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Intersect With Styles 谷川じゅんじのスタイル邂逅 Vol.2

2014.01.23

Intersect With Styles 谷川じゅんじのスタイル邂逅 Vol.2 インターフェースデザイナー 中村勇吾氏

Editer: 大野重和(lefthands) / Writer: 清水 清(lefthands) / Photographer: 鈴木泰之

「都市とつながり、人と人、人とクルマが交わる」をテーマとするライフスタイル提案空間〈INTERSECT BY LEXUS〉。そこを舞台に、毎回さまざまな分野のトップランナーたちが、スタイルの未来を標榜する。ホスト役は、スペースコンポーザーの谷川じゅんじ氏。第2回目は、ウェブデザイナー、映像ディレクター、そしてデザインスタジオ「tha ltd.」の代表である中村勇吾氏をお迎えしました。

インターフェースデザイナー

中村勇吾さん

1970年奈良県生まれ。96年東京大学工学部大学院修了。橋梁設計会社、ウェブ開発会社を経て、2004年tha ltd.を設立。ウェブサイトやCF映像のアートディレクションやプログラミングなどを手がける。主な作品に世界三大広告賞の最優秀賞を受賞したNECの環境サイト「ecotonoha」やユニクロ、KDDI「iida」の広告など。“インタラクティブデザインの創造的活動”で2008毎日デザイン賞、展覧会「NOW UPDATING... THA/中村勇吾のインタラクティブデザイン」で2009東京TDC賞グランプリなど受賞。多摩美術大学客員教授も務める。

スペースコンポーザー

谷川じゅんじさん

1965年生まれ。JTQ株式会社を2002年に設立。「空間をメディアにしたメッセージの伝達」をテーマにクリエイティブディレクション&コンサルティングファームとして活動の場を広げる。空間という特定の枠を超え、コミュニケーション領域全般でのブランディングディベロップメントおよびブランディングプロモーションを手がける。主な仕事にパリルーブル宮装飾美術館 Kansei展(2009)、平城遷都1300年祭記念薬師寺ひかり絵巻(2010)、グッドデザインエキシビジョン (2007-12)などがある。D&AD入選、DDA 大賞受賞、優秀賞受賞、奨励賞受賞、他入賞多数。

ピーター・ライスと「いいね!」ボタン

谷川2013年は、東横線渋谷駅跡地で行ったユニクロの『UT POP-UP!TYO』プロジェクト(*1)でコラボしましたね。中村さんが先にスタートさせたプロジェクトに僕が後から呼んでもらったカタチだったけど、かなり反響が大きい仕事だった。

中村全然時間がない中で無理にお願いした仕事だから、「おれはいつでも謝るぞ!」と覚悟していたんですよ。

谷川ミラノのチェントラーレ駅もそうだけど、東横線渋谷駅はスイッチバックというか終着でもあり始発駅でもある。去る人と見送る人が違う方向に分かれて行く、情緒的な泣き別れが演出しやすい場所。その駅が閉鎖された直後のプロジェクトだったことも、成功の一因ですね。ところで、中村さんは秋に開催された『建築家にならなかった建築家』展(*2)に参加していましたよね。もともと建築の勉強をしていたけど、いまは他の分野で活躍している人たちが、テクノロジーやアートを使って「建築」する展覧会だった。

中村学生時代に課題の発表で酷評されたりしてドロップアウトした人たちが、ブーメランのように戻ってきたって感じの展覧会でしたね。

谷川建築を志した人たちには、情緒的なことをロジカルに置き換えていく翻訳作業をしている人たちが多い。その意味でも、デジタルな世界で活躍している人には建築家的な発想の人が多いですよね。中村さんのデジタル表現には笑える作品が多いけど、笑いはコミュニケーションがないと起こらないもの。中村さんが建築畑出身の人だとは知らなかったけど、あの展覧会を見て、すごく納得できました。僕も空間デザインの仕事をしているけど、文学部出身で体育会系です。

