BLOG / Kentaro Matsuo

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ベルナール・サンドロンさん

2020.02.13

ベルナール・サンドロンさん
BCILジャポン代表、アークティック ブランズ グループ ジャパン代表

ラグジュアリー業界に長くいて、この方の名前と顔を知らぬ人はいない、ベルナール・サンドロンさんのご登場です。日本人がまだ「ブランドって何だろう?」と首を傾げていた1970年代に訪日され、以来、本場フランスから数々の一流ブランドを日本に紹介されてきました。

 パルファン・クリスチャン・ディオール日本支社長、カルティエ・インターナショナル在日代表、ピエール・バルマン・アジア太平洋地域社長、そしてエス・テー・デュポン日本社長〜本国副社長など、その経歴は綺羅星のごとし。

 90年代にBCILジャポンを設立されてからは、ポアレ、ディンヴァン、ブシュロンなど、数え切れないほどのラグジュアリー・ブランドと日本との橋渡し役をなさってきました。

「私は昔から日本が好きでした。祖父がシルクの輸入業をやっていたので、幼い頃から日本人に慣れ親しんでいたのです。また母は浮世絵が大好きで、よく展覧会へ連れて行ってくれました。その後通い出したソルボンヌ大学では、日本語を習いました。日本語は難しく、最初は300人いた生徒が、3年後の卒業時には、私を含めて27人になっていました(笑)」

 そうサンドロンさんは、極めて流暢な日本語で話してくれました。

「最初に日本に来たのは1969年のことで、バックパッカーでした。初めて入った日本のデパート、タカシマヤでは、マネキンがみんな金髪で青い眼をしていたので驚きました。どうしてもっと日本風にしないのかと思いました。このへんは今でも変わっていないですね・・。そして70年の大阪万博のときに、バイトでフランス人観光客のガイドをしたのです。旗を持って『こちらです〜』とね(笑)。それから在日フランス大使館で広報の仕事に就きました。当時のフランスは、兵役義務があったのですが、大使館に勤めれば、それを免除できたのです」

 しかし本来エリートであったサンドロンさんは、一旦帰国し、名門のパリ国立銀行(現BNPパリバンク)へ就職します。

「これは失敗でした。全然向いておらず、まったく面白くなかった。私がVISAカード云々なんて・・(笑)。一刻も早く、日本へ戻りたいと思っていました」

 そして前出のラグジュアリー・ブランド・ビジネスへ携わることになったのです。40年にわたる祖国への貢献により、2015年には、フランス政府より国家功労勲章“シュヴァリエ”に叙されました。

さて、そんなバックグラウンドをお持ちの方が、どんなスーツを着ているかと思いきや・・「スーツはザラです」と。え、ザラってなんだっけ? そんな名前のテーラー、あったけな?? と焦る私に、

「あのザラですよ。ほら」とタグを見せてくれました。そこには見まごうことなき“ZARA”のロゴマークが。

「実はザラは良いスーツを作っているのです。生地もいいし、サイズも私に合っている。香港などでは、シュール・ムジュール(仏語でオーダーの意味)も作りますが、これは日本のザラで買ったものです」

 これは驚きました。どこかの高級ブランドで誂えたものだとばかり思っていました。やはり洋服は、着る人によって、全く違って見えますね。

 しかし、このスーツが凡百のザラとは、決定的に違うところがひとつあります。それはラペルホール横に縫い付けられた、小さなブルーの刺繍。これは実は勲章の代わりなのです。見る人が見れば「あ、この人はシュヴァリエ(騎士)なのだ」とわかるのです。まさにお金では買えない、最高のアクセサリーです。

シャツは「香港でオーダーしたもの」

タイは「人からプレゼントされたもの。ブランドものではありません。しかし、イタリア製で、クオリティはよい」

 ブランド・ビジネスのプロ中のプロからそう言われると、普段ブランドばかり追いかけている私としては、立つ瀬がありません。

 時計は、ポアレ。カフスは、ディンヴァン。どちらもご自分で手がけられたブランドです。

シューズはパリのRUDY’Sで買ったもの。

「いいデザインのものが置いてありますが、決して高くない。イタリア製だったり、フランス製だったり。現在パリに6店舗あったかな。これはサンジェルマンの店で買いました」

