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TIE YOUR TIE PRESENTS HAVE YOUR OWN STYLE Vol.1

2013.07.30

TIE YOUR TIE HAVE YOUR OWN STYLE Vol.1 タイユアタイアジア株式会社 代表取締役社長 加賀健二 お洒落はモノではなくコトが大切

photo: Yasuyuki Suzuki / text: Tsuyoshi Hasegawa / photo (in Italy): Shinichi Izaki

フィレンツェスタイルの発信源と謳われる名店、タイユアタイ。加賀健二さんはその美装の殿堂において長年エグゼクティブを務めてきたキーマンです。VANを着ていた少年時代、そして古着とサーフィンの時代を経てアルマーニへ。仕事の傍らついにアットリーニに出会う道のりなどは、まさに着道楽人生そのもの。昨今に至って「ようやく無地の服が着られるようになりました」と語る言葉の意味を、今回はじっくり伺ってきました。

タイユアタイアジア株式会社
代表取締役社長

加賀 健二さん

昭和39年9月24日生まれ、出身地は大阪市。大学卒業後アパレルメーカーに就職。その後、タイユアタイ設立に参画し、現在に至る。また、2011年イタリアフィレンツェに、ネクタイ製造メーカーSEVEN FOLD srl 設立。

日本人としての自分を
キチンと意識していますか?

「モノを持つことで自分が窮屈になってしまうのはツラいですよね」今回のインタビューのなかで加賀さんがポツリと呟いた言葉。これはいわゆる値段の高い服、もしくはブランド品を身に着けていれば、それが即ちお洒落であるとは限らない、ということ。お洒落とは単なるモノのことではく“コト”なんだと加賀さんは語ります。

そんな加賀さんのお洒落の原点は、お父さんにあると言います。戦後関西にて、米国からジュークボックスなどを輸入し国内に卸す商いで財をなしたお父さんは、相当にモダナイズされた人物。そのころの日本では珍しいマスタング390やジャガーEタイプに乗るなど、車の選びからしてひと癖あるチョイスだったと振り返ります。

「まあ、父親は大雑把にいうとスティーブ・マックイーンのような男でした。当時のアメリカ映画などもよく見ていたのでしょう、服装にも強いこだわりがあるのを感じていました。父がオーダーした服を自分も一緒にお店に取りに行ったりしており、比較的早くに大人の服の世界を垣間見ることができていました。また、商売で扱っていたということもあり、家には売るほどレコードがありまして、リアルタイムに新しい欧米の音楽に触れられていたのも、今の自分を形作る上で大きい要素だったと思います」

イタリアでの加賀さん1/ナポリ、サンタルチア港をバックに電話中。後ろに写っているのは有名なcastel de’ll ovo。

小学校の頃にはVANを買い与えられ、欧米の音楽を広く嗜む加賀少年は、中学に入ってサーフィンの世界に深くはまり込みます。

「学校をサボってよく波乗りに行きました(笑)。それに伴い旅にもたくさん出掛けました。そういう経験からも“モノではなくコトの大切さ”を学んでいったような気がします。カッコ良い服を着れば必ずお洒落になるワケじゃない。海に入ってしまえば誰でもハダカですからね。また、旅に出ると自分の立ち位置が明確になる。普段気付きにくい自分の本質が見えてくるというか。そのなかで真に必要なモノをえり分け大事にするようになっていきました」

お父さんがそうであったように、加賀さんもまた映画観賞をひとつの趣味として挙げています。ケーリー・グラントやマストロヤンニも観たし、イブ・モンタンも観た。なかでも高校時代に衝撃を受けたのが『アメリカン ジゴロ』であったとか。

「それに関してはリチャード・ギアうんぬんというよりも、アルマーニの服にヤラれてしまいました。一体アレはなんなんだ、というコトで(笑)。ワケもわからず現金握って心斎橋まで買いに走りましたよ。それがまあ、イタリア服との出会いでしょうか。DCブランドもちょっと齧りましたけど、基本はもうイタリアでした。マストロヤンニじゃないが、イタリア人の着こなしが一番洒落て見えましたので。もちろん、格好イイのはケーリー・グラントやアステアだと分かっていても、あそこまで計算づくな着こなしは自分にとって少々ツラかった」

