CHOSEN ONE

  • TOP
  • MALL
  • CHOSEN ONE
  • FEATURE
  • みんなの、自分の“あったらいいな”を空間 (かたち) にしていきたい。

フランス料理人・株式会社シェルシュ代表 / 丸山 智博みんなの、自分の“あったらいいな”を空間 (かたち) にしていきたい。

2017.03.04

2010年に、代々木上原にビストロ「メゾン サンカントサンク(MAISON CINQUANTECINQ)」を開店以来、「グリ(Gris)」、「ランタン(Lanterne)」、「9STORIES」、「Bar à vin MAISON CINQUANTECINQ」と個性的な飲食店を近隣エリアに立て続けにオープンさせた、気鋭のフランス料理人であり、店舗プロデューサーの丸山智博さん。夕闇迫る代々木上原駅と代々木八幡駅の間の住宅街、柔らかな照明に包まれた「9STORIES」にお邪魔して、ご自身のキャリア、それぞれのお店、そして2017年3月4日にオープンするギャラリーとレストランの複合ショップ「AELU(アエル)」について、お話をおうかがいしました。

フランス料理人・株式会社シェルシュ代表

丸山 智博さん

1981年生まれ、長野県安曇野出身。かつて神宮前にあったフレンチ「ラミ・デュ・ヴァン・エノ」勤務後、代々木上原にビストロ「メゾン サンカントサンク」を出店。以降、「グリ(Gris)」「ランタン(Lanterne)」「9STORIES」「Bar à vin MAISON CINQUANTECINQ」を展開。2017年3月4日にはギャラリーとレストランの複合ショップ「AELU(アエル)」をオープン。レセプションパーティのケータリング、フードコーディネーター、メニュー開発等、様々な活動も行う。ファッション好きでも知られ、ファッション誌にも多数登場。

RECENT TOPICS



化学、音楽、そして料理

--- 子供の頃の丸山さんについて、教えて下さい。

長野県の安曇野で生まれました。祖父と祖母は、洋服の仕立屋を営んでたようです。父は、松本のデパートに勤めていて、呉服や宝石のセールスをしていましたね。僕もファッションが好きなんですが、そんな環境も少しは影響してるかもしれません。

小さい頃は、落ち着きがない子、目立ちたがりの子、と言われてました。高校は松本の進学校に進んだんですが、やんちゃなグループとも、優等生グループとも、バランス良く付き合うような、要領のいいタイプでした。

--- その頃は、何に夢中になっていましたか?

部活のバレーボールと、勉強では化学が好きでしたね。実験の時に、色が変わったり、煙が出たりとか、そんな目の前で起こる変化が楽しくて、結局、大学も化学を専攻しました。

大学時代は、ホーン系のバンドでトロンボーンをやったり、居酒屋のバイトに没頭してました。バイト先の店長が可愛がってくれて、仕込みや調理も本格的にやらせてくれたので、料理にものめり込んで行きました。で、料理に興味が出てきたので、大学を出てから料理の専門学校に通い始めました。

その学校に行きながら、ランドスケーププロダクツさんが内装を手掛けた、代官山の「グレープカフェ(glape café)」という店で働き始めました。当時はカフェブームの真っ只中で、自分も好きだったカフェという空間で働きながら、「店作りがしたい」、そんな気持ちになって行きましたね。ここでの経験、出会いは今も大切にしています。

--- 料理学校を卒業してからは?

学校の先生の紹介もあり、ジビエ料理で有名な「ラミ・デュ・ヴァン・エノ(L'ami du vin “Eno”)」で働くことになりました。素晴らしい腕を持った、厳しいシェフで、毎日とても忙しくはあったのですが、仕事の後に三宿のクラブ「Web」で行う大好きなレーベルが主催しているイベントに顔を出したりして、眠気と戦いながらもよく働き、よく遊んでました。

そのお店で2年くらい働かせていただいた後、中目黒のビストロや、原宿のレコード店と併設されたカフェで働いて、そこで買ったレコードでDJをしたりして。環境も変わり、様々な人との出会いもあったりして、新たな気持ちで日々を過ごしてました。

PHOTO / MAISON CINQUANTECINQ


代々木上原エリアでの展開

--- 最初のご自身のお店「メゾン サンカントサンク(MAISON CINQUANTECINQ)」はどのような経緯でオープンされたんですか?

