。
私たちのコレクションは、他所より薄手で軽い生地を使うことが多いんです。やわらかい生地は、厚手の生地と違って、細心の注意を払って裁断し縫製しなければなりません。そのためには自動裁断機やミシンを使うのではなく手作業でなくてはならないんです。
Gaboのコレクションの魅力が良くわかりました。それにお二人の今日の着こなしも揃っていて素敵ですね。ともにノータイでスーツという。
シャツは2人ともマリア・サンタンジェロのワンピースカラーを着ているんだ。
このシャツはタイをしないときには最高だよ。前立てから一枚で続く衿が美しくロールして、台衿がないのに高さもあり、とてもナポリらしい表情です。
B.R.ONLINEでもマリア・サンタンジェロのシャツはとても人気があります。このワンピースカラーもカッコいいですよね。うちでも取り扱いあるんですよ。
マリア・サンタンジェロのヴィンチェンツォ・ロマニュオーロ、ヴィンチェンツォ・マリア・ピザーノとは友だちなんだ。彼らも僕らの服を着てくれていて、互いに仲がいいんだ。僕たちの好きなシャツをB.R.ONLINEも好きでいてくれて嬉しいよ。
ところでGaboのインスタをフォローしてるんですが、フォロワー数すごくないですか?
いま8万人ぐらいかな?
ナポリのサルトで、こんなにフォロワー多いとこほかにあります?
どうかな?(笑)
あまり意識していませんが、それも私たちの服の評価だとしたら嬉しいですね。
Gabo Instagram
https://www.instagram.com/gabo_napoli/?hl=ja
Photographer : 岡田ナツ子 / Writer : 池田保行 (ゼロヨン)