イタリアでの加賀さん2/フィレンツェ、アルノ川沿いにて。

自由にお洒落を楽しむ大学時代を経て、イタリアンブランドを扱う代理店に就職する加賀さん。転機はその後訪れます。あるとき友人がフィレンツェにあるセレクトショップの日本支店を始める、ということでその事業を手伝うことになったのです。それがまさにタイユアタイ。そこで加賀さんはアットリーニと運命的な出会いを果します。

イタリアでの加賀さん3/フィレンツエの中心街にて

それは同時にフランコ・ミヌッチさんとの出会いでもありました。タイユアタイはミヌッチさんが50歳から始めたショップ。そんな歳からあれだけのお店をスタートさせるということも、そもそもありえない話だと加賀さんは語ります。

「ミヌッチさんは今でも僕の良き師匠。いろいろなアドバイスをいただいています。彼は関西人のスピリッツと似た感性を持っており、だから言われたことが即座に僕の心にスッと入ってくる。ミヌッチさんが良く口にしていたのが『モノにこだわることが一番格好悪い』ということ。まさに僕もそう思うわけで、こだわることで自分自身を縛っては窮屈になるばかり。それと同じように、彼が特に商売において心掛けていたのが『他所で売れているものは絶対に仕入れない』ということ。コレをやってしまうと本当に怒られちゃう(笑)。『じゃあ、看板をハズしましょうね』となってしまうんです。この考えも関西人魂と似ていまして、僕自身も人の嫌がるモノを粘り強く提案していくことに、対面販売の醍醐味があると考えているんです」

イタリアでの加賀さん4/フランコミヌッチさんとのツーショット。フランコさんのご自宅です。

そんな加賀さんは最近になって自身の装い方に少し変化が表れたと言います。それまで袖を通すことがなかった無地のアイテムを着るようになったというのです。

「ウチの店でも無地の服って極端に少ないんです。無地で稼ぐようになったらお店も終わりと考えていたフシがあるので。それ自体がひとつの“縛り”と悟ったワケでもないのですが、50歳を目前に気負いが小さくなりました。無地もまあコレはコレでありだろう、という心境とでも言いましょうか。……きっと上品に見せようとかそういう考えが薄くなったのかも知れません」

インタビューのこの日、加賀さんの装いはコットンソラーロのネイビースーツという出で立ち。合わせたのは白無地のブロードシャツにスーツと同系色のドットタイ。レシピ自体は非常にシンプルでストイック。にもかかわらず実際の加賀さんを前にした印象は洒脱かつ自然で軽妙そのものでした。こういった雰囲気を演出するには、どれくらいの場数を踏む必要があるのでしょう?

「まあひとつの例ですが、海外出張などに行ったとき、自分がその街に馴染んでいるかどうかがひとつのハードルだと思っています。日本人としての自分をキチンと意識していないと、スタイルもナニもないワケで……。展示会の会場などで『アイツ今日もいたね』と囁かれるくらいになって、初めてお洒落も一人前と言えるかもしれませんね」

なにやら最後になって禅問答のようなナゾかけ。しかしこれは男子のファッション、さらにそれを超えた生き方にも通じる大いなる問題です。今、即座に分からなくてもいい。こういった考えを心に持って日々装いを改めること。そうすることで本当の格好良さに辿り着くだろう……。フィレンツェスタイルの体現者は、そう言っているようにも見えました。

スーツは今季のセミナーラ。ネイビーの無地ながらコットン製、ソラーロ生地ならではの寛いだルックスがポイントです。シャツはブリーニの白無地。セッテピエゲのタイはもちろんタイユアタイのもの。結び方にノンシャランな味わいを忍ばせています。「サーレ・ペペ」という細かい柄も装いに深味を添える一要素。靴はマリーニのスリッポン。コットンスーツとの相性も抜群です。

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