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BLOG / Kentaro Matsuo

TITILE /

赤峰幸生さん

2013.11.26

赤峰幸生さん

インコントロ代表

メンズ・ファッションの世界では、知らぬ人はいない、赤峰幸生先生です。"クラシック"という言葉を体現したようなお方で、その装いは、いつもエレガントそのもの。海外のスナップ・サイトでもおなじみですね。

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先生は、半年ほど前、郊外の一軒家に引っ越しをなさいました。今回は、そこを訪ねての取材です。都心から、クルマで30~40分ほどの距離なのに、あたりには豊かな緑が広がっています。家は、小高い丘の上に建ち、窓からは周囲一面が見渡せ、目の前は畑地となっています。 「土いじりをしようと思っているんです。考えてみると、私のやってきたことは、綿やら、羊やら、蚕やら、すべて"土"に通じるものばかり。そういう原点を見つめ直そうと思いまして。生れてから、ずっと都心住まいでしたが、東京には、もう昔の東京が持っていたよさがなくなってしまった。このあたりには、まだまだ自然が残っているでしょう。土の色、石の色、枯葉の色・・・。ここにいると、つくづく自然にかなう色出しはないと思いますね」 なるほど、服飾の世界を極められた方のお言葉だけに、重みが違います。

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今日の装いは、まさに"カントリー・ジェントルマン"そのもの。スーツは、フィレンツェのリベラーノで「15年ほど前、ルイージさんの時代に」仕立てたもの。使われているのは、5~60年前の英国のヴィンテージ・クロスです。 「こういった生地は、今ではもう作れないのです。機械が速くなりすぎてしまった。人の手で、時間をかけて作られたものの美しさが、どんどん失われています」  タイは英国シンプソンのもので、やはり5~60年前の生地で作られたウールタイ。 シャツは、Y.AKAMINEオリジナルで、静岡県浜松に伝わる、遠州綿が使われています。水中で糸を撚る「水撚り」という技術で作られたものだとか。チーフは、50年代のヴィンテージで、英国の老舗トゥータル社製。

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オメガの金時計は、お父上の形見。7~80年前のものですが、今でも問題なく動くそうです。 メガネも英国のヴィンテージ品。シューズは、ロンドンのジョージ・クレバリーで、20年ほど前にビスポークしたもの。 「洋服は、まず10年は着こまないとダメですね。そうしないと、服の本当のよさはわからない。最近はソフトな生地ばかり出回っていて、朝プレスしても、昼には膝が出てしまうような服ばかりになってしまった。毎日着ていれば、1年でダメになってしまう。昔の生地は、長く着ることを前提に、手間暇かけて作ってあるから、いつまでも着られます」

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手間暇かけたもののよさを、先生は、土鍋で炊いた白いご飯に例えられていました。 「土鍋で炊いて、お櫃で蒸らしたご飯は、手がかかるけれど、それだけで、とても美味しい。電気釜では出せない味があります。おかずだって、コブと梅干くらいあればいい。食の世界には、まだそういったものが、かろうじて残っているけれど、服飾の世界では、すっかり無くなってしまいました」先生は、日本の服飾界の現状を、本当に憂いておられる様子でした。

「どこどこの何を着ている、というのは、本当はどうでもいいんです。ブランドという記号に振り回されると、五感が効かなくなりますよ。自分の目で見て、手で触って、いいものをわかるようにしないと」たくさんの人に会って、サルのようにブランド名ばかり聞いている私には、耳の痛いお言葉です。今回は、とても勉強になり、また服飾の過去と未来について、深く考えさせられる機会でもありました。

PROFILE/

portrait

松尾 健太郎Kentaro Matsuo

クリエイティブ・ディレクター

男子専科、ワールドフォトプレスを経て、‘92年、株式会社世界文化社入社。月刊誌メンズ・イーエックス創刊に携わり、以後クラシコ・イタリア、本格靴などのブームを牽引。‘05年同誌編集長に就任し、のべ4年間同職を務めた後、時計ビギン、M.E.特別編集シリーズ、メルセデス マガジン編集長、新潮社ENGINEクリエイティブ・ディレクターなどを歴任。現在、新雑誌創刊に向けて、準備中。
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