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SPECIAL INTERVIEW THE ROOTAGE Vol.19De Petrillo ベネデット・デ・ペトリロ氏インタビュー 進化する情熱のコレクション

2018.07.19

人気ブランドのキーマンから話しを聞くB.R.ONLINEのスペシャルインタビュー。それぞれのブランドの根源にあるもの、クリエイションへの思い、発想の原点に迫ります。

半年に一度の恒例企画はデ・ペトリロのオーナー、ベニーことベネディット・デ・ペトリロさんへのインタビュー。毎シーズン自ら来日し、シーズンテーマを熱く説明する姿は各セレクトショップバイヤーにもお馴染みの姿です。今回はコレクションに掛ける熱き想いを思う存分語っていただきました。そこにはナポリ男のファッションへの情熱と本音がありました。

デ・ペトリロ オーナー

ベネディット・デ・ペトリロさん

1959年ナポリ生まれ。1980年代初め、義父の経営する縫製工場で経験を積み、1987年、アパレルメーカーを設立。90年代には、アントニオ・ラ・ピニョッラ(元キートンのモデリスト、アントニオ・ピニョッラ氏が手がけたクラシックブランド)に取り組み、サルトの技術や表現を学ぶ。2009 年、デザインから生産、販売までを一貫するデ・ヴィ・インダストリア社をナポリ郊外の町、フラッタマッジョーレに創立。自身の名を冠したデ・ペトリロをスタートさせた。


2日と同じ服を着ることはありません。

B.R.ONLINE編集部 (以下 編集部)今回の来日、東京は何日ぐらいいらっしゃるんでしょう?

ベネディット・デ・ペトリロ (以下 ベニー)1週間です。

編集部一週間の出張に、どれぐらいの服を持ってくるのですか?

ベニー毎日のコーディネートを変えるので、日数分持ってきています。この日は商談、この日は食事会といったふうに、スケジュールに合わせて決めてあるんです。とはいえ、その日の朝ホテルで目覚めたときの気分で入れ替えることもありますが、同じ服を二回着ることはありません。ジャケットもパンツも5着、靴もコーディネートに合わせて5足ですね。シャツは気分によって変更することもありますので、ちょっと多めに持ってきています。

編集部シーズンごとにお会いしていますが、毎回着こなしが変化に富んでいて素敵です。

ベニー服はシーンに合わせて着替えます。今日はインタビュー取材ということで、エレガントにまとめてきました。

編集部ダブルのスーツにリネンのシャツ、タイもブラウン系ですね。

ベニー今日の色使いは来春夏のトレンドカラーです。私はつねに1シーズン先のトレンドを自分のテイストにあわせてドレスアップしているんです。

編集部一歩先を行ってるんですね。

ベニー2019年の春夏はブラウンやベージュをベースに、赤やオレンジ、黄色をミックスするのが気分です。ピッティでも、そういった色が多かったですよ。

編集部お店では、これから秋冬ものが並ぶ時期ですが、ベニーさんの頭のなかはもう来年の春夏のことでいっぱいでしょう。

ベニー日本人もつねに新しいもの、次に来そうなものを探していますよね。同じものを着続けるのではなく、つねに新しいものを着たい。スタイルすら変えたいという人が、諸外国に比べて多いように思います。私たちも毎年新しいものを提案していますが、色柄や素材をオリジナルで作り出すには時間がかかります。それでもデ・ペトリロというブランドのスタイルはキープしていかなくてはなりません。だからこそファンであるお客様には、つねにメッセージを送り、コミュニケーションしていくことが必要だと思っています。B.R.ONLINEを通じてコミュニケーションを図ることはとても重要なことだと思っているんです。


すべてのコミュニケーションが大切な仕事。

編集部ベニーさんはFacebookやInstagramなどのSNSも使われています。そちらでも素敵なコミュニケーションをされていますね。

ベニーSNSは私からも発信していますが、主にアンドレアといううちのスタッフが運営しています。彼はミラノのラグジュアリーブランドを経て、クラシックの世界へ入り、今では息子のファブリツィオと共に良好なチームをつくっています。本当の息子のようで家族のような存在です。Webサイトで流れている動画は、ロンドンでバンドをやっている次男が工場の音をサンプリングして音楽を手がけているんです。

