2020.01.10
機能性素材のスポーツウェアや、セットアップなど、いまトレンドのアイテムを豊富に揃える 「モノビ」 は、イタリアの生地メーカー・ベステ社が擁するスポーツカジュアルブランド。今春から本格的に日本展開をスタートするこのブランドのCEOにお話を伺う機会を得ました。
ジョバンニ・サンティ さん
1992年に創業したイタリアのテキスタイルメーカー・ベステ社のCEO。ベステ社は高密度織りカジュアル素材の技術力に定評があり、パリやミラノのラグジュアリーブランドからも高い信頼を得ている。2015年、自社ブランドとしてモノビをスタート。機能性素材を用いたシンプルでスポーティかつ都会的なカジュアルウェアのコレクションを展開する。
ベステ社はユーティリティファブリック(機能素材)や高密度コットンなどが有名なイタリアの生地メーカーですよね。
私たちはエルメスやルイ・ヴィトン、バーバリーやドルチェ&ガッバーナといった、世界的に有名なメゾンのために生地を作るメーカーです。生地部門のほかにデザイン部門も社内にあり、生地部門とデザイン部門を統合した自社ブランドがモノビです。
もともと機能素材が得意なメーカーなのですか? スーツ用のウール素材を手掛けたりは?
機能素材やスーツ生地ではなく、現代的なカジュアル素材を得意としています。ロロ・ピアーナやゼニアは、クラシック生地のトップブランドですが、私たちはコンテンポラリーなカジュアル素材を得意としています。
オリジナルブランドを作ろうと思ったのはなぜですか?
一般的な生地メーカーは、BtoB形式のビジネスモデルですが、エンドユーザーにまで辿り着けるブランドを立ち上げることは、生地メーカーの新たなミッションと考えたからです。生地からウェアまでを手掛けることで、確実な品質保証ができることが大きな強みです。このような企業は、ゼニアとロロ・ピアーナしかないのです。まだまだ差は大きいですが、私たちもそのレベルを目指したいと考えたのです。
なるほど。生地から製品まで一貫して品質を保証できるのは、超一流のラグジュアリーメゾンならでは。モノビはカジュアルウェアのラグジュアリーメゾンを目指しているんですね
近年、日本ではメンズファッションのカジュアル化が進んでいます。スポーツアイテムを普段のスタイルにミックスするのも一般化しました。イタリアではいかがですか?
イタリアでも状況はまったく同じです。カジュアル化の波は世界的な傾向だと思います。私もCEOとしてクライアントを訪問するときも、10年前ならスーツでしたが、最近はジャケットにTシャツでも受け入れられるようになりました。海外に商談に行く際もTシャツです、今回の日本でもTシャツスタイルで周りました。もちろんTシャツとはいえ、ラグジュアリーな素材で上質なものであることは必要です。Tシャツならなんでもいいというわけではないのです。
たしかに、カジュアル化が進んだからと行って、なんでもいいというわけではないですよね。大人のスポーツカジュアルは、ラグジュアリーでなくてはならないという点は同感です。それにスタイルやアイテムも、トレンドよりスタンダードなほうが似合いますよね。
モノビで表現したいのはシンプルでモダンなカジュアルです。生地そのものはもちろん、機能性もクオリティの高いコレクションを目指しています。
B.R.ONLINEでは2020春夏シーズンから取り扱いがスタートしますが、コレクションは5シーズン目と伺いました。
はじめは小規模なコレクションだったのですが、2019秋冬から本格的にコレクションを拡大しました。今季は初めてニットが登場しますが、シーズンごとにコレクションテーマを設けているわけではありません。その代わり、10年後も着られる服でありたいというフィロソフィーを受け継いでいます。
トレンドを超えたモノ作りをされているんですね。ということは絶対的な定番モデルがあるとか?
あります。毎シーズン少しづつ改良し進化はしていますが、1stシーズンから継続しているのは 「ニンボ」 というダウンジャケットです。継続定番があるということから、私たちが流行に左右されるファッションを作っているのではないということをおわかりいただけると思います。
これはスリーシーズン対応のダウンなんですね。
私も年に8ヶ月は着ています。生地に撥水加工がされているので、とても機能的です。ほかにも毎シーズンリリースしているパーカとパンツのセットアップもモノビらしさを表すスタイルとして定番化しています。見えないところまで丁寧に縫製しているという意味で、裏返しても着られるというプレゼンテーションをしているんです。
このセットアップはB.R.ONLINEでも取り扱う予定です。着やすいし、モダンで洗練されていて、ラグジュアリースポーツカジュアルにぴったりですね。
じつはB.R.ONLINEで取り扱うスポーツアイテムに、このロゴを大胆に入れてほしいとリクエストをさせていただいたんです。サンセリフ体のロゴデザインが、とてもモダンな印象だったので。
もともとロゴを大々的に使うことには懐疑的だったのですが、次回はロゴデザインのコレクションを投入しようと思っているところです。モノビはセリエA・パルマに協賛していて、選手やスタッフのためのウェアを提供しているのですが、今シーズンはエクスクルーシブアイテムとして「MONOBI」のロゴ入りアイテムを追加する予定なのです。
パルマといえばビッグクラブじゃないですか。もうすでにビッグメゾンへの道を歩きだしているんですね。
これまでは機能性やクオリティを重視したコレクションをメインにしていましたが、これからはファッション性も大切だと思っています。
でも機能素材やラグジュアリースポーツウェアは、多くのブランドが注目しているカテゴリーですよね。モノビは、どのような特徴をだしているのでしょうか。
クオリティと価格のバランスで、ほかのブランドとは差別化できます。生地から生産まで自社工場なので価格を抑えることができるのです。さらに2020秋冬シーズンからは、すべてのアイテムの素材について、トレーサビリティ情報を提供します。
生産地や流通経路が開示されていると安心感があります。
われわれは自分たちの工場で生産していますが、モノビのコレクションは、どんな工場で、どのような従業員が手掛けているのか、を自社サイトで公開しています。もし仮に海外の工場で生産したものでも、どこの国の工場で、誰が作ったかを包み隠さず公開していきたいと思っています。今後のコレクションを楽しみにしていてください。
ところでモノビは、日本市場をとても重視していると伺いました。
日本人は目が肥えていてクオリティを理解できるお客様がとても多いのです。世界各国のマーケットを調査してみると、たとえば同じブランドでも、他国のバイヤーは売れ筋の商品を買い付けますが、日本のバイヤーはブランドの特徴をよく表しているものや、品質の優れているものを選んで買い付けます。日本で認められるということは、クオリティが高いということを証明しているのと同じです。だからこそモノビは、あえて厳しい市場で勝負することを選びました。
それだけ自信があるということですね。
日本で認めてもらいたいというよりも、モノビのクオリティを高めるために日本で戦うことが必要だと考えているのです。モノビをさらに良くするのは日本のマーケットなのですから。
日本も、イタリアメイドのクオリティの高さと美しいモノ作りには、高く期待しています。
最後に私からひとつ質問させてください、モノビというブランド名はどういう意味だと思われますか?
そう言えば、どういう意味なのでしょう。
「モノビ(MONOBI)」の「モノ」とは、「Something」、日本のモノ(物)のこと。「ビ(BI)」とは「Beauty」、美しさのことです。わたしたちがどれほど日本に注目しているか、おわかりいただけることでしょう。
Producer : 大和一彦 / Photographer : 岡田ナツ子 / Writer : 池田保行 (ゼロヨン)