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FEATURE

アーティスト、コンダクター・オブ・デザイン / 川上シュン

2016.09.23

Interview&Photo : SUMIYA TAKAHISA

時にグラフィック、ウェブデザイナー。時にアーティスト。そして、空間デザイナー。アウトプットによって様々な顔を見せるアートディレクターの川上シュンさん。過去に開催した個展をまとめた作品集『between art and design』の出版を機に、二子玉川のツタヤ家電で実施されたエキジビションとトークショーの準備の合間に、今までの作品から、今後の活動について、書籍と作品が美しく配置された展示会場でお聞きしました。

川上シュン

artless Inc.代表 /
アーティスト、コンダクター・オブ・デザイン

川上シュンさん

1977年、東京都生まれ。2001年に「artless Inc.」を設立。グラフィックやウェブデザインを中心に活動をスタートする。以降、企業やブランドのロゴ・アイデンティティ、広告・キャンペーン、ウェブなどの総合的ビジュアル戦略、APPS、UI、映像などの最新テクノロジーを用いた視覚的表現、エキシビション、プロダクトそして、建築やインテリア、サイネージ、空間演出に至るまで、活動領域は多方面にわたり、デザイン手法のみにとらわれないアート的なアプローチを組み合わせた独自の表現を確立。2008年、世界中の30歳以下の優れたアートディレクター50名を選出する「NY ADC: Young Gun 6」を受賞。その他受賞多数。2016年6月、過去に開催した個展をまとめた作品集『between art and design』を刊行。

http://artless.co.jp/
http://www.shunkawakami.jp/



サッカー、スケートボード、デザイン

--- 子供の頃は、どんな子供でしたか?

幼少期は、深川、門前仲町のエリアで育ちました。基本、サッカーしかしなかったですね。幼稚園から小中高とサッカー漬けでいわゆるサッカー少年です。サッカー以外はスケートボードとスノーボードのようなアートやファッション、デザイン的な要素が強いスポーツが好きで、その周辺のカルチャーにも興味を広げていきました。

川上 俊

スケートボード周辺のカルチャーや、音楽ではJAZZが好きだったこと、そして何より、叔母が住んでいて、精神的に一番近い海外だったこともあり、ニューヨークに惹かれていきましたね。

後は、イギリスのカルチャー。当時、トレインスポッティングが流行っていて、デザイン集団の「TOMATO」とか、そのメンバーでもある「アンダーワールド」とか、どっぷりはまりました。そこから、デザインという領域を意識していったかな。

彼らの表現は、デザインとか、アートとか音楽とか関係なかったんですよ。なんでも構わないっていうか。僕もそのスタンスの自由さに吸引されていって、その延長で、今の僕も、デザインも、アートも、空間も、横断的に取り組んでいて、興味のままにアウトプットしている気がします。

--- アートとデザインを自由に行き来している感じですね。

今でもアートなの?、デザインなの?、って聞かれるんですけど、僕の中では、どちらでもなくて、アートワークとデザインワークお互いが、自分にとって良い影響を与えていると思ってます。

自分という人間が、二人いる感覚ですね。何をやっていても、客観的な自分がもう一人いて、お互いがうまくやっている、そんな感じです。

川上 俊

--- デザインの世界へはどのように?

ネガティブに言うと、サッカーでの限界が見えたということがありました。小中と選抜にも選ばれていたりしたので、本気でプロを目指していたのですが、高校の時に、全国レベルのサッカーを経験して、超えれない壁と限界を感じました。その時、サッカーの次に興味があったのが、デザインという領域だったんです。

基礎は学びましたけど、名のあるデザイン学校、美術学校へ行ったわけでもなく、ニューヨークの叔母のところに、居候させてもらったりとか、、、。で、19歳の時には、デザイン事務所で実務をしながら、スキルを伸ばしていきました。

当時、DTP、インターネットが整備され、個人で仕事を依頼されることも多くなってきました。また、デザイン、アート、音楽の仲間たちと、グループ展、作品展とかもやったりして、そこに来てくれた人が、仕事をくれたりとか。それで2000年だったかな、22、23歳の時に、自然に独立しました。

クライアントワークと、アートワークを両立させ、個展とか、グループ展とか、その発表の場を作ったりとか、今と変わらないスタンスで活動してました。

川上 俊

日本の美意識への傾倒

--- 川上さんの作品には、独特な“和”、“日本”的な要素がありますが?

