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SPECIAL INTERVIEW THE ROOTAGE Vol.17De Petrillo ベネデット・デ・ペトリロ氏に聞く なぜナポリの男はお洒落をするのか

2017.12.27

人気ブランドのキーマンから話しを聞くB.R.ONLINEのスペシャルインタビュー。それぞれのブランドの根源にあるもの、クリエイションへの思い、発想の原点に迫ります。

シーズン毎、来日するデ・ペトリロのオーナー、ベニーことベネディット・デ・ペトリロさんにナポリ人が、どのように流行やトレンドを取り入れているのかを伺いました。日本人は毎シーズン、トレンドや流行に左右されがちです。ナポリの人たちも、ファッション誌やSNSをチェックしたり、足繁くショップに足を運んでいるのでしょうか?

デ・ペトリロ オーナー

ベネディット・デ・ペトリロさん

1959年ナポリ生まれ。1980年代初め、義父の経営する縫製工場で経験を積み、1987年、アパレルメーカーを設立。90年代には、アントニオ・ラ・ピニョッラ(元キートンのモデリスト、アントニオ・ピニョッラ氏が手がけたクラシックブランド)に取り組み、サルトの技術や表現を学ぶ。2009 年、デザインから生産、販売までを一貫するデ・ヴィ・インダストリア社をナポリ郊外の町、フラッタマッジョーレに創立。自身の名を冠したデ・ペトリロをスタートさせた。


B.R.ONLINE編集部(以下 編集部)毎シーズン、ベニーさんからリアルなナポリのファッション事情が聞けるのはB.R.ONLINEだけ。シーズン毎に、ファンも増えていますよ。

ベネデット(以下 ベニー)De Petrilloは、ナポリのスタイルを一方的に提案するのではなく、どうすれば日本人が着たいと思えるコレクションになるかをつねに考えています。型紙を日本人体型に合わせて細かく修正したり、日本人の好みの色や日本人の肌に合う色も取り入れているんです。日本の人たちに納得して着て欲しい、日本の人に喜んで着て欲しいと思っているからです。

編集部De Petrilloの前身であるGAIORAの頃からベニーさんとはお付き合いがあります。その成長過程を見てきているB.R.ONLINEとしても、今の状況は素直に嬉しいです。今後、まだまだ伸びそうですね。

ベニービジネス面だけでなくイタリア文化と日本文化の相互理解にも役立っているように思います。日本人は服の作りや素材について、他のどの国のバイヤーよりも質問してきます。それだけDe Petrilloの服に興味を持ってくれているということ。そのひとつひとつに誠実に答えていきたいと思っています。それに私自身も好奇心旺盛なのです。その好奇心と情熱を、ファッションの世界で伝えていきたいと考えています。そのへんも日本人と響き合うように思います。長い時間を共に過ごしてきたことで友情のようなものを感じますし、共に成長しつつ、お互いを理解し合えていますから。

編集部そう言ってもらえると嬉しいですね。さて来シーズンのトレンドについてですが、De Petrilloでは、どのように取り入れているのでしょう? 日本のファッションメディアはPitti UOMOのレポートを基準にしているところもありますが、最近では、ユーザーはそれほど気にしていないようにもみえます。

ベニーPittiを追いかけている方がいる一方で、そうでない人がいてもいいと思います。イタリアでも同じです。周りを意識しすぎることはありません。

編集部とくに最近はパンツのシルエットに変化が見られます。プリーツの復活やキャロット形のシルエット、ワイドパンツも登場するなど様々な提案が出ています。

ベニークラシックなパンツはもともとプリーツ入りでした。イタリアでもノープリーツはまだまだ多くて、プリーツ入りを履いているのは、トレンドに敏感な人か、あるいはずっとプリーツ入りを履き続けている人。つまりノープリーツの流行に見向きもしなかった人です。日本と同じですね。今イタリアでトレンドのキャロット形シルエットは、そのままでは日本人体型に似合わないと思います。少しアレンジして細身のキャロット型のほうが似合いますね。その場合は作りのうえでプリーツがあったほうがきれいなシルエットがでますので使い分けるといいでしょう。ワイドパンツは、モーダの影響ですね。私は履きませんが。

