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SPECIAL INTERVIEWGaboが描く 「サルトリア・コンテンポラーレ」 とは?

2020.01.27

ナポリ近郊にある仕立て屋街、カザルヌオーヴォ。この町の小規模ファクトリーから生まれたガボは、つねにアップデートを怠らないコンテンポラリーなサルトリアブランドです。既に4回目となったシーズンインタビューに臨むガボのお二人に、日本を身近に感じることができる素敵な出来事があったようです。


ジャンフランコ・アルトベッリ さん

1968年、カザルヌオーヴォ生まれ。祖父が開いた工房で働くサルトだった父親から技術を受け継ぎ、いまも生産技術のトップを務めるジャンフランコは誇り高きサルト。Gabo (ガボ) の名称は「両氏の氏名から共通のアルファベットを取り、名付けられたのが由来です」。

ジュゼッペ・ニコーテラ さん

1965年、カザルヌオーヴォ生まれ。1925年に祖父が開いた工房に母が努めていたため、幼い頃から工房を遊び場に育つ。愛称はペッペ。

 

「たかし」と「ふとし」、ガボの2人に日本名がつきました。

B.R.ONLINE編集部 (以下、B.R.)今回の来日、スペシャルなことがあったと聞きました。

ジャンフランコ・アルトベッリ (以下、ジャンフランコ)じつは日本の友人から、日本名をもらいました。僕の名前は「たかし」だそうです。

ジュゼッペ・ニコーテラ (以下、ペッペ)僕の名前は「ふとし」です。

B.R.由来はどこから?

ジャンフランコイメージだそうです (笑)。

ペッペ僕は「ふとし」っぽいですか?

B.R.言われてみると、たしかにそうかも…。

ジャンフランコもともと日本のことは好きですが、名前をもらったことで日本人がとても身近に思えるようになりました。

ペッペ言葉で表現できないんですが、ナポリも東京も故郷のように感じられるし、仕事相手も友人と同じように接することができます。

B.R.そういってもらえると私たちも嬉しいです。ガボがとても身近なブランドに感じます。

B.R.ガボのジャケットは、今日お二人が着ているように、ワイドなラペルがとても個性的ですよね。他のブランドとは明らかに表情が違います。

ペッペラペル幅10cmというのがハウススタイルなので、日本展開のモデルは、とくに要望が無い限り、すべてこのデザインを採用しています。

B.R.B.R.ONLINEでお取り扱いのあるモデル「キアイア」も、ワイドラペルで人気です。ワイドラペルはクラシックなデザインに見えがちだと思うのですが、とてもモダンでコンテンポラリーな印象です。しかもハンドポイントが多くて、とても手が入っていることがわかります。そんなところが、日本のユーザーに伝わって、高く評価されているように思うんです。

ジャンフランコ世界中のマーケットをリサーチして、お客様の意見を取り入れながら試行錯誤して完成させたハウススタイルです。ガボは「サルトリア・コンテンポラーレ」を目指しているんです。

ペッペ「サルトリア・コンテンポラーレ」とは、私たちのメッセージです。ブランドタグを見なくても、袖を通せばガボとわかる。そんなコレクション作りを目指しています。そのうえで表地の色柄にあわせた裏地と芯地選びなど、見えないところも大切にしています。

B.R.たしかに表からではわからないところまで、手仕事が入っていますよね。技術面でのこだわりなのですか?

ジャンフランコ仕立て方は時代とともにブラッシュアップしてきましたし、シーズンに合わせても変化していく部分です。時代にあったスタイルを実現するために必要な技術を考えた結果が、いまの仕立て方になっています。

B.R.時代を読みながら柔軟に対応してきた結果だったんですね。

来季は2人の感性と市場の要望のハイブリッドです。

B.R.では今季のコレクションの傾向について教えて下さい。

ジャンフランコ春夏の生地選びは目付け(※単位面積あたりの生地の重量)を重視して選びました。基本的には従来より軽いもの、具体的には200gを切る軽い生地が中心です。これはマーケットの要望でもあるのですが、一日中着ていても疲れにくい、やわらかな着心地を求める傾向が世界的に強まっています。目付の軽い生地は仕立てが難しいのですが、私たちにはそれを満たすのに十分な技術があります。

B.R.色柄についてはどうでしょうか?

ジャンフランコ特に目につくのは白をはじめ、ナチュラルテイストのオフホワイト、トーンの強くない、落ち着いた色が多く入っています。

B.R.白はたしかにトレンドカラー。世界中が注目していますね。

ジャンフランコガボでは白からエクリュなどベージュ系までのトーンまで、少し幅をもたせています。ベージュはどんな色とも合わせやすく、しかも昼間に着たときにエレガントにみえる色です。夜の印象のネイビーやグレーとは、真逆のイメージです。

B.R.柄についてはいかがですか?

ペッペベースカラーがベージュ系のチェック柄に、ほんの少しだけ格子色を差し色にすることでチェックが際立つ、そんな色柄に注目しています。

B.R.ナチュラル系のトーン・オン・トーンですね。

ジャンフランコほかにはデニム、シャンブレーといったブルー系の生地もおすすめです。

ペッペ目付け180gのウール×シルクのデニム調生地もあります。縫うのがとても難しい生地ですが、私たちの技術力なら何ら問題ありません。

B.R.我々も春夏のバイイングに入れています。以前拝見したときに、とてもいい生地だなと思ったので。世界的にも人気が出るのがわかるセレクトですね。

B.R.生地のセレクトはお二人で相談して決めるのですか?

