BLOG / Kentaro Matsuo

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四方章敬さん

2019.10.10

四方章敬さん
スタイリスト

ついに出てしまいました! スタイリスト、四方章敬くんのご登場です。彼を知っている多くの人々が、いま「プッ」と吹いたのが聞こえてくるようです。

 シカちゃんは、メンズのクラシック系のスタイリストとしては、いま最も売れているひとりです。メンズ・イーエックス、レオン、メンズプレシャス、メンズクラブなどの人気雑誌のほか、ビームスのシーズンカタログも手掛けています。このB.R.ONLINE、そしてTHE RAKE JAPANのメイン・スタイリストでもあります。

 なぜ、そんなに売れているのでしょうか? 何を聞いても顔をくしゃくしゃにしながら「わかんないっしゅ!」と笑い飛ばすという末っ子気質丸出しの人懐っこい性格のせいもあるでしょうが、それだけで生き残っていけるほど、この世界は甘くありません。
 彼のスタイリングは基本がきっちり出来ていて、その上に毎回、ちょっとした“挑戦”があるからだと思います。それは例えば、あまり知られていないような店から借りてきたチーフを挿したり、モデルに“ちょっとイイ”時計をはめさせていたりと、細かいところなんですが、プロほどそういうところを見ているものなのです。ウチのうるさがたフクヘン&ファッション・ディレクター、ユーコー・フジタが、シカちゃん以外のスタイリストを使おうとしないのですから、たいしたものです。

 スーツは、ラ ファーヴォラ。平剛氏がプロデュースするブランドです。
 私が、スーツを着ているシカちゃんは初めて見た、と茶化すと、
「こう見えても、結構スーツは持っているんですよ。ちゃんとした人に見せたいと思っているので(笑)。ラ ファーヴォラでは毎年3〜4着は作っています。他にもオラッツィオ・ルチアーノやソリート、アットリーニなどで作ったことがあります。研究のために買っているんです」
 
 タイは神宮前ブライスランズで買ったセブンフォールド。
「ブライスランズは大好きしょっちゅう行っています。クラシックにヴィンテージなどの他の要素をミックスしているところが斬新で、感銘を受けました」

 シャツはタイ・ユア・タイ。

 メガネはギュパール。フランスのヴィンテージに精通した、日本人デザイナーが手掛けるブランドです。
「ワイルド ライフ テーラーで見かけて“いいな”と思って買いました。ふらっと通りかかった店で、普通に定価でモノを買うことも多いですよ」

 時計はパテック フィリップのカラトラバ。1990年代の“96(クンロク)”です。
「誰からも文句を言われない時計が欲しかったので(笑)。他には時計デザイナーのジェラルド・ジェンタが好きなので、オーデマ ピゲのロイヤルオークやロレックス・オイスターのジェンタ・デザインのモデルなどを持っています」

 シューズはブライスランズで買ったコルノブルゥ。福岡を拠点とする、靴専門の工房です。

 シカちゃんは、1982年、京都生まれ。
「京都とは言っても、僕の生まれたところは、ど田舎でした。周りには田んぼしかなくて、最寄りのコンビニまで、クルマで15分もかかるようなところです。高校生になって、ファッションに目覚め、両親に『文化服装学院へ行きたい』と言ったら、大反対されました。『四方家の人間にセンスのあるヤツなんていないから、お前には絶対ムリだ』と言われました(笑)」

 スタイリストになろうと思ったのは、軽〜い理由から。
「文服に通っているとき、スタイリスト・ブームがやってきたのです。雑誌に載っている祐真さんや野口さんを見て、“カッコいいなぁ”と思って・・」

 そして卒業後、スタイリストのアシスタントになりますが、そこからが地獄でした。
「夜中の2時に撮影が終わってから、何十着ものスーツの返却準備をするのです。いつも朝までかかりました。カメラマンが撮影したポラロイドを持っていくと、いつも怒鳴られてばかり。師匠に殴られたり、ビンタされたこともありました」
 下積みは、約8年間も続きました。
「28歳でようやく独立しましたが、最初は大変な仕事ばかり。当時は別冊ブームで“靴読本”を担当したときは、500足もの靴の靴紐を締めました」
 あ、それ私の企画です・・

 私はシカちゃんがアシスタントをしていたときから、彼のことをずっと知っています。同じポジションについたアシスタントたちが、次々に辞めていくのも目にしていました。かつて私自身もスタイリングという仕事を経験しているので、彼がいかに大変な作業をこなしているのか、陰ながら理解していました。

 スタイリストの力量はネクタイのノットに出ると言われます。素人目には、ネクタイなんてただ結ぶだけと思われがちですが、ノットというものは実に奥が深く、何百何千と結んできた経験が、その形に必ず表れるものなのです。シカちゃんのノットは実に美しい。それは彼の実力が、本物であることを物語っています。

 モジャモジャ頭の若者は、いつの間にかトップ・スタイリストになりました。
関係者の皆様、これからもウチの四方を宜しくお願い致します!(笑)

 

THE RAKE
https://therakejapan.com/

 

 

PROFILE

松尾 健太郎

松尾 健太郎

THE RAKE JAPAN 編集長


1965年、東京生まれ。雑誌編集者。 男子専科、ワールドフォトプレスを経て、‘92年、株式会社世界文化社入社。月刊誌メンズ・イーエックス創刊に携わり、以後クラシコ・イタリア、本格靴などのブームを牽引。‘05年同誌編集長に就任し、のべ4年間同職を務めた後、時計ビギン、M.E.特別編集シリーズ、メルセデス マガジン各編集長、新潮社ENGINEクリエイティブ・ディレクターなどを歴任。現在、インターナショナル・ラグジュアリー誌THE RAKE JAPAN 編集長。

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