編集部家族経営はイタリアのサルトリアーレならではの文化ですね。

ベニー多くの友達がデ・ペトリロの服を着てメディアに登場してくれます。先日B.R.ONLINEに登場していたPT01のディレクター、ドメニコ・ジャンフラーテが着ていたジャケットもデ・ペトリロです。( そのインタビューはこちらから。インタビュー内で着ているグリーンのジャケットがデ・ペトリロです。)
「いま日本でインタビューされているよ」と、スタジオから写真を送ってきましたよ。世界的なファッションスナップの常連、アレッサンドロ・スクァルツィには先日のピッティ用にアイリッシュリネンのスーツを仕立てました。

編集部そうやってお洒落な人がデ・ペトリロを着ているからこそ、日本でもますます人気が上がっているんですね。


たった一人のためのコレクションを作りたい。

編集部来年の話しも気になりますが、このインタビューが掲載される頃、ショップには今秋冬のコレクションが入荷する予定です。読者の方へデ・ペトリロの新作をご紹介していただけますか?

ベニー2018秋冬シーズンはブリティッシュテイストがトレンドです。柄は英国調のチェック柄。色はブラック、グレー、ベージュをベースに、ブラウン、レッド、グリーンとブルーなど強い色を組み合わせるのが気分です。生地のタッチなども、意識して英国っぽいものを選んでいます。

編集部シェットランドウールやフランネルも散見されますね。チェック柄は、大柄のものが多いようですね。アイテムとしてはどうでしょうか?

ベニーコートは近年、クラシックでもカジュアルでもトレンドアイテムです。オーバーサイズに見えるコートが人気ですね。

編集部以前からデ・ペトリロのコートには定評がありますが、今季も素晴らしいラインナップです。こういったコレクションの準備は、どのくらい前から始めるのですか。

ベニー現時点で頭の中はすでに2019年の秋冬について考えています。7月には生地のセレクトを終え、その後、エクスクルーシブ生地も発注していきます。私がテキスタイルデザイナーと一緒に色の傾向など決めて、直接メーカーでオーダーするんです。

編集部半年に一度、ベニーさんとお会いしますが、そのたびにベニーさん自らコレクションのプレゼンテーションをしてくれますよね。いつもひとつずつ大事そうに見せてくれるのが印象的です。なかでも他社に比べて生地のプレゼンテーションに思い入れがあるように見えるのですが...

ベニー生地作りは、とくに身を削っているポイントです。他では、ポイポイとテーブルに投げるように説明するところもあるようですが、私にはできません。毎回コレクション作りには、苦労や思い出が伴っていますから。

編集部1点、1点全てのコレクションに思いが詰まっている訳ですね。

ベニーどの色柄生地にも思いを込めていますが、すべてが支持されないことはあります。それは仕方のないことです。私のパッションなんて傍から見れば小さなものですが、私のなかではとても大きいということが分かってもらえれば幸せです。誰も買い付けなくても、たった一人でも理解してくれる人がいるかぎり、私は服を作り続けたい。世界中のどこかに、私の仕事を理解してくれる人がいることが、デ・ペトリロを支えているからです。


バイヤーの向こうにいる人のために。

編集部プレゼンテーションでは、毎回オススメの生地を提案してくれます。いじわるな質問ですが、あれはベニーさんが個人的にオススメしてくれているのか、それとも売らないと会社として売上に影響するからとか、理由があるのですか?(笑)

ベニー私は自分のブランドを立ち上げるまで、長くセールスの仕事をしていましたから数字の感覚は鋭いほうだと思います。でも今、自分のコレクションをセールスする際には、お客様のお店の規模や顧客の指向をベースにしています。たとえば若い顧客をお持ちのショップにはモノトーン系のコレクションを、40代の富裕層が多いショップにはベージュに赤いチェック柄のジャケットもお似合いだと思います。更に年齢層が上のショップなら、よりファンシーなチェック柄も気に入っていただけるでしょう。

