2018.10.15
この秋、B.R.MALLに新たなセレクトショップが出店します。その店の名は「アルト・エ・デリット」。名古屋の名店としてその名を知られ、全国にファンをもつ「ゾディアック」が店名を変更して、次なるフェイズがスタートしました。
アルト・エ・デリット 代表取締役
高柳 忍
名古屋市生まれ。高校卒業後、一旦は整備士の専門学校へ進むも、幼い頃からの洋服好きが高じて大手アパレルに勤務。2年後には自分で店を開きたい思いから、長距離トラックの運転手などで資金を貯め26歳のとき名古屋市郊外の蟹江町に自身のショップを開く。その後、大須に移転、3年前には現在の東区泉に移転。ここは元、高柳さん自身も通ったセレクトショップがあった場所だ。
アルト・エ・デリット バイヤー兼ウェブマネージャー
伊藤 真也
岐阜市生まれ。名古屋市大須の飲食店に勤めていた頃、同じビルにあった「ゾディアック」の常連として通ううち転職。バイヤーとしての頭角を著し、高柳さんの片腕として辣腕を振るう。無類のレザージャケット&ブーツ好きとして知られ、今もレザージャケットは年に4~5着購入する。自宅にも豊富なアーカイブを所有しているという。
栄の喧騒を抜け出して、久屋大通を北へ。セントラルブリッジを渡る頃、右手の通りにセレクトショップ「アルト・エ・デリット」がみえてきます。17年前、「ただ洋服が好き」というひたむきな想いだけで開いたこの店は、いま名古屋のリッチな大人たちと、全国からそのスタイリングに共鳴するひとたちから絶大な支持を得ているのです。
「最初は郊外のストリート系のカジュアルショップでした。大須に店を移してからは、名古屋にすげーかっこいい店があるって話題になったみたいです。僕が若い頃に通ったセレクトショップのオーナーが覗きに来てくれたときは、本当にうれしかったです。バイトに応募したら、落とされた店なんですけど(笑)」
そう話すのは、この店を立ち上げ、現在の有名店に育て上げたオーナーの高柳さんです。数年前にインコテックスのグレスラを店におき、レザージャケットをあわせるという、この店独自のスタイリングを確立しました。当時の名古屋、いや日本国内でインコテックスのスラックスは紺ジャケとあわせるのが一般的で、レザージャケットと合わせるアメカジミックスのスタイリングは珍しかったのですが、シンプルにレザージャケットを大人っぽくスタイリングしたことで、ちょうどインターネット通販をはじめていたこともあり同店は一気にその名を知られることになります。
「セレクトアイテムの色は白、黒、紺、グレーばかりで、素材には最高級のものを厳選しています。スタイルはベーシックなグレスラにTシャツ、ニット、レザー、ときにはジャケットを合わせる。その組み合わせが、店の中のどのアイテムを選んでも成立するんです。一見、シンプルだし普通だけどカッコいい。ぼく自身、普通が一番カッコいいと思っているので、最高級のスタンダードを揃えました。取り扱うブランドは変わっても、このコンセプトは店を始めた頃から変わっていません」。
バイヤーの伊藤さんは、大須に店があった頃の常連さんでした。当時の職業はバーテンでしたが、高柳さんのセレクトに惚れ込んで、アパレル業界に飛び込みます。
「もともとマニアックなほどレザージャケットが好きだったんです。長く着て自分だけの味が出るのも好きなところだし、いまは接客しながらですが、ひとに似合うレザーを選んであげるのも好き。ひとが何年も着込んだレザーを肴に話をするのも大好きなんです。アメリカ、イタリア、ヴィンテージまで、とにかくレザーが大好きなんです」。
今も店にはエンメティ、バンソン、チンクァンタなど、バラエティ豊かなレザーブランドが並んでいます。そんななか、伊藤さんが奥から持ってきたレザージャケットが目を引きます。
「ジョルジュ・ド・パトリシアのレザーは、パリの女性デザイナーが手がけています。レザーのコレクターだった彼女のおじいさん亡き後、そのアーカイブと意志を継いでブランドを立ち上げました。スーパーソフトシープのエクスクルーシブレザーを使ったシングルライダーズは、スナップボタンやファスナースライダー、背中のブランドロゴプレートに925シルバーを採用しています。お値段は120万円ですが、着てみればその価格も納得できるでしょう。しっかりしているのにその軽さが際立っていることに気づくはずです。裏地はシルクなのでテーラードジャケットのように衣擦れが良く、コットンライナーが多いレザージャケットとは着心地が違います。それにフロントジップがまっすぐで波打っていないのは、技術の高さが伺え知れるところです。着ているときにレザーが鳴かないのも特徴です。着たままクルマのレザーシートに座ったとき、キュキュッと鳴らないところがポイントなんです。ジャケットのモデル名はカレラといいますが、実際に予約購入されたお客様のなかにお二人、ポルシェ・カレラのオーナー様がいらっしゃいます」
同じブランドのレザージャケットを着用した高柳さんのモデルは、さらに上級で、レザーはシュランケンディアスキン。パリの某高級メゾンでも使われているクラスのもので、カラーのボタンにはパヴェダイヤが埋め込まれています。
「最高級のレザーとパーツを使えるこのブランドは、まだ国内では希少です。オーダーサンプルにはポロサスクロコダイルもあって、いつかはフルクロコのライダーズをオーダーしてみたい。そのときはメタルパーツはホワイトゴールドでいきたいですね」。
店内にはレザージャケットの他、クラシックなスーツやシャツ、カシミヤのニットなども並んでいますが、圧巻はエンツォボナフェのコレクションです。すべてこの店だけの別注モデルで、チャッカブーツやジョッパータイプなど、ほかでは見られないラインナップは、すべてに高柳さんと伊藤さんのこだわりが詰まっていました。
最高にラグジュアリーな逸品を扱う名古屋の名店アルト・エ・デリットが、この秋からB.R.MALLに出店することが決まりました。それまで高柳さんが「うちで扱っている商品をネットで検索すると、必ずぼくたちの上にB.R.ONLINEがあった」というように、共鳴するアイデンティティをもつ者同士が意気投合したことをきっかけに、次なるステージへと登壇することになったのです。
「本当に良いものだけを置いてきました。アイテムはどれも高額ですが、それだけの価値あるものしか置いていません。この想いを感じ取ってくれたお客様に支えられてきたからこそ今があります。そして次はB.R.MALLでぼくたちのセレクトを知ってほしいですね。B.R.ONLINEともコラボやなにかあたらしい仕掛けができたらとも思っています」。
Producer : 大和一彦 / Photographer : 鈴木泰之 / Writer : 池田保行 (ゼロヨン) / Editor : 森大樹 (B.R.ONLINE)