
2019.05.15
人気ブランドのキーマンから話しを聞くB.R.ONLINEのスペシャルインタビュー。それぞれのブランドの根源にあるもの、クリエイションへの思い、発想の原点に迫ります。
スウェーデン発のスニーカーブランドとして、いま話題のC.QP。クリエイティブディレクター兼CEOのアダム・レーヴェンハウプト氏が初来日を果たしました。元々、ファッションやデザイン業界ではなく、金融業界出身の起業家として、海外メディアからも注目されている彼が描く、C.QPのブランドコンセプトやファッション観など、日本のメディアとして初めてのインタビュー記事です。
アダム・レーヴェンハウプト さん
スウェーデン生まれの38歳。ストックホルム商科大学卒業後、ドイツ銀行、ゴールドマン・サックスなど金融畑で14年を過ごしながら、「一生の仕事じゃない」と独立。2013年に自身のスニーカーブランドC.QPを立ち上げました。現在、若き起業家として海外メディアからも注目されています。
アダムさんが若い頃、好きだったスニーカーとかってありますか?
スケートボードシューズや、バスケットボール、テニスシューズなんかが好きでした。エアジョーダンなら6ですね。なかでもアディダスのロッドレーバーは、私にとって最高峰です。1970年、私が生まれる前に誕生したモデルです。
スタンスミスのデザインベースになったと言われるモデルですね。
ベーシックスニーカーの外見に、ハイテクスニーカーの履き心地は、まさにいまのC.QPと同じコンセプトですね。
アダムさんは、いま海外のメディアからも注目されている起業家です。
金融業界からスニーカーブランドのファウンダーって珍しいのかも知れません。
順風満帆な金融エリート人生から、ファッションの世界になぜ転身されたのですか?
若い頃からファッションが好きだったということもありますが、実態の見えない金融経済に身を挺するより、モノづくりがしたかったというのが大きいかもしれません。
では、なぜスニーカーブランドを始めたのですか?
スニーカーに辿り着いた理由はひとつではありません。いわゆるファッションマニアではありませんでしたが、普段はスーツでオフィスに勤め、あるときはスマートカジュアルで出勤することもありながら、休日はスケートボードをするような服装もこなす、そんな都市生活者のためのスニーカーは探してみると意外と選択肢がないんです。それなら、自分でも履きたいと思えるようなスニーカーを作ろうと。
ジャケットやシャツ、パンツ、カットソーなどでもよかった?
そうですね。ただ世代を超えて愛されるモノ、若い人から大人まで身につけられるアイテムを目指していたので単なる「大人のクラシック」にしたいとは思わなかったです。モノづくりを検討していく中で、スニーカーデザインが得意なチームと、優秀なスニーカーファクトリーに出会ったことも大きいです。彼らを結びつけたら、私が思い描くスニーカーが作れるはず、とすぐに閃きました。
確かにC.QPのようなシンプルで大人が履けるスニーカーって、今なかなか無いんですよね。
スケードボードブランドのスニーカーは、大人が選ぶのに抵抗あるし、かといって流行のブランドシューズは、どれもボリューミーなダッド系。オンもオフもクラシックベースの大人の服装には取り入れずらいものがあります。
そこへC.QPはブランド創業時から変わらず、大人のベーシックスニーカーを作り続けている。
スウェーデン人は、最先端の流行にはあまり関心がなく、ベーシックでシンプルなものが好きなんです。私自身も、いくらいいものでもダッド系のスニーカーは履けないですから (笑)。
北欧デザインのシンプルでモダンな感性に、最先端のモードはハマらなそうですもんね。
でも、新しもの好きでもあるんですよ。日本人と感覚が近いように思うんですが、プロダクトのルーツがどこにあるかを重視する傾向があると思います。いつ、どこで、誰が作ったものなのか。そして、どこにこだわっているのかを知った上で、ますますそのモノが好きになる。ストリートファッションなら、その源流がどこにあるのか、デザイナーズモードならシーズンコンセプトが知りたいとか。だからスニーカーひとつとっても、誰がどこでデザインして、どこの工場で作っているのか、機能的にはどうなのかをきちんと説明したいんです。
デザインはストックホルム、素材はイタリア、工場はポルトガルと伺っています。
私たちのヘッドオフィスはストックホルムにありますが、イタリアをはじめ世界中から上質素材を取り入れています。工場はポルトガルで、数々のラグジュアリーブランドのスニーカーを手がけているところです。
デザインはどこか懐かしいベーシック系ですね。
ヴィンテージスニーカーをベースにしています。かといってオールドスクールになり過ぎない、スマートさも必要なので、トゥの形状や甲の流線型、トップラインの高さにもこだわっています。
最初に誕生したのは「ターマック」(編集部注:レースアップタイプのスニーカー)ですね。
ブランド設立当初から、いまも継続しているモデルです。
少しトップラインが高いですよね?
ローカットとミッドカットの中間にしています。スタンスミスとチャッカブーツの中間的なモデルです。他にはない、C.QPだけのモデルとして思い入れのあるモデルです。
今回、B.R.SHOPでは、オールブラックスエードとホワイトソールを別注しました。
カラーバリエーションは、大人がデニムにも、グレイフランネルのパンツにも合わせられるラインナップとなっていますが、お客様からの要望を聞くことも大切だと思っています。アッパーのデザインについても、細部の変更を求められることがあり、私個人の意思としては似たようなデザインを作るつもりはないのですが、今後は検討していきたいとも思っています。
ありそうで無い、どこにもないスニーカーを作っていきたいという思いが伝わってきます。
大人のエレガンスに根ざした上品なスニーカーであることと、長く履けるデザインであることは重要です。サステナブル(継続可能性)であることは今、ファッション業界のみならず世界中の企業の共通言語ですから。
年令を問わず長く履ける、そういう意味でもクラシックなスニーカーです。
若い頃は履いていたのに、大人になって遠ざかってしまった方にも履いていただける、そんなスニーカーを、これからも目指していきたいと思っています。
Producer : 大和一彦 / Photographer : 岡田ナツ子 / Editor : 池田保行 (ゼロヨン)