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SPECIAL INTERVIEW女史マリア サンタンジェロの伝統を現代へ紡ぐ

2019.07.01

ナポリの仕立てシャツとして、人気の高いマリア・サンタンジェロ。母の工房をいま切り盛りするのは、末っ子で長男のヴィンチェンツォさん。来日した彼に、ブランドの今昔とこれからについて伺いました。


ヴィンチェンツォ・ロマニュオーロ さん

1953年、母のマリアさんが自身の名を冠したカミチェリア(シャツ工房)を創業。曾祖母の代からシャツ作りに携わってきた家系であり、ブランドの設立から2代目にあたるヴィンチェンツォ氏は、プロダクトマネージャーとして、いまも伝統的な仕立て技術を受け継いだハンドシャツを作り続けています。ナポリのトラッドスタイルを牽引するとともに、マリア・サンタンジェロのシャツをより多くの人に知ってもらうために数々の取り組みも実践中。新ファクトリーも稼働し、ブランドの新たな展開を推し進めています。


ワンピースカラーとサルトリアーレ

B.R.ONLINE編集部 (以下、B.R.)B.R.では、いま「マルチェッロ」が好調です。先日来日されたGaboのお二人にお話しを伺った際に、「世界一美しい襟型」と評されていました。

ヴィンチェンツォ・ロマニュオーロ (以下、ヴィンチェンツォ)それは光栄です。「マルチェッロ」は、私が生まれる前から、母が仕立てたシャツにあった衿型。アーカイブにあったこの衿型を現代的にモディファイして世の中に送り出したものです。タイドアップもノータイもこなせますが、前立ての裏側から衿羽根までを一枚仕立てにすることで、ノータイでボタンを開けた時、胸元がすっきりと美しく見えるワンピースカラーです。手間のかかる技術を要する衿型ですが、ナポリらしい衿型のひとつではないかと思っています。

B.R.いつ頃からある衿型なのですか?

ヴィンチェンツォたぶん1970年代だと思います。最近まで工房にいた母が、時々昔のデザインについてどんな型紙で、どのような縫製だったかなどを話してくれるんです。それをベースに現代的な工程に置き換えました。マリア・サンタンジェロのコレクションは、伝統的な技術と最新の技術を巧みに使い分けているのです。来シーズンは、また新しいワンピースカラーも企画していますので期待していてください。

B.R.これまで2ポイントハンドで展開されていた2.0シリーズのシャツを、昨秋から4ポイントハンドの2+2シリーズに変更されました。評判はいかがですか?

ヴィンチェンツォマリア・サンタンジェロは、もともと4ポイントだったんです。昨年、オリジナルへの回帰と、自分たちのアイデンティティを再確認するため戻しました。袖付け、剣ボロの閂、ボタン付け、そしてガゼットの4箇所を手作業で行なっています。大量生産のシャツメーカーにならないように心掛けながらも効率を上げ、価格を抑えながらクオリティを向上させることを常に第一に考えています。4ポイントに手が入ると工業製品というより、仕立てのシャツという意識が高まるようで好評をいただいております。

B.R.確かに。4ポイントでも十分、手縫いのシャツの味わいを感じることができます。

ヴィンチェンツォ私自身の個人的な思いですが、近年「サルトリアーレ」という言葉が横行して、汚れてきているように思うことがあります。たとえば織りネームを手作業だけで取り付けるのは、サルトリアーレとはいいませんよね。最低でも着心地を左右する袖付けだけでも手作業で縫製すべきと思うのです。シャツの仕立て屋=カミチェリアとしての誇りですから。

伝統あるナポリシャツの3代目がいま考えていること

B.R.マリア・サンタンジェロはナポリのカミチェリアとしての伝統を受け継いでいるブランドです。ヴィンチェンツォさんは何代目にあたるのでしょう?