編集部なるほど、バイヤーとショップに合わせてオススメの生地を変えているんですね。

ベニーバイヤーの向こうにいるお客様のスタイルを想像しているんです。B.R.ONLINEやB.R.SHOPのお客様なら土曜日に友達とでかけるときにネイビーに太い白ストライプのジャケットも似合うのではないか。ランチに行くときはレンガ色のジャケットを、ノータイで白シャツとジーンズ、スニーカーとあわせて着てほしいですね。リッチで若々しい方が多いと思いますので、ソラーロのジャケットも似合いそうです。ジーンズと相性がよく、デニムのシャツでも着こなせます。


男の数だけスタイルはあっていい。

編集部ベニーさんが着る人のことまで考えていることはよくわかりました。また、買い付けの際にいろんなモデルやディテールが選べますよね。芯あり、芯なし、ドロップ寸の調整、ラペル幅の変更など、いろんな箇所がチョイスできるブランドって、あんまり多くないと思うんです。デ・ペトリロはひとつずつ確実に応えてくれます。それって、けっこう大変なことではないですか?

ベニーすべての要求に答えるのは大変ですが、お客様に満足してほしいと思えば、できるだけのことはお受けします。以前はシルエットもスリム一辺倒でしたが、最近はモデルのバリエーションを増やすことで、スムーズに対応できるように進化させてきたつもりです。

編集部たしかに毎シーズン、オーダーがスムーズになってきました。さて、今季はメタルボタンのブレザーも登場していますね。日本では90年代に流行ったアイテムなので、リバイバルとも言われていますが、ベニーさんはどういった流れからメタルボタンに注目されたのですか?

ベニー個人的に以前からブレザーが好きで、とくにダブルが基本だと思っています。メタルボタンは、ブレザーのアイコンとして外せないエレメントです。ジェントルマンズクラブのユニフォーム的なものですから。紺ブレに白パンのコーディネートは、ナポリの男たちのティピカルなスタイルですよ。

編集部なるほど、そうだったんですね。ちなみにベニーさんは、夏から秋のブレザーをどのように着ますか?

ベニーそうですね、海の近くで食事をするなら、白パンに白シャツか白ポロシャツでしょうか。海の色、波の飛沫を意識してカラーリングしたいですね。フォーマルな集まりやパーティなら、タスマニアンウールのライトグレーのパンツを合わせて、白シャツとレジメンタルのタイといった風です。

編集部ビジネススタイルではどうでしょう?

ベニー仕事にいくとき、メタルボタンの紺ブレは着ません。ブレザーは休日に着る服ですから。

編集部もしかしてメタルボタンのブレザーを仕事で、着るのは日本人ぐらいですか?

ベニーアメリカ人もブレザーを仕事着に着るように思います。でも紺色のブレザーは男にとってマストなアイテム。クロゼットに1枚は、つねに置いておかなくてはなりません。それが遊びだろうと仕事だろうと、スタイルは個人的なものですので、男の数だけスタイルがあっていいのではないでしょうか。


ブランド設立10周年に向けて

ベニー来年、デ・ペトリロはブランド設立から10周年を迎えます。私も60歳になるんです。これを記念して新しいことを企画しています。

編集部興味深いですね。少しだけでもその内容を教えてもらえませんか?

ベニー少しだけですよ(笑)。まずは、より洗練されたイメージにブランドタグのデザインを変えます。そしてサルトリアナポレターノの良さを伝えながら、インターナショナルな感性も持たせた新しいモデルを投入します。主張は抑えながらエレガントで、しっかりと個性も備えています。着心地までも含めてクオリティの高いものが出来るという自信をもってお届けしますよ。

編集部プライス的にはどうなのでしょうか?

ベニー私が世に送り出すコレクションは、幅広い層の方に着ていただきたいと思っています。他社は広告や宣伝にお金をかけて販売することもありますが、私はグッドプライスにこだわるために無駄なコストは掛けません。その分、必ず満足いくものを提供することをお約束します。

編集部私たちも毎年クオリティが上がっているのを実感しています。今後もデ・ペトリロに期待しています !


CREDIT
Photographer : 鈴木泰之 / Writer : 池田保行 (ゼロヨン)
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