ジャンフランコ生地メーカーの新作が発表されると、すぐに取り寄せて2人で一緒に選びます。

ペッペまず最初は自分たちの好みや感性で、そのつぎに市場の傾向やお客様の要望に合わせた選択をします。

B.R.近年、化繊を混紡した素材も増えています。ガボではどうですか?

ジャンフランコ市場にはポリウレタンを混紡したストレッチ混素材が増えていますが、個人的には天然素材のナチュラルストレッチ素材のほうが好きです。また、サステナビリティという観点からも100%天然素材をおすすめしたいです。

ペッペ天然素材のほうが肌触りもナチュラルでコンフォートですから長く着たいと思えるはずです。結果的に天然素材のほうがサステナブルなのです。伸縮性を求めるなら、ストレッチよりジャージーのほうがいいのではないでしょうか。

B.R.たしか今季はガボでもジャージージャケットが登場するんですよね?

ペッペ軽さと柔らかさを追求した結果、ジャージージャケットに行き着きました。新たに芯地を使わないアンコン仕立てのモデルも登場しますが、そちらは「~ライト」というモデル名になっています。「キアイア ライト」といったようにね。

ジャンフランコこれまでのモデルは毛芯を使ってきましたが、通常のモデルに薄い芯地を採用した新モデルです。

ペッペ以前から要望はあったのですが、私たちのお客様にはアンコンに不慣れな方も多いので躊躇していました。今回、薄くて軽い芯地の良いものが見つかったので、コレクションに加えることができました。

ジャンフランコ時間を掛けただけあって、自信作が出来ました。秋冬もアンコン仕立てのモデルをリリースする予定です。

B.R.いままでのガボの軽い仕立ては、アンコンとは呼ばないんですね。きちんと毛芯を使いながら、カジュアルに着られる仕立て上がりこそが、ガボの技術力なんですね。

ペッペダブルのジャケットにも、カジュアルに着こなせるモデルがあります。「カプリ」と「パナレア」は共に、前ボタンを開けたままでも、エレガントに見えるよう、裾を小さく作っています。昔のダブルは裾幅が大きいでしょう。小さくすることで、前を開けても開きすぎることがありません。見た目がエレガントなだけでなく、若々しくも見えるんです。

ジャンフランコスーツなのに、ラペルエッジにダブルステッチを入れたり、フラップではなくパッチポケットにしたり、サスペンダーではくパンツを組下にしたり。Tシャツで着ることもできるスーツです。

小規模ファクトリーならではの、揺るぎないフィロソフィー

B.R.日本ではジャケットのインに、ニットやカットソーを着るスタイルが主流になりつつあります。ガボは上襟が高くて柔らかく、首筋への吸い付きがとても良いので、ドレスシャツだけでなくカジュアルな着方にも合わせやすいです。これは、やはり敢えて意識している仕様なのでしょうか?

ペッペ上襟の吸い付きは、肩周りの縫製まで、すべてが連動しています。芯地が硬くては吸い付きませんし、柔らか過ぎても衿立ちが緩んでのぼりが逃げてしまいます。

ジャンフランコ試行錯誤した結果、柔らかい芯地を使いながら、特殊な技術を駆使することで、のぼりのラインを美しくフィットすることができるのです。

ペッペ私たちのスーツは、たとえ古クサいチェック柄の生地を使っても古クサく見えないように仕立てることができます。それこそが私たちの強みといっていいでしょう。

 

B.R.同業者他ブランドではブルゾンやレザージャケットなどを手掛けるブランドもあります。今後、ジャケット、スーツ、コート以外のアイテムを手がける予定はありますか?

ペッペそれについては、やるつもりはないです。自分たちの工場で出来ること以外はやらないでしょう。目の届かないところで作られたものに、ガボの名前を付けることはしません。他では、スーツの組下パンツは、下職に出すところがほとんどですが、ガボでは自社でパンツも仕立てています。

ジャンフランコもしやるとしたらコートのバリエーションを増やすぐらいでしょうか。それでもテーラード型のコートに限られます。トータルブランドになりたいとか、トータルルックを提案したいという考え方はありません。それは創業者である祖父の代から変わりません。

ペッペ現実的に、手がまわらないというのも本音です。私たちの工房は全部で60人ぐらいしかいませんし、そのほとんどが近親者で、日産も60着ぐらいです。グランメゾンとは比べ物にならないぐらい小規模なんです。

B.R.人気になって規模を拡大したことで大量生産になり、魅力が半減してしまったブランドをいくつも知っています。小規模ならではの、手仕事のぬくもりとこだわりから生まれる魅力はナポリ服ならでは。もっと人気が出てほしいけど、大きくなり過ぎてはほしくないというジレンマもあります。

ジャンフランコ私たちには決して揺るがないフィロソフィーがあります。

ペッペそれに私たちは日本人の気持ちがよくわかります。何しろ、日本名をもっているのですから!

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