中村僕が学生の頃、いわゆる「理系」と「文系」の接点って建築しかなかった。男子だからテクノロジーにも興味があるし、「美しいもの」にも惹かれる。その両方を満たしてくれるのは建築しかなかったような気がする。でも最近は、「先端技術」と「美」を両立させられる新しいジャンルとしてウェブが登場してきた。だから建築からウェブに流れる人は多いんじゃないかな。

谷川自分の思考を形にするという意味で捉えると、建築もウェブも図画工作の延長線上にあるよね。

中村僕が学生の頃、ピーター・ライス(*3)がガラス同士をサッシではなくゴムで繋ぐDPG工法を発明したことで、ガラスを表層とした建築が急に増えた。ひとつのディテールで世の中の建築の外観がガラッと変わっていくことに驚かされました。フェイスブックの「いいね!」ボタンで、世の中の繋がり方が一変したのと似ているんですよ。僕も小さくても、それだけで世の中を変える力を持ったものをなにか作ることができれば、と思っています。

谷川いま、彫刻家・名和晃平クンが表参道で「KOHEI NAWA|SANDWICH」(*4)というアトリエの展覧会をしています(*4)。「SANDWICH」は京都・伏見にある工房で、名和クンを中心に40名くらいのスタッフが創作活動をしている。今回は完成された作品ではなく、スタジオの制作現場をそのまま切り取ったような空間展示になっていて非常に面白い。「SANDWICH」にはいろいろなジャンルで才能溢れる人たちが集まっていて、アートやデザインはもちろん、建築的な空間開発も手掛けている。

中村村上隆さんに代表されるように、たくさんのスタッフを抱えて集団で制作するアーティストが増えていますよね。

谷川いまは、昔の狩野派のように工房化しているアーティストが定期的にいい作品を発表できているような気がする。チームラボ(*5) とかライゾマティクス(*6)もそうですよね。作家が一人で頑張って、ギャラリーにサポートされるというこれまでのスタイルとは違う文脈で仕事する人たちが、新たな評価を獲得している。昔は、アーティストと呼ばれる人たちはアート以外のことをやってはいけないようなムードがあったけど、今の時代は、自分たちが制作している作品の価値を自ら伝えるPRの役割も重要になってきている。村上さんはファインアートとプレステージメゾンとのコラボレーションを両立させているし、境界線がどんどんあいまいになっている。中村さんの仕事もそうだよね。どちらも価値があって、実は密接に結び付いていて、その中心は人にある。

知らないことが増えて当然な時代。

中村谷川さんはデジタルフォトをまめにプリントアウトしますか?

谷川僕はけっこうプリントする派ですね。プリントアウトしておかないと、結局見なくなりませんか? 結婚式で大量の写真を撮ってサーバーに保管していても、見ていない人が多いじゃないですか。でも、プリントしてアルバムにしておくと意外と見たりする。他人にも見せるし。身体性っていうのかな。

中村昔は、ローカルディスクに貯めた方が保存性が高くて、ネットに出したらすぐ消えると思われていたけど、いまはネットに出してオープンにした方が、結局保存されているような気がする。ローカルディスクとネットのタイムスパンが逆転したのかな。その分、ネット上に情報が溢れているから自分が何をフォローしているか、誰のストーリーを共有しているのかということが問われる時代ですよね。

谷川音楽の世界でも、一流のアーティストはプロモーションビデオをYouTubeで流しているでしょ。入口は無料にして、情報をどんどん出して認知度を高める。それから有料のライブを行って集客数を高めた方が、CDを売るより儲かるというビジネスモデルにチェンジしている。引きこもっていても日本中の美味しいモノが食べられる時代だからこそ、時間を割いて場に出かけて行くのが最大の消費、贅沢になっているんじゃないかな。だからこそ、情報のリテラシーが重要になってくると思う。

中村最近、デザインを志す学生さんと話す機会が増えたけど、昔に比べたら能力次第で世に出るチャンスは劇的に増えたと思う。業界とか師弟関係とか関係なしに、個人で面白い作品つくったらすぐに注目を集められる世界ですよね。その反面、駄目だったときに駄目な理由を見つけにくい、というか納得し辛いですよね。フラットで平等な世の中だから、逆に言い訳が効かない。若い頃からすでに能力がないと烙印を押されてしまうみたいで、いまの学生は厳しいなと感じる。

