BLOG / Kentaro Matsuo

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地主晋さん

2019.09.10

地主晋さん
フォトグラファー、マディソンブルー副社長

フォトグラファーの地主晋さんのご登場です。写真家としては、1986年にAPAアワード(日本広告写真家協会賞)特選を受賞された後、渡仏。88年に帰国されてから、数多くの広告・雑誌を手がけ、常に第一線で活躍されてきました。昔からファッション誌をやっている私のような人間で、まぁ知らない人はいないですね。「ウォモ・ヴォーグで仕事したときは、お金だけ渡されて『好きにやっていいよ』と言われました(笑)」いろいろな意味で“いい時代”を駆け抜けてきた方です。

しかし最近では、もうひとつの肩書き=“マディソンブルー副社長”のほうで大忙しのご様子です。マディソンブルーというのは、地主さんの奥様で元スタイリスト、中山まりこさんがディレクター兼デザイナーとして、2014年にスタートしたブランドです。メンズライクなアイテムをレディスとして仕立て、逆に女性らしさを引き立てるというコンセプトで、大ブレイクしています。2016年からはメンズもスタート、実は私も愛用しています。「最初に始めたときは、シャツ6型しかありませんでした。それが今では200型以上になりました」マディソンブルーが珍しいのは、奥様が50歳近くになってから立ち上げたブランドであるという点です。「中山のスタイリストとしての30年の経験が生かされています。スタイリングそのものをデザインしているという感じ。着て頂いた時にキマるように考え抜かれている洋服です」中山さんはかつて私の先輩、青柳光則さんのアシスタントをしていたこともあります。師匠曰く、「あいつは本当にセンスがよかった・・」

マディソンブルーを“たまたま当たった”ブランドだと思っている人がいたら、それは大間違いです。今回じっくりお話してわかったのは、地主さんのファッションに対する造詣は、まさに膨大であるということです。その地主さんをして「洋服バカの極み」という奥様とタッグを組んでプロデュースしているのですから、たとえ一枚のシャツといえど、その背後には莫大な物語が隠されています。マディソンブルーは“当たるべくして当たった”ブランドなのです。

ダブルの6Bリネン・ジャケットは、マディソンブルー。
「マディソンブルーにはカジュアルなイメージがありますが、こういったテーラードもリリースしています。ショート丈でちょっと肩が張っていて、イタリアというよりはフレンチ、チフォネリのようなイメージでしょうか・・」

ニットはクルチアーニ。私が「全身マディソンブルーではないのですね?」とお聞きすると、「マディソンブルーは、自由に着ていい服なのです。基本ベーシックなデザインなので他のブランドとも合わせやすいと思います。クルチアーニのニットは大好きで、よく買っています。ここは特に“製品染め”がうまいですね」とプロらしいご意見。

パンツはセブン バイ セブン。デザイナー、川上淳也氏が手掛けるブランドです。「いわゆるフレアーパンツですね。昔のファーラーのようなシルエットです。ティーンエイジャーの頃は、サーファー文化のど真ん中で育ってきましたから・・」
湯河原で育った地主さんは、高校生の頃からサーフィンを始め、サーフムービーなども監修するほどのサーフオタクです。

メガネはカトラー&グロス。
「映画『キングスマン』で使われた0822というモデルです」

クロノグラフはヴィンテージのエルメス。「60年代ですかね。ムーブはランデロンなんで安物ですよ・・」なんてさらりと仰っていました。

細い方のバングルはマディソンブルーのオリジナル、太い方はヴィンテージのナバホ。「セドナで買いました」リングはサークルツリー。

シューズは、サンローラン。「エディ期のサンローランのブーツは好きですね。私は基本的にコバの薄い靴が好きなのです」

「コーディネイトのテーマは?」との問いには、「“またまたキザっていいんじゃない”というのがテーマです(笑) 自分のバックグラウンドはアメリカンですが、ヨーロッパのエレガンスも大好きで、例えばパンツにしてもフレアーか、パンタロンか、微妙なところを攻めたいですね」仰ることが、深すぎます・・

深すぎるものは、もうひとつあって、背景に写っている愛車、1971年式メルセデス・ベンツ280SLです。まさに“ミント・コンディション”というヤツで、内外装ともまるで新車のようです。「アメリカから個人輸入しました。ずっと長い間、納屋で保管されていたもので、最初はホコリだらけだったけれど、磨いたらピカピカになりました。実はコレ、ヨメへの誕生日プレゼントだったんですよ。女性がヴィンテージカーに乗ったら、カッコいいと思って・・あくまでも“体裁は”ですが(笑)」

地主さんと中山さんは、来年結婚25周年を迎えられます。「長続きの秘訣は?」との質問には「命に関わること以外はだいたいな感じ」という、これまた深〜いお答え。「A型いて座のヨメとB型さそり座の私は最悪の相性(笑)。ヨメは生活すべてにおいて“攻める”タイプだけど、私はこだわりなく、ゆるっと支えられるんです」なるほど、私も見習わなくては・・

ところで地主さんはその昔、国分寺にあるの超有名喫茶店“ほんやら洞”(経営はミュージシャンの中山ラビさん)でバイトをしていたことがあり、私も偶然すぐそばのアンティーク店でバイトをしていたことがあったので、国分寺の昔話に花が咲きました。
35年以上前、まだ駅ビルもなかった頃の国分寺には“夜ふかし通り”と呼ばれるストリートがあり、怪しげな骨董屋や古着屋、バーなどが並んでいて、そんな雰囲気に誘われて、これまた怪しげな人々(代表格は竹中直人さん)が集う街でありました。あの頃私の周りには、先輩としてすごくカッコよく、そして不思議な人たちがたくさんいましたが、いつの間にか皆どこかへ行ってしまいました。しかし本日、久しぶりにそのうちのひとりと再会できたような気がします。
地主さん、ありがとうございました!

 

THE RAKE
therakejapan.com

PROFILE

松尾 健太郎

松尾 健太郎

THE RAKE JAPAN 編集長


1965年、東京生まれ。雑誌編集者。 男子専科、ワールドフォトプレスを経て、‘92年、株式会社世界文化社入社。月刊誌メンズ・イーエックス創刊に携わり、以後クラシコ・イタリア、本格靴などのブームを牽引。‘05年同誌編集長に就任し、のべ4年間同職を務めた後、時計ビギン、M.E.特別編集シリーズ、メルセデス マガジン各編集長、新潮社ENGINEクリエイティブ・ディレクターなどを歴任。現在、インターナショナル・ラグジュアリー誌THE RAKE JAPAN 編集長。

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