29歳の頃でしょうか、知人の紹介で今の代々木上原駅至近のテナントを紹介していただき、「メゾン サンカン トサンク」という店名でスタートしました。僕と、もう1人の2人で始めて、すぐに今のメゾン サンカントサンクのシェフである八巻くんが参加してくれたのですが、オープンから200日くらいは休まず働きましたね。

当初は、昼には1階でデリカテッセンの料理を自分で作り、スタッフに販売してもらい、夕方になると上階のビストロのカウンターに入る形で営業を続け、少しづつスタッフも増え、現在の形に少しずつ近づけていきました。

今1階はフランスロワール帰りの田井くんとの出会いがきっかけとなり「バー ア ヴァン メゾン サンカントサンク(Bar à vin Maison Cinquantecinq)」という名で、自然派ワインのワインバーとして営業してます。

--- 2件目にオープンさせた「グリ(Gris)」については?

「メゾン サンカントサンク」は、居抜き物件からの出店だったので、一から自分のお店を作りたいという気持ちは常に持っていました。そんな時に、自分が信頼できるデザイナーさんと、スケルトンの形から手を付けられるいい物件に同時に出会うことになり、オープンを決意しました。結果、一からだったので、想像の3倍くらいのお金がかかりました(笑)。

オープンした2011年頃は、パリの「Le Comptoir(ル・コントワール)」というお店が先駆けと言われている、クラシックな料理を現代的なプレゼンテーションで提供する“ネオビストロ”というスタイルが出始めていて、ふと、モダンな空間で、本格的なフレンチを食べられる空間が面白いのでは、と閃いて。

工事前のスケルトンな空間のコンクリートの壁の色がグレーで、「“グレー(Grey)”は、フランス語なら“グリ(Gris)”だな」、と思って計画書の為の仮称として使っていたのですが、だんだんしっくりきて、そのまま「グリ(Gris)」が店名になりました。その“グリ=グレー”がデザインのコンセプトにもなり、壁は“ディオール・グレー”という色にして、様々なコントラストのグレーを店内に取り入れました。

当初はアラカルトもお出ししていましたが、その後、コペンハーゲンの「Noma(ノーマ)」や、「Kadeau(カドー)」、パリの「Le Chateaubriand(ル シャトーブリアン)」、「Septime(セプティーム)」といったガストロノミーレストランにとても感銘を受け、そのスタイルを自分なりに消化して、現在はシェフ鳥羽、ソムリエ外山コースを中心に料理と、それに最良のワイン、ノンアルコール飲料を“ペアリング”して、お酒の強い方も、苦手な方にも、旬の食材の魅力を最大限に楽しんでいただけるような形にしました。

PHOTO / Gris

--- 3件目に出店されたのは、居酒屋と呼ぶにはかなりオシャレな「ランタン (Lanterne)」でしたね?

たまたま、“雇われ”時代に携わっていて気に入っていた、今の「ランタン」の物件が空いて、当時ケータリングとか、業務も拡大してきたので、あまり新店の細かい詰めまでは考えないうちにフライング気味に契約してしまいました。

新店のヒントを求めて訪ねたフランスで、憧れていたパリの三つ星のAstrance(アストランス)というお店を訪ねた際に、モダンでいてしっかりとしたフレンチでありながら、味噌とか味醂とか、和の食材を見事に融合させている料理に衝撃を受けました。自分自身は、フレンチの修行時代から、“和”に対しては意識的にノータッチだったのですが、そのこだわりから解放されたような気がしました。

ただ、当時の自分の料理に“和”のエッセンスを盛り込んだだけでは、いわゆる“創作料理”というポジショニングになってしまいそうで。であれば振り切って、自分なりの“居酒屋”、“赤提灯(≒ランタン)”を作り上げてみたいと。修行時代に培った、身近な素材でも魅力を引だしながら、ひと皿に盛り付けてプレゼーテンする術を、“和のつまみ”に生かせれば、と思いました。

--- 本日お邪魔させていただいている、4件目の「9ストーリーズ(9STORIES)」については?