谷川世の中、意外と世知辛いですよ。ひとつのプロジェクトでぽっと世の中に注目されても、継続する仕事となると生業になってくる。社長業もやらなくちゃいけない。そこで萎えた人を、僕はたくさん見ている。F1レーサーみたいなものかな。サーキットを走らせたら速いけど、一般道は苦手で運転マナーも知らない、そんな人多いですよね。だからこそ、導き手としてのマネージャーの役割がより重要になってくると思う。広告を打つよりも、自分たちが動いてニュースにしてもらった方が宣伝効果は高いでしょ。プレステージメゾンがパーティをやるのも、PR効果を狙っているからですよね。「こんな人たちが出席してくれた」「こんな動きがある」ということをニュースに取り上げてもらった方が、広告よりPRになるからね。だからこそ、才能のあるクリエイター、アーティストをきちんとマネージメントしてPRする人がもっと注目されていい時代なんじゃないかな。

中村長く生き延びる術も、教えてあげないといけません。

谷川賞味期限がすごく短くなってきているでしょ。でも一線で長く活躍している人って、技をたくさん持っている。いろいろ手を変え品を変え。ときには1回消えたり、大人しくなってみたり。

中村駄目なときはそっと身を隠して悪目立ちしないとかね。ウェブって、面白がられるのも早いけど、古くなるのも早い。でも、作品を世の中に浸透させるには意外と時間がかかって、送り手とは別次元の時間軸がある。「デザインあ」(*7)も3年放送していてそれなりに評価されているんですが、まだ初めて見たっていう人が多い。

谷川僕らが日常生活で出会う人の数なんて、たかがしれている。表参道に来たことがない人もたくさんいるし、青山知らない、東京行ったこともないって人もたくさんいる。

中村その裾野の広さは逆に希望というか、そこでやれることがたくさんあるなという気がする。僕も、昔はウェブのクールなものはだいたい知っているつもりでいたけど、いまは多過ぎて全部知ろうとすると圧迫されてしまう。

谷川知らないことがあって当たり前、と思っていた方がいいですよ。百科事典を読破する人は、まずいないわけで、必要に応じてチェックするものだし。

中村「深く知ろう、掘り下げよう」という分野と「まったく知らなくてもいいや」とシャットアウトする分野の選択がシビアになっているような気がします。

谷川昔ならよくいた「俺はなんでも知っているぜ! 聞いてみな」的な人が極端に減りましたよね。知っているふりしても、すぐにばれちゃう時代だし。

中村10年くらい前にコンセプトとしては存在していたもの、僕らも飲み屋で話題にはしていたけど実現は難しいと思っていたことが、この2、3年であっさり実現している。知らないことが増えて当然ですよね。

谷川この前、1日3便しかバスが走らず、コンビニまで車で20分かかるような田舎に行ったけど、そんな場所でも宅急便は頻繁に走っている。それならお爺ちゃん、お婆ちゃんを宅急便で運んであげればいいと思った。時間はかかるかも知れないけど、時間はあるんだからノンビリ運んでもらえばいい。トラックの後ろにシートをつくって、乗合にして、お年寄りも荷物も宅急便が運んであげればいいんじゃないかな。規制緩和すればできるはず。僕、仕事しなくていいなら東京に住みたいとも思わないし、もっと過ごしやすい土地に行きたい。でも地方で暮らすことになっても、やっぱり便利さは求めたいから、そこで仕事している人に便乗させてもらいたい。そういうビジネスはこの先どんどん増えていきますよね。

中村僕なんていつも何も仕事なくなったらハワイとか行きてぇ~と思っているんですが、結局締め切りによって生かされている。それでも1、2年前からどうにかして“一瞬”仕事を辞められないかと考えている。せめて1年、休業してみたいですね。

谷川1年休むなら、1年の準備期間が必要だよね。休むことに対する期待感を周囲に与えて、復帰のストーリーも語っておかないと。それを示さないと、代わりはいくらでもいて、自分が消えていくことになってしまう。

