
2018.08.06
人気ブランドのキーマンから話しを聞くB.R.ONLINEのスペシャルインタビュー。それぞれのブランドの根源にあるもの、クリエイションへの思い、発想の原点に迫ります。
ジャンフランコ・アルトベッリさん
1968年、カサルヌォヴォ生まれ。祖父が開いた工房で働くサルトだった父親から技術を受け継ぎ、いまも生産技術のトップを務めるジャンフランコは誇り高きサルト。Gabo(ガボ)の名称は「両氏の氏名から共通のアルファベットを取り、名付けられたのが由来です」。
ジュゼッペ・ニコーテラさん
1965年、カサルヌォヴォ生まれ。1925年に祖父が開いた工房に母が努めていたため、幼い頃から工房を遊び場に育つ。この日はガボのスーツにマリアサンタンジェロのシャツを合わせ、足元は友人であるドゥーカルスの靴という出で立ち。
お二人はいとこ同士と伺いました。
私たちは子供の頃から祖父の工房が遊び場でしたので、いつも生地と針と糸が遊び道具だったんです。
お生まれはナポリですか?
カサルヌォボです。
ナポリ近郊の仕立て屋の街と知られています。
有名ブランドの工房も多い街ですよね。とても有名です。
私たちの工房でも、高級ブランドのオーダーを請け負っていますよ。どことは申し上げることはできませんが。
ガボのスーツやジャケットを拝見した時に、その技術力の高さを感じました。これは只者ではないな、と。
そう言っていただけるのは光栄です。私たちは伝統的なナポリの技法を大切にしています。同時に、現代人が着るために必要なエッセンスをいかに取り入れるかを常に考えているんです。
とくに生地のチョイスには時間を掛けます。ナポリ仕立てはソフトなコンストラクションがもち味ですので、軽くてやわらかく薄手の素材を使います。そういった生地は縫製に高度な技術を要するのです。
ジュゼッペさんが着ていらっしゃるベージュのコットンジャケットは、マニカカミーチャの様子からみて袖山のいせ込み量がとても多いですね。そういうところにも技術の片鱗が伺えます。
確かにこれは技術的に難しい部分です。ガボのハウススタイルではありませんが、私の好みと個性を演出しています。
こういったところからも私たちの技術がお分かりいただけると思います。私たちのジャケットは芯地も縫製もソフトなので、くしゃくしゃと丸めることができます。皺になりにくい素材選びも重要な要素なんです。
お二人ともサルトなのですか?
私は主に営業を担当していますが、ジャンフランコとは50:50で会社の代表権を持っています。もともとは家族とともに、ハサミと針を使っていたんですよ。
私はサルトでもありますが社長でもあります。
いまも私たちの姉や妹、ファミリーが工房にいます。従業員は55名、日産60着という小規模な工房ですが、クオリティと技術の追求は大手と変わらない情熱をもって取り組んでいます。
ガボの仕立ては最高の着心地と着やすさを兼ね備えています。着心地とは仕立ての技術のことですが、着やすさとはコーディネートのしやすさのことです。現代人は一枚のジャケットを白シャツに合わせることもあれば、タートルニットを合わせることもあるでしょう。それはじつは簡単なことではないのです。
たしかに、スーツのジャケットを単品で着回そうとしても、なんとなくちぐはぐに感じます。共地で仕立ててパンツとならしっくりくるのに。
デニムにもトラウザーズにも、革靴にもスニーカーにも似合うジャケットを仕立てるにはどうすればよいか、常に模索しているんです。
カットソーやニットのようなジャケットと言ったら分かっていただけますでしょうか。合わせる服を選ばないテーラードジャケットというのは、じつはとても技術が要るものなのです。
肩パットや裏地を省いたり、やわらかい芯地を使ったり、各部のフォルムやバランスも緻密な計算をして成り立っています。
日本のバイヤーからは、とても細かい要求があると思いますが?
普段から試行錯誤しているので、具体的にここをこうして欲しいという注文をいただくほうがわかりやすいですね。感覚的なご注文をいただく場合も多いのですが、そういう場合はサルトの誇りに掛けてなんとかしたいと闘志が湧きます。
リクエストがあると、なんとしてもこのお客様を満足させたいと思うのはサルトの血なのでしょう。祖父は「人生は死ぬまで勉強」と言っていましたから、その言葉が私たちの生き方に引き継がれているのだと思います。
細かな注文まで受けてくれるブランドは、日本人もリスペクトを送って応援したくなるんです。日本で成功しているブランドは、ミリ単位の修正ができるところばかりです。
私たちもお客様の期待には120%で応えたいと思っています。同時にナポリの文化であるサルトの技術を、日本の皆さんに楽しんでいただければ何よりうれしいことです。