このお店は、(株)ネイキッド(NAKED Inc.)さんとの共同プロジェクトとしてスタートしました。多分野で活躍されている会社との共同プロジェクトなので、お互いの意見を出し合い、すり合わせながら、お互いの理想の形を追求しています。

最初に両者で共有したのが、長期滞在型のリゾート地にあるホテルのレストランカフェのような、それぞれの人が、コーヒーだけでも、テイクアウトでも、きちんとした食事でも、「各々のシーンによって使って貰えるようなお店」、というのがテーマ。様々なシーンを創り出すという意味で短編小説NINE STORIESから命名しています。

特定の商材、メニューを軸に集客をするようなお店ではなくテーマが都度変わるので、使う人にとってはやや伝わりにくかもしれませんが、代々木上原、代々木八幡、幡ヶ谷のちょうど中間地点という立地を生かし、コミュニティに根ざしたお店造りができればと考えています。

--- 丸山さんのお店は、代々木上原のエリアに集中していますが、お客さん同士を奪い合ったりしませんか?

代々木上原駅に行くたび、街を歩いている人を見るたびに、「この街にはまだまだニーズとマーケットがあるのでは」と思います。

それぞれのお店で考えると、「ランタン」は地元の方を中心に使っていただけるように。「メゾン サンカントサンク」、「グリ」は、より広いエリアから、例えば海外の人からも注目されるように、とか。店としては同じエリアにあるのですが、それぞれ少しずつターゲットを変化させることで、お客様の奪い合いは極力ないようにしています。

パリのニール通りに「Frenchie(フレンチー)」という店があって、レストラン、ワインバー、お惣菜屋など、それぞれをひとつの通りで、スタイル良く作っているんですよ。そんな例を見ている事あって、個性の違うお店が同じエリアにある事は、相乗効果を生み出して、いいことのように感じています。


器を軸にした、食の新たな体験

--- 新しくオープンするお店「AELU(アエル)」について教えてください。

3月4日、代々木上原駅至近にオープン予定です。ここ数年、自分が大好きな “レコード” と“器”を似た感覚で探していることに気づきました。そんな自分の器への思いもあり、今度のお店は、器を展示、販売するギャラリースペースと、レストランが複合したショップになります。店名は和の調理法「和える」と、「逢える」が由来で、僕やショップのスタッフが、出逢ってきた器や食材を自由な感性で和えることによって、新しい価値を生み出す店にして行きたいですね。

ギャラリーは様々なエリア、時代、手法を横断し、料理人としての視点も加味した自分なりの切り口で、国内、海外の作家の磁器、陶器、木、漆器など、様々なジャンルの器を取り揃え、販売もするとともに、作家さんをお呼びした企画展やイベントも行っていきます。また、ソムリエが厳選したワインの販売も予定しています。

PHOTO / AELU (Gallery Space)

レストランスペース「restaurant AELU」では、『器と酒肴(しゅこう)』をテーマに、フランス料理、イタリア料理、和食を『和えた』料理を提供します。お食事をしっかり愉しみたい方、お酒をメインに飲みたい方の垣根なく、酒場のような雰囲気で、気軽に楽しんでいただける空間にしていきたいですね。器は、「gallery AELU」で扱いのある作家さんの作品を中心に、自分たちの愛するものを揃えています。ギャラリースペース、レストランスペースという二つの空間を合わせて、来ていただいた方に伝わる世界観が「AELU」ということになります。

--- 楽しみなプロジェクトですね。

経営的な、効率的な視点は、当然大切なことですが、自分のベースは料理人であり、自分自身も料理とそれを取り巻く空間が大好きな人間だと思っています。「どうしたらお客さんに料理を快適に、美味しく体感していただけるか」、あるいは、「自分自身が、それをどう感じるか」、そこをベースとしたお店、空間作りを突き詰めて行きたい、新しいプロジェクトを進めながら、そんなことを改めて強く感じました。

CREDIT
Interview & Photo : SUMIYA TAKAHISA

関連特集記事

LOAD MORE

loading

最新記事

LOAD MORE

loading

franckmuller BOGLIOLI ROY ROGER'S
RakutenPay

*当サイトの税込価格表示は、掲載時の消費税率に応じた価格で記載しております。 お間違えになりませんようご注意ください。

arrow