中村でもいまの仕事をリセットして、もう一度一人でガチ勝負したい、という想いはあるんです。最近はゲームを一度つくってみたいですね。いまはインディーズ制作のゲーム市場がかなり面白くて、そこは完全にフラットな勝負ができる場所だから、そこで色々実験してみたい。ネットのフラット勝負ですね。

<注釈>

1
2013年3月、東急東横線渋谷駅跡地に誕生したイベントスペースに、世界最大のTシャツ専門ブランド「UT」のポップアップストア「UT POP-UP! TYO」を期間限定でオープンさせたプロジェクト。約200坪という巨大な敷地に1000種類以上、13000枚ものTシャツが並ぶ圧倒的な空間を谷川さんが演出した。また、3秒間の撮影映像をgif(コマ送り)で再生できる新アプリ「UTカメラ」を中村さん監修の元に発表している。

2
建築家になる教育を受けたものの、最終的には建築家という道を選ばず、異業種で活躍するクリエイターたちがテクノロジーやアートを使って自分なりの「建築」を表現したこの展覧会は、2013年10月、神宮前のEYE OF GYREで開催された。中村さんはじめ飯田昭雄、石畠吉一、伊藤達信、志伯健太郎らが参加。

3
アイルランド出身の、20世紀を代表する構造エンジニア。イギリスの世界最大の構造コンサルタント会社、オブアラップ・アンド・パートナーズのエースとして数々の有名建築家と協働したが、1992年、57歳の若さで死去。日本ではレンゾ・ピアノと手掛けた関西国際空港がよく知られている。

4
2月16日(日)まで神宮前のEYE OF GYREで開催中。スタジオの制作現場をそのまま切り取ったような空間や、2013年に発表した新作のメイキング映像などを披露。通常の展覧会とはひと味違う展示構成により、国際的にも注目されている「SANDWICH」の世界観を体験できる。http://gyre-omotesando.com/

5
ウルトラテクノロジスト集団を自称し、プログラマー、ロボットエンジニア、数学者、建築家、Webデザイナー、グラフィックデザイナー、CGアニメーター、編集者など、情報化社会のさまざまなものづくりのスペシャリストから構成されているクリエイター集団。次回、代表の猪子寿之さんをこのコーナーにお招きします。

6
『建築家にならなかった建築家』展の発起人である齊藤精一さんを中心に、2006年に設立。Webから空間におけるインタラクティブデザインまで、幅広いメディアをカバーする高い技術力と表現力を併せ持った小数精鋭のプロダクションとして注目を集めている。

7
2011年4月からNHK教育テレビジョンで放送されている、デザインを題材とした子供向け人気番組。身の回りにあるものをデザインの視点から見つめ直すことで、「デザインの面白さ」を伝えつつ、子供達の「デザイン的な視点と感性」を育むことを番組の目的としている。全体の構成をグラフィックデザイナーの佐藤卓が、音楽をコーネリアスが担当。中村さんは映像監修を担当している。

INTERSECT BY LEXUS – TOKYO INTERSECT BY LEXUS – TOKYO

撮影協力 INTERSECT BY LEXUS – TOKYO
東京・青山にあるINTERSECT BY LEXUS - TOKYOは、「都市とつながり、人と人、人とクルマが交わる」をテーマとし、デザインやアート、ファッション、カルチャーなどを通じて、 LEXUSが考えるライフスタイルを様々な形で体験できるスペースです。

〒107-0062東京都港区南青山4-21-26
1F CAFE & GARAGE 9:00-23:00 2F LOUNGE & SHOP 11:00-23:00 / (不定休)
TEL: 03-6447-1540 EMAIL: info-intersect@lexus-int.com
http://www.lexus-int.com/jp/intersect/tokyo

INTERSECT BY LEXUS – TOKYO
<1F Cafe>
ノルウェー発のコーヒーバーFUGLENとのコラボレーションによる、“街一番のコーヒー”をコンセプトとしたコーヒースタンド。コーヒーを楽しむ文化・ライフスタイルを、最高品質のコーヒーを通じて提案している。こだわりの3種類の豆を日替わりで楽しめる「本日のコーヒー」は350円から、そして季節に合わせた変化するペストリーも味わえる。日常使いにも、ミーティングなどにも使える空間。

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