2023.02.02
まだまだ重たいコートが手放せない日が続きますが、冬の外出時の気持ちをアゲてくれるのは暖かくてお洒落なコートではないでしょうか。たとえばクラシックなチェスターコートは既にお持ちの方が多いと思いますが、冠婚葬祭やスーツを着用の日ぐらいしか出番が無いという方もいらっしゃるのでは。そこでクラシックな作りなのにモダンな雰囲気ある絶品コートを、戸賀さんにご紹介いただきました。
寒さが厳しい折り、街は重たいコートを羽織った人ばかりですが、戸賀さんのコートはとても軽そうです。今日のコートはトップメゾンのファクトリーとしても名を馳せるガボ。ナポリ服の良さをよくご存知の戸賀さんも贔屓にされているブランドです。
「ガボの服って、いまだに手仕事も多い伝統的な仕立てなのに、どこか遊び心があるというか、大人の余裕を感じるデザインになっている。このコートも一見、普通のダブルブレステッドコートでしょ。でも着てみると、シルエットがストンと落ちていて、まるでロングジャケットとして作られたみたいな、今っぽいユルいシルエットに通じる解釈がされている。だからジャケットっぽくタートルネックニットに合わせて着たくなるんだね。」
キャメルカラーのコートは、ウール100の4つボタンダブル。ダブルなのに、ノッチドラペルという組み合わせも珍しいのですが、袖は切羽を切らず、飾りボタンを付けない筒袖仕様でミニマムに作られています。それでいてシルエットは大人のちょいユルとでもいうべきボックス型で、ウエストを絞り込んだグラマラスなシルエットが特徴のナポリ仕立てとは、一線を画すものになっているのです。
「最初、カシミアかと思ったぐらい柔らかな極上ウール。めっちゃ軽くてフワッと纏えるところもいいよね。冬、遊びに行く時のコートがビジネス使いのコートっぽいと、なんか醒めちゃうんだけど、こういう小粋なコートなら、逆に会社に着て行った時にも目を引きそう。洋服に詳しくない人からも、センスあるなって思われるんじゃないかな。」
以前、B.R.ONLINEのインタビュー記事で「自分たちが目指すのはサルトリア・コンテンポラーレだ」と語っていたガボ。スーツ、ジャケット、コートを基本に、自分たちの目の届く範囲内でモノ作りすることを大切にしているブランド。その上で「たとえ古クサい色柄の生地でも、自分たちなら古クサくない服を作ることができる」と話していたのが印象的でした。そんなガボだからこそ、今回のコートが出来上がったのでしょう。
もう1着、ダークグレーのバリエーションもラインナップにありました。本当にクラシックを知るサルトリアはフォーマル以外には黒を仕立てないもの。あえてダークグレーという選択がガボの矜持を物語っています。
「ダークグレーなんだけど、ほぼ黒なんだよね。ナポリの頑固なサルトリアは、黒はフォーマルかモードの色だからって、絶対に手を出さないものなんだけど、ギリギリを攻めてくるあたり、ガボの挑戦状というか、らしさというか(笑)。気持ちユルめに仕立てている、この絶妙なサイズ感もお見事。このバランス感覚のダブルブレステッドのコート、これまで見たことないよね。」
そう言いながら「このタイプのコートは襟立てとか、崩して着たりしない方がいいね」とも。コートとしての主張があるだけに、素直にサラッと羽織る着方こそ魅力的なのだそう。
「ニットに羽織っただけで、このリラックスしたちょいユルなシルエットが伝わると思う。パンツなんかデニムでいいもんね。これだけ自由に新しいことができるっていうのは、本業が充実しているからこそ。こういう新しい感性が、メンズのクラシックを進化させていく原動力なんだと思うよ。」