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SPECIAL INTERVIEWアート×ファッションを融合する
キンロックが 「旅」 を描き続ける理由

2019.12.09

スカーフやタイなど、美しいシルクプリントで知られる「キンロック」は、まだ若いファッションブランドです。「旅」をテーマに、毎シーズン色鮮やかに展開する、プリント柄の数々は、ブランドのオーナーでありCEOのダビデ・モンジェッリさんの長年の思いを実現したものでした。


キンロック CEO

ダビデ・モンジェッリ さん

ミラノ生まれ、ミラノ育ちの生粋のミラネーゼ。投資銀行から独立後、飲食など様々な業種を手掛けてきた。2013年に、イラストレーターの青年と出会い、それまで温めてきた「アートとファッション」を形にすることを決意。スカーフなどシルクスクリーンに特化したファッションブランド「キンロック」をスタートさせた。現在はプリントパターンに様々なアーティストを起用。様々な配色を可能にする独特のプリントスカーフは、シルクプリントの聖地として知られる北イタリア・コモ出身で、代々シルクスクリーンを手掛けてきた、ビジネスパートナーでもあるフランチェスコさんの工場が手掛けている。



アートをファッションに取り入れるためのスカーフ

B.R.ONLINE編集部 (以下、BR)美しいシルクスクリーンとユニークなモチーフで人気のキンロックは、まだブランドとしては若いですよね。スタートは2013年ですね。

ダビデ・モンジェッリ (以下、ダビデ)イタリアの工芸品とアートやグラフィックを融合させたら、どうなるだろうという構想は以前からあったんです。キャンバスや紙の上でしか存在しえない絵画も、生地の上にあれば身につけることができます。しかし服との融合は現実的ではない。スカーフなら多くの人に届くのではないかと考えましたが、お土産的なものにはしたくなかったんです。

BRアートを身につけたかった、と。

ダビデその通りです。芸術を一日中身につけたいという思いからスタートしました。

BRオフィスはミラノのカドルナ地区とか。たしか、近くにダヴィンチの絵画「最後の晩餐」が飾られている、サンタ マリア デッレ グラッツェ教会がありますよね。ダビデさんご自身、芸術や手工芸品に携わるお仕事をされていたのですか?

ダビデいいえ、そういう仕事はしたことはありません。私は長いこと投資銀行で、ファイナンスに関わる仕事をしていました。ただ、ミラノ生まれのミラノ育ちという生粋のミラネーゼですので、古典的なダヴィンチから最新の現代アートまで、つねに芸術と伝統的な手工芸品が身近な存在でした。私もどこかで憧れていたのだと思います。

BRなんと、お堅い業種ですね! 若い頃、画家を志したとか、そういうこともなかったんですか。

ダビデ絵が描けたら、また違った幸せな人生があったでしょうね。残念ながら、私に芸術の才能はなかったので、才能ある人と共に仕事をしたいとは思っていました。芸術と職人技、そして国際的なビジネスを融合できるのは、ミラネーゼならではの感性だと思います。

コレクションのテーマは、つねに「旅」

BR毎シーズン、ユニークなデザインのスカーフを多彩にリリースされています。このデザインインスピレーションはどこからくるのでしょう?

ダビデ基本的なコンセプトは「旅」です。この秋冬はベネチアをテーマにしたコレクションを展開してきましたが、来春はナポリがテーマになっています。

BRイタリア国内の都市が続いていますが?