ヴィンチェンツォ3代目ですね。祖母が開いたシャツの工房を、母のマリアがブランドとしてスタートさせました。

B.R.前回来日したときは義兄のエンツォさんがご一緒でした。

ヴィンチェンツォエンツォは営業面を担当しています。ほかに姉が3人いて、長女は裁断を担当しています。次女と三女が工程管理を。末っ子の僕は使いっ走り。だから、なんでもやらされるんです (笑)。

B.R.肩書きは何になるのですか?

ヴィンチェンツォプロダクトマネージャーとして、生産面全般を統括しています。一番、仕事量が多いんですよ、末っ子なので (笑)。

B.R.(笑)。でもお姉さん方に指示を出すのもヴィンチェンツォさんと伺いました。

ヴィンチェンツォ母は仕事のすべてを私に叩き込みました。一人息子の私に工房を継いでほしいと思ったからだと思います。それをすべて僕なりに現代的に変更してやってみて、やはり母のやり方のほうがよかったと思えば、元のやり方に戻すこともあります。たとえば最新の機械を入れてみて、仕上がりが思っていたようにならなければ使うのを辞めます。一度試して使うのを止めたのは、大型の裁断機です。柄生地を大量に裁断する際、どうしても柄あわせが難しいのです。非効率ですがハサミを使うほうが確実でした。

B.R.柄あわせにはこだわるんですね。

ヴィンチェンツォバンチブックに貼り付けられているカラーバリエーションサンプルが、少しずつ柄ずれしているのが許せないんです。シャツの試作品でも必ず、柄あわせにはこだわりますね。こういうところ、母と同じなんです (笑)。お客さまのなかには、それほど気にされない方もいらっしゃるでしょう。でも業界の方なら、必ず気づかれるところです。シャツ作りに携わったエキスパートが気づくところは、しっかりやっていきたい。それが私の考えです。

今季はメランジ調の素材に注目

B.R.今秋冬のコレクションについて、おすすめの生地や、色柄について教えていただけますか。

ヴィンチェンツォ今シーズンはメランジ調の色合いがオススメです。単色よりもやわらかく、やさしい発色です。それに白よりもオフ白、アイボリーを。チェック柄よりはストライプですね。縞色は明瞭なものより、淡い色縞がいいと思います。素材はレーヨン混やジャージーも。デニムやシャンブレーは特に注目しています。

B.R.日本でもジャージー素材のシャツは注目されていますが、マリア・サンタンジェロでも展開されるんですね。

ヴィンチェンツォジャージーは、ナポリ人には好き嫌いがはっきり出る素材です。そもそもナポリでは、多少タイトでも素材が伸縮するから構わないという考え方が無いんです。着心地の悪いシャツは、馴染みの仕立て屋に持って行って直してもらいます。仕立て屋じゃなくても、町内には昔縫製工場に勤めていたとか、裁縫が得意な人が必ずいるので、フィッティングを調整してくれるんです。

B.R.そうか、ジャージーである必要がないわけですね。

ヴィンチェンツォ私のクロゼットは、ほとんどスミズーラなので伸縮素材を使う必要はありません。でもナポリ以外、とくに日本を含めた海外では誰もが馴染みの仕立て職人がいるわけじゃありません。ナポリがちょっと変わってるんです (笑)。

B.R.もう既に来春夏のコレクションも、少し拝見させていただきました。じつは今春、日本では、シャツブランドが作る極めて軽い着心地のジャケットが注目されたのですが、今後アウターをローンチしたりはしないのですか?

ヴィンチェンツォマーケティング調査は継続しますので、お客様のご要望があれば考えていきたいと思っています。ジャケット風に羽織れるシャツはやったことがないので、これから研究してみます。ジャケットやブルゾンを本格的に手がけるなら、工場を買収することからはじめないといけませんので、オーバーシャツ風のものなら、できるかもしれません。

B.R.新しいチャレンジにも期待しています!

CREDIT

Producer : 大和一彦 / Photographer : 岡田ナツ子 / Editor : 池田保行 (ゼロヨン)

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