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SPECIAL INTERVIEWムーレー最高営業責任者が語る ラグジュアリーの本質と日本への思い

2020.01.28

ムーレーは、それまでスポーツウェアだったダウンジャケットを、スーツを着るひとたちに向けたラグジュアリーダウンブランドとして創設されました。ブランドとしての考え方やものづくりの姿勢は非常に柔軟ですが、クオリティに対する姿勢だけは頑なです。そんなムーレーを世界的に広めた、営業部門の最高責任者が来日。B.R.ONLINEでは初めてインタビューする機会を得ました。


ムーレー最高営業責任者・コマーシャルディレクター

ルーチョ・イノチェンティ さん

ムーレーの営業部門最高責任者を務めるルーチョ氏。ギローバーで自身のキャリアをスタートし、靴の名門ストール・マンテラッシ、スーツのファクトリー・ダヴェンツァなどを経て、2010年、同社に招聘されました。

 

若い人から支持されるブランドであることが大切です

B.R.ONLINE編集部 (以下、B.R.)直営店であるB.R.SHOPはムーレーの1stシーズンから取り扱いをスタートしています。

ルーチョ・イノチェンティ (以下、ルーチョ)もちろん知っています (笑)。ムーレーは2005年にスタートしていて、私がムーレーに来たのは2010年ですから、私よりもムーレーのことをよくご存知ですね。

B.R.それまで無かった、ドレススタイルにダウンジャケット合わせるという印象だったと覚えています。もともと、そういうコンセプトではじめたのではなかったかと?

ルーチョブランドを設立したモレノ氏は、母親が経営していたダウンジャケットの製造ファクトリーで、自身がデザイナーとしてムーレーを立ち上げました。「MooRER」とは「MORENO」のアナグラムなのです。スポーツウェアのダウンを手掛けていたファクトリーで、スポーツウェアではないダウンジャケットを、と考えたのです。

B.R.昔は仕事に行くのにスーツにダウンは難しかったけど、いまではすっかりそんな考え方は取り払われました。むしろスーツの上からダウンを着ることが一般化したことで、ムーレーが描いていたスタイルが世界中に広がっていると思われませんか?

ルーチョさすがにオフィスへ行くのに、アウトドアや極地で着るようなダウンジャケットはありえないと思いますが、仕事で着るのにちょうどいいダウンジャケットのスタイルは、モレノ氏が想像していたものに近いと思います。時代の方が追いついてきたのかもしれません。

B.R.日本でもよく知られているイタリアブランドにはナポリのサルトリアーレのようなところが多く、年齢的にもユーザーはミドルやシニアの印象ですが、私たちはムーレーをメゾンブランドと同じ視点で見ているんです。

ルーチョ私たちのカンパニーフィロソフィーは、デザイン的にトゥーマッチではないこと。そして若い人からも支持していただけるラグジュアリーブランドであることです。若い人に支持されないブランドは衰退してしまいますからね。

B.R.アメリカや日本には20~30代のIT系起業家などに若い富裕層が急増しています。ムーレーは、そういう人たちから支持されるブランドだと思うんです。

ルーチョ仰るとおり、イタリアでもラグジュアリーブランドを購入する方々が私たちのユーザーと重なります。でも袖を通せばすぐに、ムーレーのほうが遥かに優れていることがおわかりいただけるでしょう。あちらはクリエイティブディレクターやセールスマンに高い給料を払っていて、宣伝費も高額です。私たちはその金額を製品に投資していますから。

ムーレーはフィアットではなくフェラーリでありたい

B.R.クオリティの高さはユーザーに届いていると思います。ブランドロゴが目立たないはずなのに、圧倒的な存在感があるんです。

ルーチョやはりフィッティングやデザインにはこだわりがあります。メインターゲットは30~35歳のビジネスマン、医師、建築家、士業など、裕福な知的階層ですが、コレクションのうち1割は若い世代をターゲットにした商品を必ず展開しています。そこではフィッティングもデザインも別物としてリリースしているんです。