ダビデたまたまイタリアが続きましたが、先シーズンはメキシコでした。以前はキューバやロシアをテーマにしていたこともあります。ブランドロゴを見ていただくとわかると思うのですが、本のイラストを採用しています。これは、ガイドブックをパラパラとめくって、たまたま指を差し込んだところへ旅するイメージです。きっちりスケジュールを立てて行く旅も、目的を決めず出かける旅も、どちらも素敵だと思います。

BRヨーロッパの老舗ブランドやラグジュアリーメゾンには、「旅」がキーワードとなるブランドが多いように感じます。「旅」に対する思いが強いのでしょうか。

ダビデヨーロッパの人は旅が大好きです。それぞれ国土が小さいので閉塞感を感じるのでしょうか、国外へ行きたがる人は多いように思います。それに歴史を省みれば、いろいろな国が侵略したりされたりしていますので、人種が様々に入り混じっているという文化もある。自分たちのルーツへ帰りたい、自分のオリジナルを知りたいという人もいるのではないでしょうか。

スカーフやネクタイで旅の思い出を取り入れる

BR旅先で、いろいろなファッションを楽しみたいから、“旅”をコンセプトにもつラグジュアリーブランドが多いのかと思っていました。旅の移動時はもちろん、滞在先がリゾートなのか仕事なのかによっても変わりますが、たくさんの服を持っていかれますよね。

ダビデそれは面白い解釈ですね(笑)。日本人は旅先に、あまり服を持っていかないのですか?

BRそうですね、荷物を軽くしたいという理由から、できるだけ服を持っていかないというのが日本人の旅支度のように思います。とはいえ、滞在先で必要があればスーツやジャケットを持っていきますが。

ダビデヨーロッパの富裕層は、リゾートでもビジネスでも、現地に別荘を持っていたりするので、現地にも自分の服がたくさんあるんです。ときどき入れ替えたりもしますが、基本的に荷物は多くはないのではないでしょうか。バカンスなどで長期滞在する場合は、自宅と同じように過ごしたいので、自宅クロゼットと同じぐらいの服を持っていくひともいるようです。

BR日本人の旅行感とはスケールが違うんですね。旅の捉え方がそもそも違う。

ダビデ私は、旅に出るために服を用意するのではなく、旅から帰ってきたときに自分が心身共にリラックスできていること、新しい情報や考え方を持って帰ってくることが重要だと思います。だから服は旅に行く前ではなく、旅先もしくは帰ってきてから新調すべきです。上から下まで揃える必要はありませんが、旅の記憶や思い出を服装に反映したり、スカーフなどの小物で表現するのも、旅とファッションの関係性としては良いのではないでしょうか。

BRイタリアで明るい色柄の取り入れ方を学んだり、アフリカでエスニックな色柄使いを取り入れたりというのは楽しそうです。だからナポリのスカーフにはパスタの柄が描かれれているんですね。

ダビデパスタ柄ですが、ユーモアとペーソス、アイロニーを込めています。子供っぽくないし、ジョークでもありません。毎日どんなシーンでも身に付けられるパスタ柄です。以前リリースしたキューバ柄のスカーフは、春先、少し風があたたかくなってきた頃に使っていただければとも思います。

BRスカーフで、気持ちが表現するというのは楽しそうですね。

ダビデ単純に柄が面白いと選んでもらってもよいのですが、そこに込めた思いはとても深いものがあります。柄とともに色出しにはとても気を使いますし、1枚のスカーフのシルクスクリーンを200回やり直すこともあるんです。日本のお客様は、そういった点を含めてキンロックを評価頂けていることにはとても感謝しています。Instagram(@kinlochdesign)にもメッセージを頂いています。

クリエイティブな仕事は私の理想の生き方です

BRブランド設立から6年たち、だいぶ名前が知られてきました。

ダビデまだまだビジネスとしての規模は小さいですが、クリエイティビティとしてはとても面白い世界です。プリントはコモで、1点ずつ手作業で行っています。効率はよくありませんが、世界で一番美しいシルクプリントを作っているという自負があります。

BR元金融マンから見たら、不思議な世界ではありませんか?

ダビデ金融の仕事は数字しか見ない、とても退屈です。ファッションの仕事はとても広くて深い世界です。自分のやりたいことも試せるし、失敗してもまた次がある。クリエイティブな仕事は何物にも替えがたい喜びがあります。私にとっての理想的な生き方なんです。

CREDIT

Producer : 大和一彦 / Photographer : 岡田ナツ子 / Writer : 池田保行 (ゼロヨン)

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