編集部ブリティッシュな素材やディテールデザインを取り入れているブランドも多いですよね。

ベニー英国調は個人的にも好きです。というのもナポリのサルトリアは英国の仕立て服の歴史とともに歩んできたからです。19世紀後半から20世紀初頭まで、ナポリの服屋は英国の生地を買ってきて服を仕立てていました。いまも英国のスタイルはナポリスタイルのお手本ですし英国調との馴染みもいいのです。De Petrilloでも英国調を多少取り入れていますが、あまり過剰にならないように、あくまでナポリの“笑顔”を表現できるように展開しています。どんなことも、行き過ぎるのはよろしくないと思っていますので。

編集部実際のところ、チェンジポケットやキャロットパンツ、タブカラーシャツやワイドパンツなど、ナポリ人はそういった流行をどのように捉えているのでしょう? 敏感に取り入れてるのでしょうか? それともあまり動じないのでしょうか?

ベニーナポリ人にはそれぞれにスタイルがあって、祖父から父へ、父から子へ、自分たちのスタイルを伝えていくという文化があります。ですから流行が変化することに、ナポリ人はあまり影響されません。とはいえナポリ人はそれぞれにファッションに対する情熱もあります。「ナポリ人のクロゼットには、すべてのモーダが詰まっている」と言われるように、色も柄もアイテムも誰でも一通りのものを揃えています。一番重要なのは、流行り物を着るのではなく、手持ちの服をどうやってその人に似合うように素敵に着こなすかということです。

編集部流行に敏感に反応して取り入れているわけではないんですね。

ベニー人によります。私の周りのファッション業界の人は、敏感なほうかもしれません。ブランドについても、こだわり過ぎることはありません。時計や靴などもそうです。自分に似合うもの、自分が好きなものを大切にしています。

編集部日本では著名なバイヤーや編集者が、どんなトレンドに注目しているかによって、ユーザーは右往左往しがちです。それというのも日本人は決め事が好きなので、今年はこう、来年はこうって決めたがるし、お洒落にあまり詳しくない人は誰かに決めてほしいと思っている人も多いと思うんです。

ベニーまずは自分のパーソナリティを知ることがとても大切です。クラシックもトレンドも、すべてを取り入れると混乱します。まずは自分が目標にしたいファッションスタイルをしている誰かを設定すると良いでしょう。あるところまではその人の真似をしながら、自分に似合うかどうかを考えていくのです。ナポリ人の多くは自分の父親や、50年代の俳優、ヴィットリオ・デ・シーカやトトなど昔のウェルドレッサーを目標にしています。昔の映画俳優は貴族のスタイルを取り入れていますので、そこを目指している人は多いですよ。

編集部まずは誰かの真似から始めるんですね。それなら日本人も得意です。

ベニーそれからナポリではファッション業界人だけでなく、一般の人もお互いの服装について評価し合うんです。お洒落をしてレストランやカフェに集まったり、ホームパーティを開いたりして、ファッションのことを話し合う。そうすることで、互いに磨かれていくんです。

編集部日本人はお洒落をして、遊びにいくことが少ないですからね。日本人はお洒落をする為にお洒落をしている感覚を受けますが、ナポリ人は人生を楽しむ為にお洒落をする感じを受けます。

ベニーナポリ人はなにもイベントがなくても、タキシードを着てパーティを開く事がありますよ。

編集部これはエリコ・フォルミコラさんですね。シャツブランドに始まって、いまではトータルブランドに成長したナポリの社長さんです。

ベニーこれは先日、私の自宅で開いたパーティの様子です。ナポリ湾を一望できる私の邸宅でパーティを開きました。だれかの誕生日とかではないんですよ。ただ集まりたかっただけなんです。

編集部確かにお洒落して集まっていますね。日本人はホームパーティや飲み会、食事会でも気軽な格好で出かけてしまいがちです。

ベニーこちらは今年の夏、サルディーニャ島へ家族でバカンスを過ごした時。ここでも私も家内も、いろいろな服を楽しみました。

編集部奥様もお洒落を楽しんでいますね。

ベニーなぜナポリ人が何かの折りに、お洒落して集まるかというと、自分自身が心地よくいたいからです。自分をよく見せるというよりも、自分が気持ちよくいたい。自分が気持ちいいと、周りの人も気分がよくなります。ドレスアップした妻が機嫌がよければ、夫婦喧嘩することもありませんしね(笑)。お洒落は自分のためであると同時に、周りの大切な人たちのためでもあるんです。そこに気がつけば、自ずとお洒落になれると思います。


CREDIT
Writer : 池田保行 (ゼロヨン) / Photographer : 岡田ナツ子
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