 ファッションのポリシーを伺うと、

「自分に似合う、エレガントなものを選ぶようにしています。色はクラシックなものを中心に、コントラストを効かせます。今日はスーツがグレイだったので、バーガンディのタイを合わせました。あとはカラーの“アジャストメント”が大切。時計がスティール色なので、同じ色のカフスをしています」

 と細かいところまで気を遣われているのがわかります。

「フランスのエレガンスは、イギリスやイタリアとは違います。イタリアはアヴァンギャルド、イギリスはクラシック。私はクラシックが好きで、昔はよくサヴィル・ロウへ洋服を見に行ったものです。フランスは、ちょうどその中間。“クラシック・ウィズ・ツイスト”といったところでしょうか」

 あまりにノーブルな雰囲気をお持ちなので、冗談半分で「サンドロンさんは、貴族の血をひいているのではないですか?」とお聞きしたら、

「はい、私の母方の祖母は貴族の街、ナント出身で、ルイ16世の末裔です」とさらり。いやぁ、ホンモノじゃん・・

そんなサンドロンさんが、いま力を入れているものが、ふたつあります。

 ひとつは、アークティック ブルー ジンというフィンランド産のスピリッツ。普通ジンといえば安酒と相場が決まっていますが、これは手摘みした野生のビル・ベリーを原料とした、ラグジュアリー・ジンです。国際的なコンクールで、2度も金賞に輝いています。

「実はフランス人は、あまりジンを飲みません。シャンパンやワイン、コニャックばかり。ジンはイギリスの飲み物という感じがして、興味がありませんでした。しかしこのジンは違います。自然のベリーの味がして、ものすごく美味しい。アイスキューブを入れると、ほんのりブルーへと色が変わる、不思議な性質も持っています。100%自然の材料から出来ているから、二日酔いにもなりません。日本とフィンランドの文化は似ています。どちらも“シンプリシティ”を大切にする。だからこのジンは、必ずや日本で受け入れられると思っています」

 今のところ、恵比寿ジョエル・ロブションなど、限られたバーやレストランでしか味わうことができませんが、少しずつ販路を広げていくそうなので、見かけたらぜひ味見してみることをおすすめします。

さて、もうひとつは、本の執筆。実はサンドロンさんは、今まで二冊の本を上梓なさっています。

 一冊は、フィリピン、ルバング島に戦後30年間も潜伏し続けた元・日本兵、小野田寛郎の生涯を綴った『Onoda, trente ans seul en guerre(小野田――その孤独な30年戦争)』です。

「これは今、フランスで映画化されており、撮影は終了して、現在編集中です。5月のカンヌ映画祭に、出品する予定なのです」

 うわ〜、もしパルム・ドールを獲ったら、世界的ベストセラー作家の仲間入りですね。

 もう一冊は、日本語で出版された『賢い女性はいつもエレガント』。現在は、その続編、『賢い男性はいつもモテる』(仮題)を執筆なさっています。

「前作は女性向けでしたが、次は男性向けです。レストランでのマナーや洋服の着こなしなど、いろいろなことをテーマにしています。日本の男性は、女性への接し方について、まだまだインプルーヴ(改善)できるところがあると思いますよ。女性を先に座らせたり、クルマのドアを開けてあげたり・・そういったことについて、細かく書いています」

 サンドロンさんは、以前外務省で、新人たちに海外におけるマナーを教えていたこともあったとか。

「出来上がったら、あなたにも一冊お送りしましょう」

 しめしめ、この本さえ読めば、私もフランス流のエレガンスを身につけて、モテモテになってしまうかもしれません!

 

THE RAKE
https://therakejapan.com/

PROFILE

松尾 健太郎

松尾 健太郎

THE RAKE JAPAN 編集長


1965年、東京生まれ。雑誌編集者。 男子専科、ワールドフォトプレスを経て、‘92年、株式会社世界文化社入社。月刊誌メンズ・イーエックス創刊に携わり、以後クラシコ・イタリア、本格靴などのブームを牽引。‘05年同誌編集長に就任し、のべ4年間同職を務めた後、時計ビギン、M.E.特別編集シリーズ、メルセデス マガジン各編集長、新潮社ENGINEクリエイティブ・ディレクターなどを歴任。現在、インターナショナル・ラグジュアリー誌THE RAKE JAPAN 編集長。

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