B.R.ちゃんとマーケットを分割して考えてるんですね。

ルーチョムーレーはモレノ氏が25歳でスタートしました。そしていま彼も40代になり、感覚も着たいものも変わっています。同じ紺ジャケでも、若い人が着たいものと、大人が着たいものが違うように、ダウンジャケットも、そういう違いをきちんと理解したものづくりが必要だと思っています。

B.R.それは国内外のマーケットを研究された結果ですか。

ルーチョ私自身、世界中を商談で飛び回っているので、現地の人をみて研究しています。ただしマネるのではなく、いかにエッセンスを取り入れるかを考えます。ムーレーのフィッティングとクオリティのベストバランスは、世界中のラグジュアリーファッションを着る人のライフスタイルから良いところだけを抽出したもの。B.R.ONLINEのWEBサイトからも学ぶことがたくさんあります。

B.R.エッ、うちのサイトですか?

ルーチョB.R.ONLINEのお客様が好むようなファッションモデルを研究して、ムーレーでも若いモデルを使ったビジュアルを展開しています。ラグジュアリーブランドがコレクションのキャットウォークに若いモデルを歩かせるように、買う人たちの実年齢より断然若い人たちを起用することもB.R.ONLINEから学びました。

B.R.こちらこそ学ぶことが多いのに。

ルーチョメディア展開もこれまでのような広告展開ではなく、フランクフルトやマルペンサ、JFKなど店舗も国際空港を中心に展開しています。

B.R.とてもフレキシブルな姿勢ですね。

ルーチョクオリティだけはフレキシブルではありません。良いものを作るためには、素材も良いものでなければならないからです。ムーレーは安い素材を使って良いものを作るフィアット社のやり方ではなく、最初から良いものを使い大量生産ではない良いものを作るフェラーリ社のやり方なのです。

春夏は日本製のデニムにも注力しています

B.R.2020年春夏のコレクションについて伺わせてください。

ルーチョムーレーはシーズンテーマを設けていません。日本の気候にはそぐわないですが、サマーダウンを打ち出したいとも考えています。コンパクトに折りたたんで持ち歩けるものに注力しているんです。

B.R.夏場に避暑を兼ねて北欧や南半球へ旅する富裕層に刺さるかもしれません。夏に限定せず。オールシーズンダウンとするのがよいかもしれませんが。

ルーチョサマーダウンという名称は、15年ほど前にモンクレールが作り出したカテゴリーで、ヨーロッパでは広く認知されています。モンクレールはダウン専業ブランドからラグジュアリーブランドに成長した先駆者。私たちも参考にしているところが多いです。

B.R.モンクレールは春夏にポロシャツなどの軽衣料が人気ですね。

ルーチョ私たちのサマーコレクションにはデニムがあります。すべて日本のデニムを使っていて、銀座店でも好評をいただいています。日本のデニムは価格は高いけれど品質がとても良いので、デニムコレクションも非常にクオリティの高いものができています。

B.R.個人的にはダウンのライニングを使ったデニムジャケットが気になります。

ルーチョこういった機能的なアイテムは私たちの強みです。コートのライニングにダウンを使ったものは、ライニングとアウターを単独で着られる3WAYで汎用性の高いものです。こういった機能的なウェアは、シーズン問わず力を入れていきたいカテゴリーです。

B.R.ムーレーはミラノのスピガ通りに1号店を、続いて2号店を日本の銀座に開きました。それだけ日本というマーケットを重要視しているということですね。

ルーチョイタリアブランドにとって、日本とドイツは重要なマーケットです。日本人は、トレンドへの反応と、品質を見極める目が非常に高いです。クオリティの高いものは価格が高くても納得して購入してくれます。日本で成功するということは、品質面で世界に通用するということです。

B.R.日本人のことをそのように評価していただけるとは恐縮です。

ルーチョ日本は人も食べ物も素晴らしいです。日本人がイタリアのファッションを好きでいてくれるように、私たちも日本人をリスペクトしています。

CREDIT

Producer : 大和一彦 / Photographer : 小澤達也 / Writer : 池田保行 (ゼロヨン)

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