ニューヨーク、パリ、ロンドン、ミラノ、バルセロナ、、、いわゆる“海外”に憧れもひと段落した2005年、2006年くらいから、海外のエキシビジョンに呼ばれるようになり、そこの会場で改めて自分のアウトプットを考え直す機会がありました。

改めて「自分にしか作れないもの」ということを考えると、自分のコア、アイデンティティに向き合うじゃないですか。それから、作品のトーンとか、テーマとか、表現する内容が変わってきて、日本の美意識を表現しようと思うようになりました。

幸いなことに、自分が小さい頃育ったのが、深川、門前中町という江戸文化の香りが残っている場所でもあり、自然に江戸文化、日本絵画、生花、書や水墨画、そして、茶道と、いわゆる日本文化に傾倒していきました。

それから、もう10年経ちますが、自分の中でもやっとその日本的な要素が消化され、思っていたようなバランスに近づいてきたように感じています。

川上 俊

--- 京都に拠点を作られましたね。

京都は、日本文化のルネサンスが起きた場所、いわばイタリアのルネサンスでのフィレンツエのようなところ。日本文化を掘り下げていくと安土桃山時代、利休がいた時代にたどり着きます。お茶も、生花も、絵画も、日本の美の原型とも呼ぶべきものは、その時代にある種の成熟をむかえたと言っていいように思います。

京都が都だった頃の、文化と、美術と、哲学を、より皮膚感覚で吸収するためには、より長く京都で過ごせる時間を作る環境が必要でしたし、歴史の集積が生み出す美意識を、自分の中に肉体化するには、時間を費やして住まないと、その質も、精度も上がらないとも考えました。

今までは、「日本と海外のバイリンガル」というような活動をしてきましたが、これからは「江戸と京都のバイリンガル」になりたい、そんな思いもあります。

川上 俊

グラフィックと建築との距離

--- 空間のお仕事も増えてますね

コーヒースタンド、ホテルのブランディング等、近年形になっているプロジェクトが増えているのですが、空間を作りたい、携わりたいという思いは、かなり昔から抱いていました。以前から建築家に対する憧れがあり、中でもバウハウスの家具、建築、その作品を生み出す思想を強くリスペクトしてきました。

持論ですが、グラフィックの人間は、印刷媒体でのデザインを基礎としますので、タイプフェイスや文字組み、文字詰めなどの、繊細な情報デザインを見ています。ですので、空間におけるグラフィック(アートやサイン計画など)において、空間の方よりも高い完成度でのデザインができると考えています。もちろん、総合芸術とも言われる建築の、圧倒的な情報量には、太刀打ちできない領域が多いことも事実です。

言い換えるとグラフィックから、建築などの空間におけるデザインの領域は、距離があると思うのですが、自分の活動を通してその距離を縮めて、平面側の人間としての美意識を、立体、建築の世界に反映できたらいいな、そんな事を考えています。

川上 俊

--- 今後の活動予定について教えてください。

東京、京都、海外という3点を軸に、自分を動かしていきたいですね。それは、物理的な移動であり、そこでの生活であり、そこで感じる心の動きだと思います。ここでいう海外は、日本の外であれば、非日本語の世界であれば、どこでも構いません。

漠然とですが、東京、京都、海外を横断する暮らしが、自分の中に育むもので、言語を超えた美を生み出したい、そんなことを考えています。

ITEM/

  • Kawakami Shun

    ¥594,000

    CHOSEN ONE

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